176 / 285
毎日おみそ汁を作らない妻は、罪な女ですか? ~大衆食堂の味噌汁~
結婚相手の条件
しおりを挟む
オタカフェにて、着物姿のソナエさんがパフェをバクバク食べています。よほど、腹に据えかねているのでしょう。
「あー、ムカツクよぉ」
お化粧からも、憤慨がにじみ出ています。
「まあまあ、ここは紳士淑女の社交場ですわ。落ち着きなさいな」
「これが落ち着いていられるかってんだ。ふざけやがってよぉ」
ウル王女がたしなめますが、ソナエの怒りは収まりません。
ストロベリーのパフェが、ものの数分でなくなりました。
「率直に申し上げて、あなたが一番、色恋から遠い存在だと思っていました」
「んなこたぁ、あたしが一番わかってるんだよ」
ソナエさんが、ワインを頼みます。
我々も、ドリンクのおかわりしましょうかね。
お話も長くなりそうですから。
「何があったか、ご説明願えますか?」
わたしは、お話を促します。
こういうのは、吐き出してしまったほうが落ち着くでしょうし。
「ウチの家族と相手方の家族で、見合いしたんだよ。あそこにホテルがあるだろ? そこでさ」
窓の向こうに見える一番大きな建物の中で、話し合いがあったそうです。
お相手は、武家の方だそうです。東洋に広大な土地もあり、裕福なんだとか。
「相当、頭にくる方だったのでしょうか?」
「見合い相手は、別に悪くなかったんだよ」
グラスを弄びながら、ソナエさんは当時を語ります。
その男性は、ソナエさんの性格をよく把握している人でした。お酒も弾んだそうです。
「うわあ、いい感じじゃないですか」
「ところが、相手方の家族がなぁ」
いわゆる「いかにも」な東洋気質な人で、しきたりにうるさいのだとか。
「なるほど。俗に言う、嫁姑戦争ですわね!」
「あたしが、そんなことに巻き込まれるとはねえ」
とにかく注文が多く、面倒くさい相手だったそうな。
「おうちと結婚するわけじゃないんだから、いいじゃないですか」
お母様も行っていましたが、今は自由恋愛が普通でしょう。
「だったらよかったんだ。なのにあいつら、最悪の条件を突きつけてきやがった」
「なんですか?」
「この国を出て、田舎に帰れってさ!」
やたら大声で、ソナエさんはパンケーキにフォークを突き刺します。はあ、と大げさにため息をつきました。
「それは、困りましたわね」
「この街を守ることも、あなたの仕事ですからね」
ウル王女とわたしが、うなずいて返答します。
「だから、お断りした。跡継ぎが欲しいだけなんだから、あれでいいだろ。よそを当たれって、言ってやったのさ」
それで、お話が終わるはずでした。ところが……。
「見合い相手が、追っかけてきてさぁ。困ったもんだよ」
ワイングラスを傾けます。もう一杯もらうかどうか、悩んでいました。あまり酔うと、逃亡に支障が出そうですもんね。
窓を覗き込むと、青い袴姿のサムライさんが店の入り口まで来ていました。
「やべ、もう行く!」
グラスをゴンとテーブルに置いて、ソナエさんは立ち上がります。
「お供しますわ。馬車にお乗りなさいな」
お勘定を置いて、ウル王女も立ちました。
「あんたも来なよ」
「わたしは、彼を足止めしておきましょう」
三人ともいなくなると、かえってお相手に怪しまれます。
相手さんの様子も、気になりますし。
「屋敷に匿いますわ。打ち合わせなさいます?」
「いいえ」
合流はしたいですが、尾行される危険性もあります。
ここは、日を改めたほうがいいでしょう。
「助かる。ちょいとゴメンよ!」
ソナエさんとウル王女が、厨房の方へ向かい走っていきました。
「口裏を合わせてくれ」
入れ違いで、サムライさんが店に入ってきます。
「失礼。ここに、赤い着物の女性が来ませんでしたか?」
全員が、首を横に振りました。
わたしもです。
その男性は、長い髪をポニーテール気味にした優男風の男性でした。
たしかに、女性のことにとやかく言ってこなさそうな方ですね。
サムライの男性は、あきらめて帰っていきました。
あとは、慎重に帰るだけですね。
「あー、ムカツクよぉ」
お化粧からも、憤慨がにじみ出ています。
「まあまあ、ここは紳士淑女の社交場ですわ。落ち着きなさいな」
「これが落ち着いていられるかってんだ。ふざけやがってよぉ」
ウル王女がたしなめますが、ソナエの怒りは収まりません。
ストロベリーのパフェが、ものの数分でなくなりました。
「率直に申し上げて、あなたが一番、色恋から遠い存在だと思っていました」
「んなこたぁ、あたしが一番わかってるんだよ」
ソナエさんが、ワインを頼みます。
我々も、ドリンクのおかわりしましょうかね。
お話も長くなりそうですから。
「何があったか、ご説明願えますか?」
わたしは、お話を促します。
こういうのは、吐き出してしまったほうが落ち着くでしょうし。
「ウチの家族と相手方の家族で、見合いしたんだよ。あそこにホテルがあるだろ? そこでさ」
窓の向こうに見える一番大きな建物の中で、話し合いがあったそうです。
お相手は、武家の方だそうです。東洋に広大な土地もあり、裕福なんだとか。
「相当、頭にくる方だったのでしょうか?」
「見合い相手は、別に悪くなかったんだよ」
グラスを弄びながら、ソナエさんは当時を語ります。
その男性は、ソナエさんの性格をよく把握している人でした。お酒も弾んだそうです。
「うわあ、いい感じじゃないですか」
「ところが、相手方の家族がなぁ」
いわゆる「いかにも」な東洋気質な人で、しきたりにうるさいのだとか。
「なるほど。俗に言う、嫁姑戦争ですわね!」
「あたしが、そんなことに巻き込まれるとはねえ」
とにかく注文が多く、面倒くさい相手だったそうな。
「おうちと結婚するわけじゃないんだから、いいじゃないですか」
お母様も行っていましたが、今は自由恋愛が普通でしょう。
「だったらよかったんだ。なのにあいつら、最悪の条件を突きつけてきやがった」
「なんですか?」
「この国を出て、田舎に帰れってさ!」
やたら大声で、ソナエさんはパンケーキにフォークを突き刺します。はあ、と大げさにため息をつきました。
「それは、困りましたわね」
「この街を守ることも、あなたの仕事ですからね」
ウル王女とわたしが、うなずいて返答します。
「だから、お断りした。跡継ぎが欲しいだけなんだから、あれでいいだろ。よそを当たれって、言ってやったのさ」
それで、お話が終わるはずでした。ところが……。
「見合い相手が、追っかけてきてさぁ。困ったもんだよ」
ワイングラスを傾けます。もう一杯もらうかどうか、悩んでいました。あまり酔うと、逃亡に支障が出そうですもんね。
窓を覗き込むと、青い袴姿のサムライさんが店の入り口まで来ていました。
「やべ、もう行く!」
グラスをゴンとテーブルに置いて、ソナエさんは立ち上がります。
「お供しますわ。馬車にお乗りなさいな」
お勘定を置いて、ウル王女も立ちました。
「あんたも来なよ」
「わたしは、彼を足止めしておきましょう」
三人ともいなくなると、かえってお相手に怪しまれます。
相手さんの様子も、気になりますし。
「屋敷に匿いますわ。打ち合わせなさいます?」
「いいえ」
合流はしたいですが、尾行される危険性もあります。
ここは、日を改めたほうがいいでしょう。
「助かる。ちょいとゴメンよ!」
ソナエさんとウル王女が、厨房の方へ向かい走っていきました。
「口裏を合わせてくれ」
入れ違いで、サムライさんが店に入ってきます。
「失礼。ここに、赤い着物の女性が来ませんでしたか?」
全員が、首を横に振りました。
わたしもです。
その男性は、長い髪をポニーテール気味にした優男風の男性でした。
たしかに、女性のことにとやかく言ってこなさそうな方ですね。
サムライの男性は、あきらめて帰っていきました。
あとは、慎重に帰るだけですね。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる