96 / 285
焼き鳥を「タレか塩か」で争うのは、罪 ~タレと塩の焼き鳥~
タレでも塩でも、焼き鳥は罪の味
しおりを挟む
待ちに待った焼き鳥屋さんです。
全員、汗をかいてから来たので、準備は万端ですよ。
「いらっしゃいませ。三名様ですね。こちらです」
女性店員さんに案内され、座敷まで。
「エール。それとモモ、ムネ、皮、ナンコツ、ボンジリを塩で」
「同じものをタレで!」
競い合うように、エマとフレンが注文をします。
「そちらのお客様は?」
「えっと、わたしもモモ、ムネを。あと、つくねをください。それと、さっきのボンジリってなんですか?」
「鶏のシッポのお肉です」
「じゃあそれを……タレで。それと、砂肝を塩で。あとライスを」
塩もいいかと思いましたが、可能性を残しておきましょう。
わたしが「ごはん党」であると知っているので、ふたりとも静観しています。
他には、野菜の焼きものを数点頼みます。特におナスは楽しみですね。
「お飲み物は?」
そうでした。わたし、お酒ダメなんですよね。
「グレープフルーツジュースを」
「かしこまりました」
牛カルビ串や豚バラ串などもありました。
おそらく、そちらの方がごはんには合うでしょう。
とはいえ、今日は焼き鳥です。自粛しました。
「相変わらず飲めないのね?」
「こればかりは体質ですからね。私やエマ先輩と違って、クリス先輩はお酒を分解できないのでしょう」
そのとおりです。お酒を飲むと頭が痛くなるのですよ。
「お先にお野菜をどうぞ」
最初にお通しとドリンク、大根サラダと串焼き野菜が来ました。
「では、乾杯」
エマが音頭を取って、全員でジョッキを鳴らします。
待望のおナスを。
おおっ、罪深い。
噛んだ瞬間に野菜の水分がジュワッと。
その中に含まれている旨味が、口全体に広がっていきますよ。
「あの先輩、一本いただいても?」
「あら、あなたナス嫌いじゃなかった?」
エマの言う通り、フレンはおナスを食べられません。
「なんだか、おいしそうなので」
「そうよねぇ。クリスの食べてるとこって、こっちまでお腹が空いてくるのよ」
わたしは、フレンの方へお皿を寄せました。
「どうぞ。そのために人数分頼みましたので」
「いただきます。ううん! これ、おいしい!」
フレン、おナスを克服しました。
「よかったわね。ナスを食べられて」
「はいっ」
続いて、焼き鳥が。
何からしましょう。モモですかね。
「では、シェアしましょうか」
わたしは、割り箸で串から身を引っこ抜こうとしました。
「あーっ!」
「だめーっ!」
二人して、わたしの手首を掴みます。
「な、なんです?」
オドオドしていると、エマが顔を近づけてきました。
「自分の串は、自分で食べなさい!」
「そうですよ! 串から抜くと、味が落ちてしまいます!」
そんなもんなのでしょうか? よくわかりません。
「つくねは特に串から外しちゃダメよ! 肉汁が出ちゃうの!」
この二人、串焼きガチ勢だったようですね。
それでしたら、串から抜かずに食べましょう。
「あーっ。間違いなく罪深い」
安定の味です。鶏ですから、ゴハンとの相性バッチリですね。
皮のモチモチ感と、つくねの粘り気。
これが案外、コメに合うという発見がありました。
ナンコツが、強烈な味ですね。コリッコリです。
「気に入ったみたいね、ナンコツ」
「手羽先のナンコツとは違った味わいがありますね」
「あんた、手羽先もナンコツまできれいに食べるもんね」
手羽のナンコツは、好物ですよ。田舎でよく食べました。
「オホホオ、ボンジリ最高ですね」
トロトロです。
これは塩とタレのどちらでいくか、戦争になるのもわかります。
舌の上で、絶賛大戦争中ですから。
戦争といえば、エマとフレンは冷戦状態ですね。
エマは相変わらず塩を、フレンはタレを楽しんでいます。
うーん、会話がありません。
口を開けば、言い争いになるとわかっているのでしょう。
ケンカにはなっていません。
とはいえ、歩み寄りの姿勢がほしいですね。
おっ。いいのがあるじゃないですか。
「すいません、同じメニューを、次は『塩ダレ』で」
全員、汗をかいてから来たので、準備は万端ですよ。
「いらっしゃいませ。三名様ですね。こちらです」
女性店員さんに案内され、座敷まで。
「エール。それとモモ、ムネ、皮、ナンコツ、ボンジリを塩で」
「同じものをタレで!」
競い合うように、エマとフレンが注文をします。
「そちらのお客様は?」
「えっと、わたしもモモ、ムネを。あと、つくねをください。それと、さっきのボンジリってなんですか?」
「鶏のシッポのお肉です」
「じゃあそれを……タレで。それと、砂肝を塩で。あとライスを」
塩もいいかと思いましたが、可能性を残しておきましょう。
わたしが「ごはん党」であると知っているので、ふたりとも静観しています。
他には、野菜の焼きものを数点頼みます。特におナスは楽しみですね。
「お飲み物は?」
そうでした。わたし、お酒ダメなんですよね。
「グレープフルーツジュースを」
「かしこまりました」
牛カルビ串や豚バラ串などもありました。
おそらく、そちらの方がごはんには合うでしょう。
とはいえ、今日は焼き鳥です。自粛しました。
「相変わらず飲めないのね?」
「こればかりは体質ですからね。私やエマ先輩と違って、クリス先輩はお酒を分解できないのでしょう」
そのとおりです。お酒を飲むと頭が痛くなるのですよ。
「お先にお野菜をどうぞ」
最初にお通しとドリンク、大根サラダと串焼き野菜が来ました。
「では、乾杯」
エマが音頭を取って、全員でジョッキを鳴らします。
待望のおナスを。
おおっ、罪深い。
噛んだ瞬間に野菜の水分がジュワッと。
その中に含まれている旨味が、口全体に広がっていきますよ。
「あの先輩、一本いただいても?」
「あら、あなたナス嫌いじゃなかった?」
エマの言う通り、フレンはおナスを食べられません。
「なんだか、おいしそうなので」
「そうよねぇ。クリスの食べてるとこって、こっちまでお腹が空いてくるのよ」
わたしは、フレンの方へお皿を寄せました。
「どうぞ。そのために人数分頼みましたので」
「いただきます。ううん! これ、おいしい!」
フレン、おナスを克服しました。
「よかったわね。ナスを食べられて」
「はいっ」
続いて、焼き鳥が。
何からしましょう。モモですかね。
「では、シェアしましょうか」
わたしは、割り箸で串から身を引っこ抜こうとしました。
「あーっ!」
「だめーっ!」
二人して、わたしの手首を掴みます。
「な、なんです?」
オドオドしていると、エマが顔を近づけてきました。
「自分の串は、自分で食べなさい!」
「そうですよ! 串から抜くと、味が落ちてしまいます!」
そんなもんなのでしょうか? よくわかりません。
「つくねは特に串から外しちゃダメよ! 肉汁が出ちゃうの!」
この二人、串焼きガチ勢だったようですね。
それでしたら、串から抜かずに食べましょう。
「あーっ。間違いなく罪深い」
安定の味です。鶏ですから、ゴハンとの相性バッチリですね。
皮のモチモチ感と、つくねの粘り気。
これが案外、コメに合うという発見がありました。
ナンコツが、強烈な味ですね。コリッコリです。
「気に入ったみたいね、ナンコツ」
「手羽先のナンコツとは違った味わいがありますね」
「あんた、手羽先もナンコツまできれいに食べるもんね」
手羽のナンコツは、好物ですよ。田舎でよく食べました。
「オホホオ、ボンジリ最高ですね」
トロトロです。
これは塩とタレのどちらでいくか、戦争になるのもわかります。
舌の上で、絶賛大戦争中ですから。
戦争といえば、エマとフレンは冷戦状態ですね。
エマは相変わらず塩を、フレンはタレを楽しんでいます。
うーん、会話がありません。
口を開けば、言い争いになるとわかっているのでしょう。
ケンカにはなっていません。
とはいえ、歩み寄りの姿勢がほしいですね。
おっ。いいのがあるじゃないですか。
「すいません、同じメニューを、次は『塩ダレ』で」
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が不良債権のようです〜愛して尽して失った。わたしの末路〜
帆々
恋愛
リゼは王都で工房を経営する若き経営者だ。日々忙しく過ごしている。
売り上げ以上に気にかかるのは、夫キッドの健康だった。病弱な彼には主夫業を頼むが、無理はさせられない。その分リゼが頑張って生活をカバーしてきた。二人の暮らしでそれが彼女の幸せだった。
「ご主人を甘やかせ過ぎでは?」
周囲の声もある。でも何がいけないのか? キッドのことはもちろん自分が一番わかっている。彼の家蔵の問題もあるが、大丈夫。それが結婚というものだから。リゼは信じている。
彼が体調を崩したことがきっかけで、キッドの世話を頼む看護人を雇い入れことにした。フランという女性で、キッドとは話も合い和気藹々とした様子だ。気の利く彼女にリゼも負担が減りほっと安堵していた。
しかし、自宅の上の階に住む老婦人が忠告する。キッドとフランの仲が普通ではないようだ、と。更に疑いのない真実を突きつけられてしまう。衝撃を受けてうろたえるリゼに老婦人が親切に諭す。
「お別れなさい。あなたのお父様も結婚に反対だった。あなたに相応しくない人よ」
そこへ偶然、老婦人の甥という紳士が現れた。
「エル、リゼを助けてあげて頂戴」
リゼはエルと共にキッドとフランに対峙することになる。そこでは夫の信じられない企みが発覚して———————。
『愛して尽して、失って。ゼロから始めるしあわせ探し』から改題しました。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる