146 / 289
第二章 完 秋季限定キノコピザは、罪の味 ~シスタークリス 最大の天敵現る?~
大食い対決、終了!
しおりを挟む
みなさんのグラタンにも、ベーコンが。
そちらは、ちゃんと薄く切り分けられていますけど。
わたしの分は、ほぼカットされていません。
もはや、マンガ肉みたいになってます。
いっそ、噛みちぎりますね。ガシガシっと。
「ワイルドですね。こんな人、ドラゴンでもなかなかいませんよ」
グラタンパスタを堪能しながら、ドレミーさんが呆れていました。
「この方は、特別ですわ。料理のためなら、魔王とも交渉するでしょう」
「眼の前にいるのは、ホンモノみてえだしな」
まあ、こんな国王が相手では、ごまかしは効かないでしょう。
なので、「魔王と会食する」とは告げていました。
一切小細工無しで登場する魔王も魔王ですが、兵を一人も連れてこなかった国王も大概です。
「魔王もすさまじいですが、シスターの分がもう……」
ドレミーさんが、驚愕の表情を浮かべています。
わたしの土鍋は、もう底が見え始めていました。
「ルドマン侯爵、ちょっとよろしいでしょうか?」
「なんだね、クリス嬢。降参かな?」
「パンをいただけますか?」
「まだ、召し上がると?」
侯爵の質問に、わたしは笑顔でうなずきます。
だって、グラタンにはパンでしょう。グラタンですよ?
「わかった。焼いてくるから少々待つように」
「あ、わたくしも!」
ウル王女が手を上げました。続いて国王も。
結局、全員がパンを求めます。
「あいわかったから。待っておれ」
ため息をつきながら、侯爵はパンを焼き始めました。
その間に、わたしはパスタをモリモリ食べ進めます。
「麺終了! クリスさん、麺終了です。マジで?」
信じられないといった顔で、ドレミーさんが口をあんぐりとしました。
あとは、このオコゲですよ。スプーンで、ガシガシと発掘します。
意地汚いですが、これもグラタンの醍醐味です。
グラタンにオコゲはつきものですから。
ああ、素晴らしい。このグラタンでもっとも香ばしく、味が濃いです。
おっと、パンが焼けましたよ。
「ささ、もうこの際だ。いくらでも食べるといい」
「わあ。ありがとうございます。いただきますね」
パンをちぎって、ホワイトソースをすくい取ります。
まさしく、罪深い。
グラタンのシメと言ったら、もう間違いありません。
エビのエキスも、きのこの旨味も全部凝縮されたソースです。
パンでお迎えしなければ、バチが当たりますよ!
チーズのとろみもあって、これはまたチーズフォンデュの亜流とも言えました。
こんなぜいたくな食べ方って、他にあるでしょうか?
いやあ、おいしかったです。
こういう催しなら、毎回でも構わないですね。
「あれだけあった土鍋のグラタンが、何も残っていません。人間じゃない」
「ええ。シスター・クリスの胃袋を形容する言葉があるなら、魔界です」
口を拭きながら、ウル王女がドレミーさんに語ります。
「まさか、吾輩が完敗するとはな」
「いえいえ。見事なお手前でした。同じものを作れと言われたら、わたしの完全敗北でしょう」
わたしは食べるのが専門であり、食べるしか能がありません。
作る方には、ただただ感謝ですよ。
「よもや、すべて片付けられてしまったな。まったく恐れ入った。先代との勝負を反省し、土鍋で挑んだのだが、それすら看破されてしまうとは」
侯爵から、敗北宣言が出ました。
「となると、ドレミーさんは自由の身で?」
「結構だ。彼女のことはあきらめよう」
よかったです。侯爵の変な性癖に悩まされることはなくなりました。
「楽しい食事会でした。侯爵さま、ありがとうございます」
「うむ。吾輩も、この場に招いていただいたことを感謝する、シスター・クリス」
「して、侯爵さま」
わたしは頭を切り替えて、侯爵に問いかけました。
「なんだね?」
「デザートは、何を?」
え、まだ食うの? という顔になりましたね、侯爵。
そちらは、ちゃんと薄く切り分けられていますけど。
わたしの分は、ほぼカットされていません。
もはや、マンガ肉みたいになってます。
いっそ、噛みちぎりますね。ガシガシっと。
「ワイルドですね。こんな人、ドラゴンでもなかなかいませんよ」
グラタンパスタを堪能しながら、ドレミーさんが呆れていました。
「この方は、特別ですわ。料理のためなら、魔王とも交渉するでしょう」
「眼の前にいるのは、ホンモノみてえだしな」
まあ、こんな国王が相手では、ごまかしは効かないでしょう。
なので、「魔王と会食する」とは告げていました。
一切小細工無しで登場する魔王も魔王ですが、兵を一人も連れてこなかった国王も大概です。
「魔王もすさまじいですが、シスターの分がもう……」
ドレミーさんが、驚愕の表情を浮かべています。
わたしの土鍋は、もう底が見え始めていました。
「ルドマン侯爵、ちょっとよろしいでしょうか?」
「なんだね、クリス嬢。降参かな?」
「パンをいただけますか?」
「まだ、召し上がると?」
侯爵の質問に、わたしは笑顔でうなずきます。
だって、グラタンにはパンでしょう。グラタンですよ?
「わかった。焼いてくるから少々待つように」
「あ、わたくしも!」
ウル王女が手を上げました。続いて国王も。
結局、全員がパンを求めます。
「あいわかったから。待っておれ」
ため息をつきながら、侯爵はパンを焼き始めました。
その間に、わたしはパスタをモリモリ食べ進めます。
「麺終了! クリスさん、麺終了です。マジで?」
信じられないといった顔で、ドレミーさんが口をあんぐりとしました。
あとは、このオコゲですよ。スプーンで、ガシガシと発掘します。
意地汚いですが、これもグラタンの醍醐味です。
グラタンにオコゲはつきものですから。
ああ、素晴らしい。このグラタンでもっとも香ばしく、味が濃いです。
おっと、パンが焼けましたよ。
「ささ、もうこの際だ。いくらでも食べるといい」
「わあ。ありがとうございます。いただきますね」
パンをちぎって、ホワイトソースをすくい取ります。
まさしく、罪深い。
グラタンのシメと言ったら、もう間違いありません。
エビのエキスも、きのこの旨味も全部凝縮されたソースです。
パンでお迎えしなければ、バチが当たりますよ!
チーズのとろみもあって、これはまたチーズフォンデュの亜流とも言えました。
こんなぜいたくな食べ方って、他にあるでしょうか?
いやあ、おいしかったです。
こういう催しなら、毎回でも構わないですね。
「あれだけあった土鍋のグラタンが、何も残っていません。人間じゃない」
「ええ。シスター・クリスの胃袋を形容する言葉があるなら、魔界です」
口を拭きながら、ウル王女がドレミーさんに語ります。
「まさか、吾輩が完敗するとはな」
「いえいえ。見事なお手前でした。同じものを作れと言われたら、わたしの完全敗北でしょう」
わたしは食べるのが専門であり、食べるしか能がありません。
作る方には、ただただ感謝ですよ。
「よもや、すべて片付けられてしまったな。まったく恐れ入った。先代との勝負を反省し、土鍋で挑んだのだが、それすら看破されてしまうとは」
侯爵から、敗北宣言が出ました。
「となると、ドレミーさんは自由の身で?」
「結構だ。彼女のことはあきらめよう」
よかったです。侯爵の変な性癖に悩まされることはなくなりました。
「楽しい食事会でした。侯爵さま、ありがとうございます」
「うむ。吾輩も、この場に招いていただいたことを感謝する、シスター・クリス」
「して、侯爵さま」
わたしは頭を切り替えて、侯爵に問いかけました。
「なんだね?」
「デザートは、何を?」
え、まだ食うの? という顔になりましたね、侯爵。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる