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パンケーキは、罪の味 ~港のオープンカフェのパンケーキ~

モーニングは、罪の味

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 うう、早く起きすぎました。

 日が出ていますが、そんなに時間が経っていないではありませんか。やや薄暗いですね。

 日頃の習性に加え、空腹が襲ってきています。

 焼肉パーティの後、わたしは何も食べずに床へつきました。
 それがいけなかったのでしょう。

 せっかくお風呂で身体もほぐしたというのに、これでは不健康まっしぐらですね。

「走りましょう」

 軽くジョギングをすることにします。軽めに走って、脳に酸素を行き渡らせることに。
 まだ教会のオフは続きます。
 ここでへバると、わたしは食っちゃ寝が染み付いてしまうでしょう。それは最悪です。

 トレーニングウェアに着替えて、いざスタートしました。

「ほっほっほっ」

 一時間ほど走っていると、もう働いている方がいらっしゃいます。

 これから帰る人もいるようですね。ご苦労さまです。

「はっはっはっ」

 ん? おいしそうなパンの焼ける匂いがします。

「こっちですね」

 たしか、こちらのパン屋さんはとても評判だと聞きますね。
 こんな時間から、もう仕込みとは。
 食への探究心がすばらしいですね。頭が下がります。

 ですが、まだ開いていません。残念ですね。

 しばらくこの辺りをウロウロして、タイミングを見計らって入店を……。

「お?」

 今度は、コーヒーの香ばしさが、鼻をくすぐります。
 ああ、コーヒー独特の焦げ付いた匂いが、わたしを誘っているではありませんか。

「これは、行くしかないですね」

 香りのする方角へ、歩を向けます。

 コーヒーの出どころは、かつてグラタンを食べに寄った純喫茶でした。なるほど、こちらでしたか。

 店のカウンターでは、冒険者風の男性二人組が、モンスター闘技場の予想が書かれた新聞にペンで丸を振っていました。

「いらっしゃい。あら? お嬢さん、いらっしゃい。グラタンは夜からなのよ。ごめんなさいね」
「いえ。コーヒーを一つ」
「はいな。ついでに、モーニングも食べていくかい?」

 モーニングですか。実は、食べたことがありません。

「では、モーニングセットを」

 朝食セットは、すぐに用意されました。

「なるほど。これがモーニングセットと」

 メニューは、バタートースト、小鉢のサラダ、ウインナーにゆで卵です。デザートは、バナナですね。

 教会の献立と、さほど変わりません。なのに、どうしてお店だとおいしそうに見えるのでしょう?

「いただきます」

 天の恵みに感謝して、朝のコーヒーを。

「お~。罪深うまい」

 このコーヒーを飲むためだけでも、頼む価値はありますね。一杯だけでも、教会の食事より満たされる気分です。

 続いて、バタートーストを。ううん、いい香り。

 これも……おいっしいです! ふんわり柔らかくて、言葉を失います。

 ゆで卵もこうなると、違った意味を持ちますね。味わい深いです。

「そうだ。せっかくだから、こいつをつけとくれよ」

 とろみの付いた液体入りの小瓶を、奥さんがわたしの前に置きました。

「なんです、これは?」
「マヨネーズさ。小鉢の中でゆで卵を潰して、そいつと一緒に混ぜな。で、パンに挟んでおくれよ」

 アドバイス通り、たまごサンドを試してみます。

 おおおおおおお! ううううううう罪深うまいぃ! これは朝から、贅沢ですねぇ!

 ゆで卵の味付けなんて、塩くらいしか思いつきませんでした。
 あるいは、ラーメンの煮卵くらいですかね。
 まさか、こんな大変貌を遂げるとは。

 また、潰したゆでたまごはサラダに乗せてもいい仕事をします。
 さっぱりしたサラダに、濃厚なマヨは絶妙な味わいですねぇ。

「凝ったメニューじゃないから、物足りないだろ?」
「いいえっ! 最っ高の朝を迎えることができましたっ!」

 シメにバナナをいただき、幸せな状態で教会へ帰ります。

「あら、いましたわ! クリスさん?」

 あれれ? ウル王女の馬車が、教会の前に停まっていますね。 
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