神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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シチューにライスは罪ですか? ~オタカフェでクリームシチュー~

みんなで撮影会

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 オタカフェで、新メニューをいただくことになりました。毎度、ありがたいことです。

 その条件が「シスター・エマと、シスター・フレンを撮影に呼ぶこと」でした。

 なんとカメラマンのカレーラス子爵自らが、二人に直談判をしてきたのです。

 エマもフレンも、快く引き受けてくださいました。

「ああ、いいわねふたりとも! こっちに目線ちょうだい!」

 カレーラス子爵も、ご機嫌でカメラのシャッターを下ろします。

 今回、わたしも撮影会には参加していますが、基本は二人の撮影会ですからね。

 姉妹百合の絵がほしいとのことで。

 一方で、フレンの方は表情が硬いです。エマは割とノリノリなのですが。

「子爵様、身体のポーズって、こうでいいのかしら? 肩が出すぎない?」

 エマはほとんど一本の布だけで、オタカフェの床に寝そべっています。肩どころか、胸の谷間までパックリとしていますね。

「いいのよ。あなたはちょっとくらい、露出が高いほうが」
「下品じゃないかしら?」
「とんでもない! あなたほどのプロポーションなら、むしろ芸術の域だわ!」
「ありがとう、子爵様」

 エマはだんだんと、大胆になっていきます。


 うーん、業深エロい。


「フレンは、あまり乗り気じゃないわね? 不満かしら?」
「いえ。私は露出がそれほど求められていないので」

 エマと同じように、フレンも布にくるまっています。とはいえ、こちらはほぼ完全に布まみれでした。

「エマ先輩、恥ずかしくないんですか? 私たち、ほぼ丸裸なんですよ?」
「別にいいじゃない」

 布がピッチリすぎて、身体のラインが出てしまっています。
 これはこれで業深エロいですが。
 フレンは体型が幼いですから、特殊性癖な方々へのエサになりかねません。
 困った表情が、またそそられるでしょう。

 ふたりとも、下にはインナーをちゃんと身につけています。
 が、布でくるまれていると全裸に見えますね。

「だって、男性の前で肌を晒すなんて」
「いいじゃない。相手は高名なエルフ様よ。あたしたちくらいの裸体なんて、見慣れているわ」

 また、エマがポーズを決めました。

 カレーラス子爵は、エルフなのです。
 わたしの仲間である、女エルフのヘルトさんの師匠ですからね。

「カレーラス子爵様、撮影中だけど、質問はいいかしら?」
「ええ、どうぞ」
「どうしてあたしたちなんか? エルフ様なら、もっといい被写体がいらっしゃるのでは?」

 ポーズを取りながら、エマは子爵に問いかけました。

 それは、わたしも気になります。

 エルフクラスになると、人間ごときでは満足できないはず。

 しかし、わたしはしょっちゅう撮影会に呼ばれている気がしますね。
 試食会というエサにつられているといえば、そのとおりなのですが。

「あなたたちがネコちゃんを愛でるのと、同じ理由よ」

 なるほど。人間を道行くネコと同じように、庇護対象として見ていると。

「かわいいものに、人間もエルフもネコも関係ないわ。アタシはカワイイ生き物が大好きなの。カワイイものをカワイくデコレートするのも、たまらないわ」

 うっとりしながら、子爵はシャッターを降ろします。

「子爵様のおっしゃるとおりよ。ネコは万年ハダカじゃない。あの方にとっては、あたしたちなんてそう映っているのよ。だから、気にしないことね」
「どうなんですか、その理屈は」

 エマの謎理論に、フレンは最後まで納得していない様子でした。

「ささ、次はクリスちゃんも撮影しましょうか」
「わたしがですか?」
「もちろんじゃない。むしろ、あなたは主役よ」
「そうはいっても、エマとフレンで十分じゃないですか」

 もう、二人が寄り添い合う構図で完璧ではないでしょうか?
 わたしまで混ざると異分子となってしまうのでは。

「あら、違うわ。二人には休んでもらうのよ」

 子爵によると、エマたちは休憩だそうで。

 エマとフレンは、バスローブを羽織りながら紅茶を飲んでいました。

「ヤダ絶対ヤダ!」

 そう言いながら子爵に引っ張られてきたのは、なんとほぼ全裸のヘルトさんです。
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