上 下
52 / 281
激辛カレーライスは、罪の味ィィィィィ! ~オタカフェの激辛カレーライス~

シスターに、ニ度天罰が下る

しおりを挟む
「ううえええ辛い! チクショーッ!」
「どうしたのクリスちゃん! 人格が変わってるわよ!」

 そりゃあ人格も変わりますよ! こんなの食べたら!

 これは、劇物です! 口の中が爆発しました。たったチキンひとかけら食べただけで、脳天が破裂しそうでした。

 汗が、顔中に吹き出します。これは、人を殺せますね。魔物とかだったら、一撃で倒せるのでは?

「だから、やめたほうがいいわよって」
「すいません。こんなにヤバい代物だったとは知らず」

 まだ、咳が止まりません。あースゴい。

「大丈夫、クリスちゃん?」
「ええ。なんとか」

 水を頂いて、事なきを得ました。ああ、辛い。まだ舌がしびれてしますね。

「ヤバそうね。アタシのポークはやめておく?」
「いえ。いただけますか?」

 気分は爽快なんですよね。ガツンと来た後のクールダウンが、心地よいです。

 これが、辛味の魅力なのでしょう。でも、体験は一度で十分ですが。

「じゃあ、ビーフをもらうわね。ちょうど、甘みのあるルーでリセットしたいと思っていたのよ」

 ヘルトさんとも、カレーを少しだけ分け合います。


 んぐ、これも天罰からい!

 
「……辛ぇ! なんだこれクソッタレぇ!?」

 思わず、わたしは席を立ちました。
 また、口調が変わってしまうとは。

 さっきより辛味は抑えられていますが、それでも人間が耐えられるレベルを凌駕してします。
 これはもう、マークを付けて化学系劇物保管施設に隔離したほうがいいのでは?

 辛い食べ物って、人格さえ崩壊させてしまうのですね。

「こんなのよく平然と食べられますね? ゲッホ!」

 舌を、水で中和します。

「これでもマイルドめな方よ。もっと辛くしてもらうことだってあるわ」
「そんな自らムチ打ちするようなマネをなさらなくても!」
「辛いほうが、おいしいのよ」

 たしかに、味はとてもおいしいです!

 チキンはホロホロ舌で簡単に崩れて、辛い中にもコクがありました。

 ポークの方は、脂が乗って辛味がより高みに到達しています。ライスに一番合うかも知れません。

 こんなに辛くなければ、ふつうに美味しいでしょうね。

「中辛のビーフもおいしかったわ。刺激が少なくてもおいしいのは、この店ぐらいよ」

 子爵は、弟子のヘルトさんともカレーを分け合います。

「……うげえええええ!」

 今度は、ヘルトさんが悲鳴をあげる番でした。
 あれだけの辛いカレーを食べておきながら、子爵のカレーには耐えられないようです。

「師匠! いったいぜんたい何辛なにからを頼んだの!?」

 聞いたこともない言葉が飛んできました。

「あの、何辛とは?」
「この店はね、頼める辛さにレベルがあるの。一から一〇まであるの」

 ちなみに、わたしのレベルは五。中辛だそうですね。

「あたしはマックスの一〇辛。いわゆる激辛ってレベルね。で、師匠は?」


「二〇辛よ」


「に、二〇辛!? そんなの出たの?」

「ええ。特別に頼んでもらったの。商品化の目安として、アタシが試食しているのよ」

 人間では、舌を近づけることさえできない境地だとか。

「なんかねぇ、『アークデーモンも一発で気絶させる唐辛子』を開発したから、混ぜてもらったのよ。味見よ味見」

 どんな薬草を作るんですか、この人は!

「アークデーモンが、気絶するレベルなの!? 毒や火薬を食べてもでも死なないのに!? 冗談じゃないわ! そんなものを食べさせるだなんて!」

 シスター・ローラは魔族ですから、平気かも……おっと、毒が漏れ出てしまいました。

「呆れた! 相変わらずトコトン刺激を求めてるのね、師匠は? 歳を取って、舌がマヒしたんじゃないのかしら?」
「失礼ね! まだアラフィフよ! ピチピチなんだから!」

 話していると、再びメイドさんが。

「あのートッピングは、何にいたしましょう?」


 まだ、わたしを殺しにきますか……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました 。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。 令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。 そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。 ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

わがまま令嬢の末路

遺灰
ファンタジー
清く正しく美しく、頑張って生きた先に待っていたのは断頭台でした。 悪役令嬢として死んだ私は、今度は自分勝手に我がままに生きると決めた。我慢なんてしないし、欲しいものは必ず手に入れてみせる。 あの薄暗い牢獄で夢見た未来も、あの子も必ずこの手にーーー。 *** これは悪役令嬢が人生をやり直すチャンスを手に入れ、自由を目指して生きる物語。彼女が辿り着くのは、地獄か天国か。例えどんな結末を迎えようとも、それを決めるのは彼女自身だ。 (※内容は小説家になろうに投稿されているものと同一)

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...