102 / 285
ハロウィンは、かぼちゃコロッケで罪のつぐないを ~ギンナンとかぼちゃコロッケ~
かぼちゃコロッケは、罪の味
しおりを挟む
油の匂いにつられて、わたしたちは歩き出しました。
たどり着いたのは、露店です。
おばちゃんが潰したかぼちゃを丸めて、コロッケにしていました。
ハロウィンでは、かぼちゃをくり抜いてランタンにします。魔除け代わりですね。
今夜はあちこちの家に、かぼちゃランタンが飾られていました。
くり抜いたかぼちゃの身は、料理に使われます。パンプキンシチューの香りが、各おうちから漂っていましたよ。
それでも余ってしまう家や、ハロウィンをする暇がない家もあります。冒険者などですね。
彼らのために、かぼちゃコロッケの露店があるのです。
わたしたちの前で、冒険者さんたちがコロッケを買って帰っていきました。
熱した油の中で、コロッケが踊っています。カラカラという音が、タップダンスのようですね。
「いい香りですわね。音も素晴らしい」
「ええ。ハロウィンを締めくくる、最高の食事です。いただきましょう」
その場でいただきます。食べている間、教会のみんなへのおみやげ分も揚げてもらいました。
「わたくしも、御者一家に持って返って差し上げましょうかね」
味見なんて、必要ありません。おいしいのはわかっていますから。
「では、いただきます」
揚げたてを、サクッと。
間違いありませんでした。罪深い。
かぼちゃの甘さと、玉ねぎとひき肉の塩加減が、絶妙な組み合わせですね。
はあー。一口一口が、幸せの味がします。
じゃがいもコロッケとは、また趣が違いますね。
「麗しいですわ。この露店に来て、大正解ですわ」
ウル王女も、もうコロッケがなくなりそうです。
さっきソナエさんのお家で甘いお菓子をたらふく食べたのに、まだ入りますよ。
なんという至福のときでしょう?
こんなに暖かいです。雪が降るんじゃないかという寒さの中、外へ出ているというのに。
コロッケを食べるときって、どうしてこうもホッコリするのでしょうね。
これはおいしいです。リピーターになりましょう。
「もう一個買いましょう。冷めたので結構ですよ」
おばさんに、コロッケを一つもらいます。
「冷めたのも、これはこれで違った甘みがあっておいしいですね」
「ホントですわ。これなら、御者も喜ぶでしょう」
ごちそうさまでした。結局、四個くらい食べましたかね。
教会の近くまで戻ると、御者さんが迎えに来ていました。
「コートをお返しいたしますわ」
「はい。たしかに」
わたしは、ウル王女からコートを受け取ります。
「魔王様、今日はご満足いただけましたか?」
そうそう、今日のウル王女は魔王という設定でした。
「ええ。たいそう喜びましたわ! あなたの珍しい一面も見られたし」
大げさに、魔王ウル王女はポーズを取ります。
大量のおみやげを持って、わたしたちは別れました。
「ただいま戻りました」
先に帰っていたエマたちに、声をかけます。
「みなさんに、おみやげがありますよー」
わたしは、包みをみんなに見せました。
「……またコロッケなの?」
エマが、ため息をつきます。
「どうかしましたか?」
「それがね、クリス。見てよこれを!」
テーブルの上には、大量のかぼちゃコロッケが。
みんな、考えることは一緒でした。
大量に余ったかぼちゃコロッケを見て、シスターたちが呆然としています。
残りは明日の朝、パンに挟むことにしました。
「あっ、それ」
ヨアンが、わたしが持っていたコートを手に取ります。
「お使いになったんですね?」
「え、ええ」と、ごまかしました。
ウル王女と一緒にいるのは、内緒ですから。
ヨアンのコートだったんですね。
「小さくありませんでしたか?」
「ちょうどいい大きさでした」
「でも、二枚重ねだったんですよね?」
う、わたしもジャケットを着ていたのでした。失敗しましたね。
「コロッケを買う予定だったので、使いました」
コートを、ヨアンに返しました。
かぼちゃの香りで、お姉さまの残り香って消せますかね?
(かぼちゃコロッケ編 完)
たどり着いたのは、露店です。
おばちゃんが潰したかぼちゃを丸めて、コロッケにしていました。
ハロウィンでは、かぼちゃをくり抜いてランタンにします。魔除け代わりですね。
今夜はあちこちの家に、かぼちゃランタンが飾られていました。
くり抜いたかぼちゃの身は、料理に使われます。パンプキンシチューの香りが、各おうちから漂っていましたよ。
それでも余ってしまう家や、ハロウィンをする暇がない家もあります。冒険者などですね。
彼らのために、かぼちゃコロッケの露店があるのです。
わたしたちの前で、冒険者さんたちがコロッケを買って帰っていきました。
熱した油の中で、コロッケが踊っています。カラカラという音が、タップダンスのようですね。
「いい香りですわね。音も素晴らしい」
「ええ。ハロウィンを締めくくる、最高の食事です。いただきましょう」
その場でいただきます。食べている間、教会のみんなへのおみやげ分も揚げてもらいました。
「わたくしも、御者一家に持って返って差し上げましょうかね」
味見なんて、必要ありません。おいしいのはわかっていますから。
「では、いただきます」
揚げたてを、サクッと。
間違いありませんでした。罪深い。
かぼちゃの甘さと、玉ねぎとひき肉の塩加減が、絶妙な組み合わせですね。
はあー。一口一口が、幸せの味がします。
じゃがいもコロッケとは、また趣が違いますね。
「麗しいですわ。この露店に来て、大正解ですわ」
ウル王女も、もうコロッケがなくなりそうです。
さっきソナエさんのお家で甘いお菓子をたらふく食べたのに、まだ入りますよ。
なんという至福のときでしょう?
こんなに暖かいです。雪が降るんじゃないかという寒さの中、外へ出ているというのに。
コロッケを食べるときって、どうしてこうもホッコリするのでしょうね。
これはおいしいです。リピーターになりましょう。
「もう一個買いましょう。冷めたので結構ですよ」
おばさんに、コロッケを一つもらいます。
「冷めたのも、これはこれで違った甘みがあっておいしいですね」
「ホントですわ。これなら、御者も喜ぶでしょう」
ごちそうさまでした。結局、四個くらい食べましたかね。
教会の近くまで戻ると、御者さんが迎えに来ていました。
「コートをお返しいたしますわ」
「はい。たしかに」
わたしは、ウル王女からコートを受け取ります。
「魔王様、今日はご満足いただけましたか?」
そうそう、今日のウル王女は魔王という設定でした。
「ええ。たいそう喜びましたわ! あなたの珍しい一面も見られたし」
大げさに、魔王ウル王女はポーズを取ります。
大量のおみやげを持って、わたしたちは別れました。
「ただいま戻りました」
先に帰っていたエマたちに、声をかけます。
「みなさんに、おみやげがありますよー」
わたしは、包みをみんなに見せました。
「……またコロッケなの?」
エマが、ため息をつきます。
「どうかしましたか?」
「それがね、クリス。見てよこれを!」
テーブルの上には、大量のかぼちゃコロッケが。
みんな、考えることは一緒でした。
大量に余ったかぼちゃコロッケを見て、シスターたちが呆然としています。
残りは明日の朝、パンに挟むことにしました。
「あっ、それ」
ヨアンが、わたしが持っていたコートを手に取ります。
「お使いになったんですね?」
「え、ええ」と、ごまかしました。
ウル王女と一緒にいるのは、内緒ですから。
ヨアンのコートだったんですね。
「小さくありませんでしたか?」
「ちょうどいい大きさでした」
「でも、二枚重ねだったんですよね?」
う、わたしもジャケットを着ていたのでした。失敗しましたね。
「コロッケを買う予定だったので、使いました」
コートを、ヨアンに返しました。
かぼちゃの香りで、お姉さまの残り香って消せますかね?
(かぼちゃコロッケ編 完)
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ・21時更新
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる