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第二章 完 秋季限定キノコピザは、罪の味 ~シスタークリス 最大の天敵現る?~

大食い対決、終了!

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 みなさんのグラタンにも、ベーコンが。
 そちらは、ちゃんと薄く切り分けられていますけど。

 わたしの分は、ほぼカットされていません。
 もはや、マンガ肉みたいになってます。
 いっそ、噛みちぎりますね。ガシガシっと。

「ワイルドですね。こんな人、ドラゴンでもなかなかいませんよ」

 グラタンパスタを堪能しながら、ドレミーさんが呆れていました。

「この方は、特別ですわ。料理のためなら、魔王とも交渉するでしょう」
「眼の前にいるのは、ホンモノみてえだしな」

 まあ、こんな国王が相手では、ごまかしは効かないでしょう。
 なので、「魔王と会食する」とは告げていました。

 一切小細工無しで登場する魔王も魔王ですが、兵を一人も連れてこなかった国王も大概です。

「魔王もすさまじいですが、シスターの分がもう……」

 ドレミーさんが、驚愕の表情を浮かべています。

 わたしの土鍋は、もう底が見え始めていました。

「ルドマン侯爵、ちょっとよろしいでしょうか?」
「なんだね、クリス嬢。降参かな?」

「パンをいただけますか?」

「まだ、召し上がると?」

 侯爵の質問に、わたしは笑顔でうなずきます。

 だって、グラタンにはパンでしょう。グラタンですよ?

「わかった。焼いてくるから少々待つように」
「あ、わたくしも!」

 ウル王女が手を上げました。続いて国王も。

 結局、全員がパンを求めます。

「あいわかったから。待っておれ」

 ため息をつきながら、侯爵はパンを焼き始めました。

 その間に、わたしはパスタをモリモリ食べ進めます。

「麺終了! クリスさん、麺終了です。マジで?」

 信じられないといった顔で、ドレミーさんが口をあんぐりとしました。

 あとは、このオコゲですよ。スプーンで、ガシガシと発掘します。
 意地汚いですが、これもグラタンの醍醐味です。
 グラタンにオコゲはつきものですから。

 ああ、素晴らしい。このグラタンでもっとも香ばしく、味が濃いです。
 おっと、パンが焼けましたよ。 

「ささ、もうこの際だ。いくらでも食べるといい」
「わあ。ありがとうございます。いただきますね」

 パンをちぎって、ホワイトソースをすくい取ります。

 まさしく、罪深うまい。

 グラタンのシメと言ったら、もう間違いありません。

 エビのエキスも、きのこの旨味も全部凝縮されたソースです。
 パンでお迎えしなければ、バチが当たりますよ!
 チーズのとろみもあって、これはまたチーズフォンデュの亜流とも言えました。
 こんなぜいたくな食べ方って、他にあるでしょうか?

 いやあ、おいしかったです。
 こういう催しなら、毎回でも構わないですね。

「あれだけあった土鍋のグラタンが、何も残っていません。人間じゃない」
「ええ。シスター・クリスの胃袋を形容する言葉があるなら、魔界です」

 口を拭きながら、ウル王女がドレミーさんに語ります。

「まさか、吾輩が完敗するとはな」
「いえいえ。見事なお手前でした。同じものを作れと言われたら、わたしの完全敗北でしょう」

 わたしは食べるのが専門であり、食べるしか能がありません。
 作る方には、ただただ感謝ですよ。

「よもや、すべて片付けられてしまったな。まったく恐れ入った。先代との勝負を反省し、土鍋で挑んだのだが、それすら看破されてしまうとは」

 侯爵から、敗北宣言が出ました。

「となると、ドレミーさんは自由の身で?」
「結構だ。彼女のことはあきらめよう」

 よかったです。侯爵の変な性癖に悩まされることはなくなりました。

「楽しい食事会でした。侯爵さま、ありがとうございます」
「うむ。吾輩も、この場に招いていただいたことを感謝する、シスター・クリス」

「して、侯爵さま」

 わたしは頭を切り替えて、侯爵に問いかけました。

「なんだね?」

「デザートは、何を?」

 え、まだ食うの? という顔になりましたね、侯爵。
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