131 / 285
天ぷらの盛り合わせは、罪の味 ~高級料亭の天ぷら盛り合わせと、かき揚げソバ~
健康オタクは、なんでも食べる
しおりを挟む
国王は、追加でさらにメロンパンを食べています。
「せっかくジョギングで減ったカロリーが、もとに戻りませんか?」
「いいんだよ、んなもん。血液を活性化させるために走ってるだけだ。菓子パンは、完全な趣味だ」
驚きました。わたしと同じ理由で走っていたとは。
わたしも、減量のためには走りません。
筋力とスタミナをつけることが目的です。
「とかく最近は、体調管理のためには小麦や米などの糖質を控えろ、というのが定説になっておる。それを否定する気はない。だが、一ミリも口にしないなんてのは不可能だ。どんな料理にも、身体に悪い物質はつきまとう」
メロンパンをかじりながら、国王は語りました。
「けどよ、それのなにが楽しいってんだよ?」
口にメロンパンが入ったまま、国王は話を続けます。
「自分を抑え込んでいたら、いつかは爆発しちまう。やりたいことをやって、過ぎたことだと思ったところでセーブすりゃあいい」
そんな簡単に、ガマンできますかねぇ?
「節制は、悪だと?」
「そうは言わねえよ」
行き過ぎた禁欲は、むしろ毒であると王はいいます。
「身体に悪いこと、悪いものから逃げ続けて、清潔でいたいならそれでいい。しかし、強要すべきではないだろ?」
サクサクのメロンパンを、国王はカフェオレで流し込みました。
「もし、『健康のために小麦の摂取はやめましょう』ってんなら、俺は全世界のパン屋に営業停止を伝えなくちゃならん。菓子パンのねえ世界なんて、つまんねえぜ?」
おっしゃるとおりです。きっと楽しみが激減しますよ。
「健康志向だの安全な食材だのいう声はでかい。たが実際は健康食材って言っても、何が使われているかなんてわかってねえんだ。素人には、わかりゃしねえよ。俺に言わせりゃあ、潔癖すぎて変に日和ってるように思える」
言いすぎかもしれんが、と国王は笑います。
「悪いことを知っているから、いいことだって見えてくる、と?」
「ああ」と、国王は返しました。
「人生、いいことばかりじゃねえ。好きなことばかりやっていても、嫌いなやつはどうしても出てくる。嫌いな物事から逃げたくたって、逃げられねえ。悪い条件だって、飲まなきゃいけねえ。そんなことばかりじゃねえか、世の中ってのは」
たしかに、キレイ事ばかりでは、成り立たないことだってありますね。
「だったら、受け入れるしかねえ」
国王は、カップを置きました。
「身体にいいものも悪いものも、全部受け止める。ひどくなる前に、自分で自分を管理する」
薬物に手を出すわけでは、ありません。
それは極論過ぎます。
しかし、生活にうるおいを求めるくらい、罪はないのでは、と王は考えているようでした。
「もし、体調を崩すことがあったら?」
人間は、カンタンにプヨプヨってなりますよ?
実際、わたしに相談してくる主婦さんは何度も太ってしまったらしく。
「そんときは、そんときさ。俺はココまでの人間だったんだと、あきらめるとしよう」
なんか、潔いのかどうなのか、わからない人ですね。
ますます、ヘンネフェルト国王という存在がわかりづらくなりました。
「さて、もうひとっ走り行くかな? そいつはやるよ」
テーブルの上には、わたしの分の代金がありました。
「いただけませんよ!」
「話を聞いてもらったからな。こいつはお駄賃だ。いらないならどこかへ寄付でもしろ」
「では、教会で活用させていただきます」
「そうしてくれ。今日の夕方、あんたを迎えに行く。ウルリーカも連れてくるから、安心しな」
国王は去っていきます。
教会に帰ると、シスター・エマもジョギングから戻ってきたところでした。
「おかえりなさい、クリス。どうしたの、そのお金?」
「さるお方からの寄付です」
王様からのお金を、教会へ納めます。
「人には言えないお金とかじゃない?」
「正体不明の、健康オタクさんからです」
「せっかくジョギングで減ったカロリーが、もとに戻りませんか?」
「いいんだよ、んなもん。血液を活性化させるために走ってるだけだ。菓子パンは、完全な趣味だ」
驚きました。わたしと同じ理由で走っていたとは。
わたしも、減量のためには走りません。
筋力とスタミナをつけることが目的です。
「とかく最近は、体調管理のためには小麦や米などの糖質を控えろ、というのが定説になっておる。それを否定する気はない。だが、一ミリも口にしないなんてのは不可能だ。どんな料理にも、身体に悪い物質はつきまとう」
メロンパンをかじりながら、国王は語りました。
「けどよ、それのなにが楽しいってんだよ?」
口にメロンパンが入ったまま、国王は話を続けます。
「自分を抑え込んでいたら、いつかは爆発しちまう。やりたいことをやって、過ぎたことだと思ったところでセーブすりゃあいい」
そんな簡単に、ガマンできますかねぇ?
「節制は、悪だと?」
「そうは言わねえよ」
行き過ぎた禁欲は、むしろ毒であると王はいいます。
「身体に悪いこと、悪いものから逃げ続けて、清潔でいたいならそれでいい。しかし、強要すべきではないだろ?」
サクサクのメロンパンを、国王はカフェオレで流し込みました。
「もし、『健康のために小麦の摂取はやめましょう』ってんなら、俺は全世界のパン屋に営業停止を伝えなくちゃならん。菓子パンのねえ世界なんて、つまんねえぜ?」
おっしゃるとおりです。きっと楽しみが激減しますよ。
「健康志向だの安全な食材だのいう声はでかい。たが実際は健康食材って言っても、何が使われているかなんてわかってねえんだ。素人には、わかりゃしねえよ。俺に言わせりゃあ、潔癖すぎて変に日和ってるように思える」
言いすぎかもしれんが、と国王は笑います。
「悪いことを知っているから、いいことだって見えてくる、と?」
「ああ」と、国王は返しました。
「人生、いいことばかりじゃねえ。好きなことばかりやっていても、嫌いなやつはどうしても出てくる。嫌いな物事から逃げたくたって、逃げられねえ。悪い条件だって、飲まなきゃいけねえ。そんなことばかりじゃねえか、世の中ってのは」
たしかに、キレイ事ばかりでは、成り立たないことだってありますね。
「だったら、受け入れるしかねえ」
国王は、カップを置きました。
「身体にいいものも悪いものも、全部受け止める。ひどくなる前に、自分で自分を管理する」
薬物に手を出すわけでは、ありません。
それは極論過ぎます。
しかし、生活にうるおいを求めるくらい、罪はないのでは、と王は考えているようでした。
「もし、体調を崩すことがあったら?」
人間は、カンタンにプヨプヨってなりますよ?
実際、わたしに相談してくる主婦さんは何度も太ってしまったらしく。
「そんときは、そんときさ。俺はココまでの人間だったんだと、あきらめるとしよう」
なんか、潔いのかどうなのか、わからない人ですね。
ますます、ヘンネフェルト国王という存在がわかりづらくなりました。
「さて、もうひとっ走り行くかな? そいつはやるよ」
テーブルの上には、わたしの分の代金がありました。
「いただけませんよ!」
「話を聞いてもらったからな。こいつはお駄賃だ。いらないならどこかへ寄付でもしろ」
「では、教会で活用させていただきます」
「そうしてくれ。今日の夕方、あんたを迎えに行く。ウルリーカも連れてくるから、安心しな」
国王は去っていきます。
教会に帰ると、シスター・エマもジョギングから戻ってきたところでした。
「おかえりなさい、クリス。どうしたの、そのお金?」
「さるお方からの寄付です」
王様からのお金を、教会へ納めます。
「人には言えないお金とかじゃない?」
「正体不明の、健康オタクさんからです」
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。


はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる