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第一部 完 前編 親子丼は、罪の味 ~ドワーフ定食屋の親子丼~
お通し天国で、お腹いっぱいになりそう
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なるほど。ここが、モーリッツさんの故郷だったんですね。
だとすると、このおばあさんが、モーリッツさんのお母様なのですね。
ドワーフのどんぶり屋さん、どこかで聞いたことがあると思っていましたが。
「どうかしたかい?」
おばあさんが、木製のお盆を持って戻ってきました。冷たいお茶をだしてくれます。
「あっ、いえ」
わたしは、着席し直しました。お茶をいただきます。
走ってきた後なので、身体じゅうに水分が行き渡ります。
「それにしても、すごい量のおかずですね」
カウンターの奥に、大皿が大量にあります。
お皿に乗っているおかずは、根菜、かぼちゃ。
きんぴらごぼうに、ひじき。
おナスの煮浸しに、ほうれん草のゴマ和え。
はわわ……どれもおいしそうです。
お漬物までありますね。
天国はココにありました。
「ウチは料理っつったら、こんなんしかないよ」
リクエストに答えて、二品だけお通しとして出すのだとか。
「残っちゃったりはしないんですか?
「夜になったら、全部なくなるよ」
飲みに来るお客さんが、平らげてしまうそうです。
さすがドワーフは飲兵衛さんだけでなく大食漢も多いのですね。男性も女性も、関係ないそうです。
根菜に大根がありました。これはいいですね!
「たまに魚とか出すけど、たまにだよ」
「例えば?」
「煮物が、ぶり大根にチェンジ」
いいですね! 最高じゃないですか!
まさに、極楽浄土!
ですが、今日はありません……。
「で、どれにする?」
迷わせますねぇ。どう組み立てていいものやら。
親子丼が待っていますから、あまりお腹にドンとくるものは控えましょう。
とはいえ、根菜は捨てがたい。
カウンターの奥は、生活スペースになっているようです。
写真の男性が、休憩をとっていました。
あの方が、モーリッツさんのお兄さんなんでしょう。
おばあさんに休めと言っていましたが、ご自身が先に休んでいます。言いくるめられたのでしょうね。
お兄さんは、白米と煮物をガツガツと食べています。
レンコンとか、すごい音を立てて噛んでいました。
ああ、これは有罪です。
こんな形で、わたしを誘導するとは。
決めました。
「まずは、根菜を。ほかは、後でリクエストします」
「そうかい。じゃあ、おあがりよ」
出されたのは、お茶のおかわりとお通しの煮物です。
小鉢に入った小芋、しいたけ、レンコン、にんじんですね。
「もうちょっとしたら、親子丼もできるから」
相変わらず、おばあさんの表情に愛想はありません。
が、愛情は伝わってきます。
「ありがとうございます。では、いただきます」
この味がしみてしみまくっているであろう、大根を口へ。
ああ、罪深い。
しみます。しみています。
優しい味です。
煮物というので、もっと味気ないのだと思っていましたが、これはおいしいです。
特に、小さなしいたけに味がしみていて、クセになりますね。
「すごい。レンコンがおいしいです」
レンコンとしいたけが苦手な人は多いですが、これなら食べられるのではないでしょうか。
「気に入ったかい?」
「はい。とってもおいしいですね」
「ほしかったら、おかわりがあるよ」
「いえ。遠慮しておきます」
これ以上は、食べ過ぎです。
まだ親子丼が待ち構えているのですから。
なので、お腹に優しそうなものを。
「えっと、ひじきをいただけますか?」
「あいよ」
ひじきの煮物を少量、おばあさんは小鉢に入れてくれました。
ああ、これも最高です。
わたしは、煮物を堪能していました。
しかも、罪の意識にさいなまれません。
煮物なら、教会でも食べていますし。
ですが、ここのお野菜の煮込み具合はどうでしょう。最高なんですよ。
お兄さんが、席を立ちます。おうどんを作り始めました。
いよいよ、親子丼セットが来そうですね。
だとすると、このおばあさんが、モーリッツさんのお母様なのですね。
ドワーフのどんぶり屋さん、どこかで聞いたことがあると思っていましたが。
「どうかしたかい?」
おばあさんが、木製のお盆を持って戻ってきました。冷たいお茶をだしてくれます。
「あっ、いえ」
わたしは、着席し直しました。お茶をいただきます。
走ってきた後なので、身体じゅうに水分が行き渡ります。
「それにしても、すごい量のおかずですね」
カウンターの奥に、大皿が大量にあります。
お皿に乗っているおかずは、根菜、かぼちゃ。
きんぴらごぼうに、ひじき。
おナスの煮浸しに、ほうれん草のゴマ和え。
はわわ……どれもおいしそうです。
お漬物までありますね。
天国はココにありました。
「ウチは料理っつったら、こんなんしかないよ」
リクエストに答えて、二品だけお通しとして出すのだとか。
「残っちゃったりはしないんですか?
