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第二部 「罪は悪役令嬢とともに」 ロースター焼肉は、罪の味 ~路地裏の焼き肉屋で、公爵令嬢と肉を焼く~
いしのなかにいる
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わたしは今、石の中にいます。
別に死んだわけではありません。
教会から離れた位置にある滝のそばで、トレーニングをしていのです。
肉体強化の魔法を全身に施しているので、まったく痛くもありません。
「どうしました、シスター・クリス。あなたの力は、そんなものではないでしょう?」
岩の向こうから、エンシェントが声をかけてきます。
わたしの突きを受け流し、岩場へ投げ飛ばしたのでした。
その結果が、これです。
「この程度の岩場、あなたなら造作もないでしょう。抜け出てみなさい」
「ほおおおおおおお! わったあああああああっ!」
エンシェントの教え通り、わたしは岩場から脱出しました。
「お覚悟!」
「望むところ!」
元は、エンシェントがわたしと一戦交えたいと言ってきたのです。
なので、手加減はできません。
そうはいっても、わたしとエンシェントでは、天と地ほどの実力差がありました。
ブレイクダンスのようなアクロバティックなキックを繰り出しても、裏拳や投げのコンビネーションを重ねても、すべて受け流されてしまいます。
「発想が貧困です。そのせいで技が軽い!」
当て身投げによって、わたしは宙を一回転させられました。
「ぬう! ホワッタァ!」
頭から落ちそうになるのを、ブリッジで耐えます。
逆立ちの体制から、上段回し蹴りを。
ダメでした。また受け止められます。
投げられそうになるのは、かろうじて腕へのキックで逃れました。
「肉体強化に頼り過ぎなのです。ピンポイントでできるようになさい。そうすれば、他の技にも集中できます」
「やってるんですよ!」
実際、肉体保護や強化の魔法は、腕や足だけに施しています。
受けつつ打つ。
そうしているはずですが。
「割合が中途半端なのです。もっと絞り込みなさい」
「ムチャ言わないでください!」
「軟弱ですよ! それでもワタシの弟子の一人ですか?」
あなたの弟子でも、できないコの方が多いですよ!
「ぜえぜえ。ありがとうございました」
「こちらこそ。いい運動になりました。ありがとう」
一時間のスパーで、本日の戦闘訓練は終了しました。
もう、二度とやりたくありませんね。
エンシェントが獲ったヤマメを、塩焼きにしています。
「院長は、この後どうなさるので?」
「食後、シスター・エマに稽古をつけます」
肉体のトレーニングの後は、魔法戦闘の訓練ですか……。
どこまで修行に熱心なのでしょう?
「エマが相手では、あなたほどの格闘勝負になりませんから」
「あの子は魔術特化で、後方支援型ですからね」
最低限の格闘以外、エマは専門的な訓練を受けていません。
「それが終わって、ようやく休暇を取ります」
明日は、教会全体がお休みの日です。
業務は他の教会に担当してもらい、我々は三日ほどの休みをもらいます。
田舎へ帰る方や、実家の家業を手伝う方もいるでしょう。
副業に精を出す人や、一人を満喫するような人もいますね。
エンシェントは、南の島へ滝行に向かうそうです。
それは休暇と呼ぶのでしょうか?
「……ごゆっくりなさってください」
「それよりあなたです。また食べ歩くので?」
「ええ。もちろん」
プランは決めてあります。
「焼き肉を、食べに行こうかと」
わたしが告げると、エンシェントはなんとも言えない顔になりました。
わたしを責めるでもない、かといって称賛するでもありません。
「それもいいですね。南の島に到着したら、バーベキューも視野に入れるとしますか」
少し、心がゆらぎました。
バーベキューという手もありましたね。
それは、キャンプでいくらでもできますから、次の機会にしましょう。
目的がブレてはいけません。
わたしが臨むのは、一人焼肉なのですから。
「焼けましたよ」
「はい。いただきます」
ああ……さっぱりしてて……普通。
「もう少し、塩をいただけますか?」
「ぜいたくですね、あなたは」
別に死んだわけではありません。
教会から離れた位置にある滝のそばで、トレーニングをしていのです。
肉体強化の魔法を全身に施しているので、まったく痛くもありません。
「どうしました、シスター・クリス。あなたの力は、そんなものではないでしょう?」
岩の向こうから、エンシェントが声をかけてきます。
わたしの突きを受け流し、岩場へ投げ飛ばしたのでした。
その結果が、これです。
「この程度の岩場、あなたなら造作もないでしょう。抜け出てみなさい」
「ほおおおおおおお! わったあああああああっ!」
エンシェントの教え通り、わたしは岩場から脱出しました。
「お覚悟!」
「望むところ!」
元は、エンシェントがわたしと一戦交えたいと言ってきたのです。
なので、手加減はできません。
そうはいっても、わたしとエンシェントでは、天と地ほどの実力差がありました。
ブレイクダンスのようなアクロバティックなキックを繰り出しても、裏拳や投げのコンビネーションを重ねても、すべて受け流されてしまいます。
「発想が貧困です。そのせいで技が軽い!」
当て身投げによって、わたしは宙を一回転させられました。
「ぬう! ホワッタァ!」
頭から落ちそうになるのを、ブリッジで耐えます。
逆立ちの体制から、上段回し蹴りを。
ダメでした。また受け止められます。
投げられそうになるのは、かろうじて腕へのキックで逃れました。
「肉体強化に頼り過ぎなのです。ピンポイントでできるようになさい。そうすれば、他の技にも集中できます」
「やってるんですよ!」
実際、肉体保護や強化の魔法は、腕や足だけに施しています。
受けつつ打つ。
そうしているはずですが。
「割合が中途半端なのです。もっと絞り込みなさい」
「ムチャ言わないでください!」
「軟弱ですよ! それでもワタシの弟子の一人ですか?」
あなたの弟子でも、できないコの方が多いですよ!
「ぜえぜえ。ありがとうございました」
「こちらこそ。いい運動になりました。ありがとう」
一時間のスパーで、本日の戦闘訓練は終了しました。
もう、二度とやりたくありませんね。
エンシェントが獲ったヤマメを、塩焼きにしています。
「院長は、この後どうなさるので?」
「食後、シスター・エマに稽古をつけます」
肉体のトレーニングの後は、魔法戦闘の訓練ですか……。
どこまで修行に熱心なのでしょう?
「エマが相手では、あなたほどの格闘勝負になりませんから」
「あの子は魔術特化で、後方支援型ですからね」
最低限の格闘以外、エマは専門的な訓練を受けていません。
「それが終わって、ようやく休暇を取ります」
明日は、教会全体がお休みの日です。
業務は他の教会に担当してもらい、我々は三日ほどの休みをもらいます。
田舎へ帰る方や、実家の家業を手伝う方もいるでしょう。
副業に精を出す人や、一人を満喫するような人もいますね。
エンシェントは、南の島へ滝行に向かうそうです。
それは休暇と呼ぶのでしょうか?
「……ごゆっくりなさってください」
「それよりあなたです。また食べ歩くので?」
「ええ。もちろん」
プランは決めてあります。
「焼き肉を、食べに行こうかと」
わたしが告げると、エンシェントはなんとも言えない顔になりました。
わたしを責めるでもない、かといって称賛するでもありません。
「それもいいですね。南の島に到着したら、バーベキューも視野に入れるとしますか」
少し、心がゆらぎました。
バーベキューという手もありましたね。
それは、キャンプでいくらでもできますから、次の機会にしましょう。
目的がブレてはいけません。
わたしが臨むのは、一人焼肉なのですから。
「焼けましたよ」
「はい。いただきます」
ああ……さっぱりしてて……普通。
「もう少し、塩をいただけますか?」
「ぜいたくですね、あなたは」
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