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パーフェクトな、罪の味 ~オタカフェのフルーツパフェ~
オタカフェ会議
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ごきげんいかがですか?
わたしはとっても、複雑な心境ですね。
今、オタカフェにいます。何をしているかと言うと。
「えーっ。では、お店の新商品会議、第三〇回を行いたいと思います」
このように企画会議が難航しておりまして。
わたしが参加したのは、二一回あたりです。けれど、まるで何も決まりませんでした。
この回数の段階で、わたしがいかにゲッソリしているかおわかりいただけるかと。
試食会という残飯処理班として、呼ばれたのは結構。
わたしはなんでも食べましょう。
実際、失敗作もたしかなおいしさを誇っていますから。
しかし、なにも決まらないとあっては別です。
その原因の一端が、経営者にありました。
「たしかにどれもウマいよ? でもさ、もっとないの? なんか、ウチでしか出せない! ってヤツがさぁ」
問題児は、伯爵ですよ。
「こんなんじゃさぁ、ウル王女様んとこのカフェに、お客取られっぱじゃん! なんとかしてよ!」
なんだか、ムダに対抗意識を燃やしておりました。
たしかに、あそこのパンケーキを打倒するのは、骨が折れます。値段が手頃な上に、バリエーションも豊富です。
ほらあ。従業員さんだけではなく、カレーラス子爵とヘルトさんの師弟コンビまでゲンナリしているじゃありませんか。
「あのさあ伯爵、ウルリーカ王女を変に意識しないほうがいいと思うの。あちらは一般庶民が相手でしょ? うちはウチ独自の味さえ出せば、納得すると思うのよ」
「だけどさあ、高級だからいい、ってもんじゃないじゃん。ぜいたくを尽くしたところで、エスカレートするだけで飽きられそうじゃんか」
伯爵が豪勢な路線に難色を示すのには、わけがありました。
以前開発したハニトーの新メニューが、不評だったのです。
「甘くない、オカズタイプ」という路線に目をつけたのは、いい線いっていました。
実際「グラタン型ハニトー」は、大人気メニューです。
これの試食会は、神がかっていましたね。
が、センスが独特すぎて冒険しすぎました。
「しょうゆラーメン味」を出しちゃったのです。
「同じ炭水化物だから、イケルやろ」と。
結果は、パンがスープを吸いきって味がボケました。
結局、味の染みていないパンができただけ。
現在は、お客が遠のいてしまっています。
「どうにかならないかなぁ?」
「うちの売りは、やはりハニトーです。それを越えようとすると、予算的に無理が出るかと」
「そこを頼むよ。なんとかさぁ」
伯爵は問いかけますが、従業員さんからはいいネタが出ません。
「メニューより、サービスで勝負すべきよ」
「そうですよ。この店以外では『もえもえキュン』なんてしてくれないわ」
子爵もヘルトさんも、決着をつけようと訴えかけます。
「いやあ、女の子サービスは、あっちのラーメン屋の方がウケててさぁ」
ああ、ステフさんのお店ですね。
女性が場末で働いているという光景だけで、そそるのだとか。
「普通の喫茶店のように、フードから攻めるって、できないのでしょうか?」
わたしが、手をあげます。
「オカズタイプのハニトーみたいに?」
「はい。わたしがここをひいきにしているのも、オムライスが目当てでしたので」
最初、この店に近づこうとしたのは、オムライスが評判だったからでした。
「たしかに、オムライスに字を書くってのはウチがやりはじめたもんね」
伯爵が、アゴに手を当てます。
「フードって実際どうなの?」
「もう手は尽くしてあります。変化のしようがありません」
ハンバーグも季節ごとに味を変え、定番はそのまま残し、新規は実験的に出しているそうでした。
「もっと茶色を増やすとか」
「それでは純喫茶です。オシャレからは遠ざかりますね。茶色を否定するわけではありません。ただ、ウチのお客様は腹を満たしには来ていません」
だったらわたし、マジで残飯処理班をした方がよさげですね。
よろしい、なんでもお出しください。
わたしはとっても、複雑な心境ですね。
今、オタカフェにいます。何をしているかと言うと。
「えーっ。では、お店の新商品会議、第三〇回を行いたいと思います」
このように企画会議が難航しておりまして。
わたしが参加したのは、二一回あたりです。けれど、まるで何も決まりませんでした。
この回数の段階で、わたしがいかにゲッソリしているかおわかりいただけるかと。
試食会という残飯処理班として、呼ばれたのは結構。
わたしはなんでも食べましょう。
実際、失敗作もたしかなおいしさを誇っていますから。
しかし、なにも決まらないとあっては別です。
その原因の一端が、経営者にありました。
「たしかにどれもウマいよ? でもさ、もっとないの? なんか、ウチでしか出せない! ってヤツがさぁ」
問題児は、伯爵ですよ。
「こんなんじゃさぁ、ウル王女様んとこのカフェに、お客取られっぱじゃん! なんとかしてよ!」
なんだか、ムダに対抗意識を燃やしておりました。
たしかに、あそこのパンケーキを打倒するのは、骨が折れます。値段が手頃な上に、バリエーションも豊富です。
ほらあ。従業員さんだけではなく、カレーラス子爵とヘルトさんの師弟コンビまでゲンナリしているじゃありませんか。
「あのさあ伯爵、ウルリーカ王女を変に意識しないほうがいいと思うの。あちらは一般庶民が相手でしょ? うちはウチ独自の味さえ出せば、納得すると思うのよ」
「だけどさあ、高級だからいい、ってもんじゃないじゃん。ぜいたくを尽くしたところで、エスカレートするだけで飽きられそうじゃんか」
伯爵が豪勢な路線に難色を示すのには、わけがありました。
以前開発したハニトーの新メニューが、不評だったのです。
「甘くない、オカズタイプ」という路線に目をつけたのは、いい線いっていました。
実際「グラタン型ハニトー」は、大人気メニューです。
これの試食会は、神がかっていましたね。
が、センスが独特すぎて冒険しすぎました。
「しょうゆラーメン味」を出しちゃったのです。
「同じ炭水化物だから、イケルやろ」と。
結果は、パンがスープを吸いきって味がボケました。
結局、味の染みていないパンができただけ。
現在は、お客が遠のいてしまっています。
「どうにかならないかなぁ?」
「うちの売りは、やはりハニトーです。それを越えようとすると、予算的に無理が出るかと」
「そこを頼むよ。なんとかさぁ」
伯爵は問いかけますが、従業員さんからはいいネタが出ません。
「メニューより、サービスで勝負すべきよ」
「そうですよ。この店以外では『もえもえキュン』なんてしてくれないわ」
子爵もヘルトさんも、決着をつけようと訴えかけます。
「いやあ、女の子サービスは、あっちのラーメン屋の方がウケててさぁ」
ああ、ステフさんのお店ですね。
女性が場末で働いているという光景だけで、そそるのだとか。
「普通の喫茶店のように、フードから攻めるって、できないのでしょうか?」
わたしが、手をあげます。
「オカズタイプのハニトーみたいに?」
「はい。わたしがここをひいきにしているのも、オムライスが目当てでしたので」
最初、この店に近づこうとしたのは、オムライスが評判だったからでした。
「たしかに、オムライスに字を書くってのはウチがやりはじめたもんね」
伯爵が、アゴに手を当てます。
「フードって実際どうなの?」
「もう手は尽くしてあります。変化のしようがありません」
ハンバーグも季節ごとに味を変え、定番はそのまま残し、新規は実験的に出しているそうでした。
「もっと茶色を増やすとか」
「それでは純喫茶です。オシャレからは遠ざかりますね。茶色を否定するわけではありません。ただ、ウチのお客様は腹を満たしには来ていません」
だったらわたし、マジで残飯処理班をした方がよさげですね。
よろしい、なんでもお出しください。
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