「夜になったら、全部なくなるよ」
飲みに来るお客さんが、平らげてしまうそうです。
さすがドワーフは飲兵衛さんだけでなく大食漢も多いのですね。男性も女性も、関係ないそうです。
根菜に大根がありました。これはいいですね!
「たまに魚とか出すけど、たまにだよ」
「例えば?」
「煮物が、ぶり大根にチェンジ」
いいですね! 最高じゃないですか!
まさに、極楽浄土!
ですが、今日はありません……。
「で、どれにする?」
迷わせますねぇ。どう組み立てていいものやら。
親子丼が待っていますから、あまりお腹にドンとくるものは控えましょう。
とはいえ、根菜は捨てがたい。
カウンターの奥は、生活スペースになっているようです。
写真の男性が、休憩をとっていました。
あの方が、モーリッツさんのお兄さんなんでしょう。
おばあさんに休めと言っていましたが、ご自身が先に休んでいます。言いくるめられたのでしょうね。
お兄さんは、白米と煮物をガツガツと食べています。
レンコンとか、すごい音を立てて噛んでいました。
ああ、これは有罪です。
こんな形で、わたしを誘導するとは。
決めました。
「まずは、根菜を。ほかは、後でリクエストします」
「そうかい。じゃあ、おあがりよ」
出されたのは、お茶のおかわりとお通しの煮物です。
小鉢に入った小芋、しいたけ、レンコン、にんじんですね。
「もうちょっとしたら、親子丼もできるから」
相変わらず、おばあさんの表情に愛想はありません。
が、愛情は伝わってきます。
「ありがとうございます。では、いただきます」
この味がしみてしみまくっているであろう、大根を口へ。
ああ、罪深い。
しみます。しみています。
優しい味です。
煮物というので、もっと味気ないのだと思っていましたが、これはおいしいです。
特に、小さなしいたけに味がしみていて、クセになりますね。
「すごい。レンコンがおいしいです」
レンコンとしいたけが苦手な人は多いですが、これなら食べられるのではないでしょうか。
「気に入ったかい?」
「はい。とってもおいしいですね」
「ほしかったら、おかわりがあるよ」
「いえ。遠慮しておきます」
これ以上は、食べ過ぎです。
まだ親子丼が待ち構えているのですから。
なので、お腹に優しそうなものを。
「えっと、ひじきをいただけますか?」
「あいよ」
ひじきの煮物を少量、おばあさんは小鉢に入れてくれました。
ああ、これも最高です。
わたしは、煮物を堪能していました。
しかも、罪の意識にさいなまれません。
煮物なら、教会でも食べていますし。
ですが、ここのお野菜の煮込み具合はどうでしょう。最高なんですよ。
お兄さんが、席を立ちます。おうどんを作り始めました。
いよいよ、親子丼セットが来そうですね。
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