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第二章 完 秋季限定キノコピザは、罪の味 ~シスタークリス 最大の天敵現る?~
第二部 完 冬は目の前に
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「ごちそうさまでした。侯爵、ありがとうございます」
「ご満足いただけて幸いだ。では失礼する」
あまりにあっけなく、侯爵は去ろうとします。
「帰りは馬車を手配します。ご苦労さまでしだ」
「あ、はい。また呼んでください」
ゴロンさんに、執事さんが報酬の宝石類を渡しました。
魔王からなのに、魔除けだそうです。
わたしが見ても、高価な品だとわかりました。
「本当に、何も受け取らないので?」
フロントで問いかけると、侯爵は振り返ります。
「いや。受け取ったとも」
侯爵がウインクをしました。
すると、辺りからドレスを着た女性たちが三人ほど。
女性の一人の肩を抱きながら、侯爵は牙を光らせました。
「言っただろ? 料理上手はモテるのだと」
なるほど。料理は、ナンパ術だったわけですね。
複数の女性を侍らせながら、侯爵と若い執事さんは去っていきました。
「相変わらず、節操のないヤツだね」
さすがのドローレスも、呆れ果てています。
しかし、口についたチリソースを彼女が舐め取ったのを、わたしは見逃しませんでした。
ギリギリまで食べるとか、意地汚いにも程がありますね。
「では、わたしはゴロンさんを送っていきますので」
「途中まで、馬車でお送りしますわ」
ウル王女が、自前の馬車を手配します。
「そんな、大丈夫です」
「もう少し、お話したいですわ」
衣装を返そうとしましたが、王女からゴロンさんが持ち帰っていいとお許しが出ました。
ドレスのままのゴロンさんと一緒に帰ります。
「オレたちは、ここのバーで飲み直す。魔王のお友達ってのに、興味があるんでね」
「そうよね。アタシも魔王のお友達に便乗させていただきますわ、王様」
国王と子爵、ヘルトさんにまで囲まれて、「いいね!」とドローレスは全員をバーへ連れていきました。
わたしはゴロンさんとともに、ウル王女の馬車へ乗り込みます。
「ゴロンさん、侯爵を連れてきてくださって、ありがとうございました」
「えへへ。お困りでしたら、また呼んでください。出前ニャンはいつでもお待ちしていますので!」
ゴロンさんを家まで送り、教会に戻ってきました。
「お気をつけて、クリスさん。またこうした催しがあったら、連絡をくださいな」
「もちろん……ん?」
教会に向かって、千鳥足で歩いてくる人影が。
「歩いても走っても、答えなんて出やしない~っとぉ」
「運が悪けりゃ、死ーぬだけなのよぉ~。ヒック」
歩いてきた二人連れは、シスターエマとソナエさんです。
懐メロを歌いながら、にぎやかに肩を組み合っていました。
「よお、クリスじゃん!」
「あら、ウルリーカさんもいるじゃないの! ヒック!」
赤ら顔の二人が、わたしたちに声をかけてきます。
めんどくさそうですね。
「珍しい組み合わせですね?」
「そうなのよぉクリスゥ」
エマは最初、フレンたち後輩グループを連れて飲んでいたそうです。
しかし、後輩たちはみんなお水みたいな軽いお酒ばかり頼んだそうで。
もっと強いお酒が飲みたくなって、後輩たちにお金を渡して一人で飲み直しに向かったのだとか。
「東洋のお酒を飲みに入ったら、ソナエがいてぇ。同い年って言うから飲み合っていたのよ!」
「飲み比べしたら、意気投合しちゃってさぁ。えへへぇ」
アハハ。上機嫌ですね。
「ささ、飲み直すわよ! ウチのワインを飲んでいきなさいな! 海鮮もあるわ!」
「いいねぇ、いただくよ! あんたらもどうだいクリス、ウルリーカ王女?」
わたしたちは、丁重にお断りしました。
「そっか。じゃ、お邪魔すっから」
「ええどうぞ。楽しいお酒を」
エマとソナエさんが、教会の食堂へ向かいます。
「わたくしも、お暇しますわ」
「お気をつけて」
「ありがとう。ではまた今度……あら?」
わたしたちの視界に、白い小さな粒が舞い降りました。
「雪ですね。もうそんな季節ですか」
「もうすぐ、冬なのですねぇ」
食べ物がより一層美味しくなる季節が、すぐそこまで来ています。
(第二部 完)
「ご満足いただけて幸いだ。では失礼する」
あまりにあっけなく、侯爵は去ろうとします。
「帰りは馬車を手配します。ご苦労さまでしだ」
「あ、はい。また呼んでください」
ゴロンさんに、執事さんが報酬の宝石類を渡しました。
魔王からなのに、魔除けだそうです。
わたしが見ても、高価な品だとわかりました。
「本当に、何も受け取らないので?」
フロントで問いかけると、侯爵は振り返ります。
「いや。受け取ったとも」
侯爵がウインクをしました。
すると、辺りからドレスを着た女性たちが三人ほど。
女性の一人の肩を抱きながら、侯爵は牙を光らせました。
「言っただろ? 料理上手はモテるのだと」
なるほど。料理は、ナンパ術だったわけですね。
複数の女性を侍らせながら、侯爵と若い執事さんは去っていきました。
「相変わらず、節操のないヤツだね」
さすがのドローレスも、呆れ果てています。
しかし、口についたチリソースを彼女が舐め取ったのを、わたしは見逃しませんでした。
ギリギリまで食べるとか、意地汚いにも程がありますね。
「では、わたしはゴロンさんを送っていきますので」
「途中まで、馬車でお送りしますわ」
ウル王女が、自前の馬車を手配します。
「そんな、大丈夫です」
「もう少し、お話したいですわ」
衣装を返そうとしましたが、王女からゴロンさんが持ち帰っていいとお許しが出ました。
ドレスのままのゴロンさんと一緒に帰ります。
「オレたちは、ここのバーで飲み直す。魔王のお友達ってのに、興味があるんでね」
「そうよね。アタシも魔王のお友達に便乗させていただきますわ、王様」
国王と子爵、ヘルトさんにまで囲まれて、「いいね!」とドローレスは全員をバーへ連れていきました。
わたしはゴロンさんとともに、ウル王女の馬車へ乗り込みます。
「ゴロンさん、侯爵を連れてきてくださって、ありがとうございました」
「えへへ。お困りでしたら、また呼んでください。出前ニャンはいつでもお待ちしていますので!」
ゴロンさんを家まで送り、教会に戻ってきました。
「お気をつけて、クリスさん。またこうした催しがあったら、連絡をくださいな」
「もちろん……ん?」
教会に向かって、千鳥足で歩いてくる人影が。
「歩いても走っても、答えなんて出やしない~っとぉ」
「運が悪けりゃ、死ーぬだけなのよぉ~。ヒック」
歩いてきた二人連れは、シスターエマとソナエさんです。
懐メロを歌いながら、にぎやかに肩を組み合っていました。
「よお、クリスじゃん!」
「あら、ウルリーカさんもいるじゃないの! ヒック!」
赤ら顔の二人が、わたしたちに声をかけてきます。
めんどくさそうですね。
「珍しい組み合わせですね?」
「そうなのよぉクリスゥ」
エマは最初、フレンたち後輩グループを連れて飲んでいたそうです。
しかし、後輩たちはみんなお水みたいな軽いお酒ばかり頼んだそうで。
もっと強いお酒が飲みたくなって、後輩たちにお金を渡して一人で飲み直しに向かったのだとか。
「東洋のお酒を飲みに入ったら、ソナエがいてぇ。同い年って言うから飲み合っていたのよ!」
「飲み比べしたら、意気投合しちゃってさぁ。えへへぇ」
アハハ。上機嫌ですね。
「ささ、飲み直すわよ! ウチのワインを飲んでいきなさいな! 海鮮もあるわ!」
「いいねぇ、いただくよ! あんたらもどうだいクリス、ウルリーカ王女?」
わたしたちは、丁重にお断りしました。
「そっか。じゃ、お邪魔すっから」
「ええどうぞ。楽しいお酒を」
エマとソナエさんが、教会の食堂へ向かいます。
「わたくしも、お暇しますわ」
「お気をつけて」
「ありがとう。ではまた今度……あら?」
わたしたちの視界に、白い小さな粒が舞い降りました。
「雪ですね。もうそんな季節ですか」
「もうすぐ、冬なのですねぇ」
食べ物がより一層美味しくなる季節が、すぐそこまで来ています。
(第二部 完)
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