神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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ハロウィンは、かぼちゃコロッケで罪のつぐないを ~ギンナンとかぼちゃコロッケ~

突撃 お隣のお菓子探訪

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「そういえば、あなたの教会ではハロウィンを積極的になさってらっしゃるのですね?」

 お菓子をもらいに行く道中、ウル王女がわたしに聞いてきました。

「宗教的に禁じているのかと、思っていましたが?」
「関係ありません。ウチの神様は寛大だそうなので」

 神社などが領地に居座っていても、何ひとつ文句をいわない神なので。

「なんでも受け入れる神様なのですね?」

 大魔王すら、迎え入れるような存在ですからね。

「着きましたよ。あの家にしましょう」

 ドアを数度、ノックします。

 しばらくして、家人が出てきました。
 お夕飯時だったのでしょう。
 玄関が開いた途端に、パンプキンシチューの香りが漂ってきます。

「ヌハハハハーッ! お菓子をよこせですわーっ!」

 スパーン! と、王女がムチをふるいました!
 玄関前の地面バチンと叩きます。
 どこから持ってきたんですか?

「ほらぁ。おうちの人、呆気にとられているじゃありませんか」
「デカイおしゃもじを持っている、あなたに言われたくありませんわ!」

 何をおっしゃる。

 これは
「人の晩ごはんどきにお邪魔する際に必ず装備すべき、伝説のプラカード」
 なんですよ?

「さあさあ、お菓子をよこすのですわ!」
「さあさあ」

 わたしも便乗して、お菓子をねだります。

「お邪魔しますね。みなさん。どうか、いうとおりに。お返しもありますので」

「それなら」と、お菓子の包みをくださいました。

「ドロップですわ! 羽振りがよろしいですわ!」

 当時はお砂糖が贅沢品でしたが、王の尽力で庶民まで行き渡りましたからね。
 王様には頭が上がりません。

「ありがとうございます。少ないですが」

 わたしは、お返しに栗のクッキーを小さく包んでお家に差し上げます。

「幸先いいですわね!」
「まあ、それなりですね」

 次のおうちに参りましょう。

「ムハハー。お菓子をよこせですわ!」
「ですわー」

 次はお洋服店にお邪魔して、スナックをいただきました。

「これは、なんですの?」
「あれですよ! 携帯ラーメンを砕いたものです!」

 賞味期限の切れそうな携帯ラーメンを砕き、おしょう油を少々つけて焼いたものです。
 元々保存率を上げる程度でした。

 が、開発者のモーリッツさんが「おつまみとしてもイケる」と思いつき、お菓子として売ったとか。

 そのおかげで、ポテチに並ぶ人気お菓子として君臨しています。

「なんでも試して見るものですわね。サクサク」

 手にとって、王女がバクバクと食べ始めました。

おいしいですわ! こんなジャンク・オブ・ジャンク、食べたことありません! 蠱惑的な味がしますわね!」

 どうやら、気に入ってくださったようです。

 わたしもいただきましょう。

 うん、たしかな罪深うまさです。

 お菓子だからこそ許される、度を越した塩辛さがたまりません。
 なんという犯罪的な味わいなのでしょう?
 子どもが夢中になるのもわかります。

「体に悪いは、おいしい」、この思想を形にしたようなものですね。

「素敵ですわ。ハロウィン。もっと回りましょう!」
「はいはい」

 次のおうちは、理髪店ですよ。

 棒状のスナック菓子をもらいます。「やさい棒」ですって。

「サクサクです! やさいサラダ味とパッケージには書いてありますわ!」
「わたしは、やさいチーズ味ですね」

 本来は、「野菜を食べない子どものための、砕いてサラダ用ふりかけ」として売られていたそうで。
 こんなお菓子を開発するとは。
 この地域はすごいですね。

「それにしても、やさいサラダって、野菜以外のサラダなんてあるのでしょうか? パッケージにも、『やさい棒』って書いていますし」
「さあ……」
 
 その後も、わたしたちはあちこち回りました。

 中には「ムチでぶってくれ」という不埒な輩がいたので、制裁をくれてやりましたが。

 概ね、お菓子大作戦はうまくいったでしょう。

 で、最後に訪れたのは……。

「たのもーっ!」
「んだよ、うるっせえな」

 ソナエさんのいる神社です。
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