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海鮮丼は、罪の味 ~漁港の海鮮丼とオジサンの……~

ゴロツキは常に食卓を荒らす

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 それにしても海賊の頭は、わかりやすい格好をしています。つば広のハットにアイパッチ、手にはカギ爪という出で立ち。
 これで一般市民ですという方が、無理があるでしょう。

「てめえ、ウチのシマを荒らしているらしいな」

 海賊頭が、大将を脅しにかかります。

「盗賊にだって、ギルドはあるんだぜ。テメエらは俺らのテリトリーを侵害している。シノギを邪魔するってんなら、容赦しねえ」
「自分は手を汚さずに、村人に働かせておいて何がシノギだ!」

 大将も負けていません。 

「誰だって、犯罪者になりたいわけじゃない。オレもそうだった。しかし、まともに生きる道だってあるはずだ」
「道を踏み外してもらわねえと、こっちはオマンマの食い上げになるんだよ!」

 テーブルをカギ爪で払いました。おしょう油の瓶やらお箸やらが、床に散乱します。

「どけ嬢ちゃん。ここはもう閉店だぜ。今からこの店のオーナーと大事な話があるんでね」
「食事の邪魔をしておいて、会議があるから引っ込めとは何事ですか?」
「……ああ? 殺されてえのかテメエ」

 海賊が、露骨に嫌な顔をしました。

「お嬢ちゃんよしな! 相手は海賊だ。ここはオレに任せて帰るんだ」
「大将、お代金はこちらに置いておきます。今からこちらの方とお話がございますので」

 テーブルに、料金以上のお金を置きます。

「多すぎるぜ」
「扉の弁償代ですので」

 わたしがいうと、海賊が大笑いを始めます。

「ギャハハハ! おもしれえ嬢ちゃんだぜ! この俺の相手をしようってか? いいぜいいぜぇ。たっぷりかわいがっ――」

 海賊がなにか言い終える前に、わたしのヒザが海賊のアゴを打ち抜きました。
 そのまま入り口を突き飛ばし、店の外に飛び出します。

「まだ、やりますか?」

 今度は、頭突きを鼻先に見舞いました。

「まだ、やりますか?」

 相手が、カギ爪を振り回し始めます。

「ホアタ!」

 そこへも、頭突きを一発食らわせました。

 頑丈なカギ部分が壊れると思っていなかったのでしょう。粉々に砕けた爪を見て、海賊が冷や汗をかきだしました。怖いなら、やらなければいいのに。

「……まだ、やりますか?」

 食事を邪魔されて、こちらは気が立っています。

「ホアアッタ!」

 なので、土手っ腹に一発打ち込みました。

「まだ、やりますか?」

 完全に怯えきった海賊頭に、最終宣告です。

「ひいいいいい! お前らやっちまえ!」

 配下に、店を襲わせようとしていました。彼らは、奥さんとお子さんを狙っています。

 仕方ありません。ここはひとつ、海賊頭には「武器になって」もらいます。

「ホアアアアタタタタタ!」
「いやあああああ!」

 三人組の海賊子分たちを、海賊頭をヌンチャク代わりにしてぶっ飛ばしました。

 全員、海へ叩き落とします。

「あなたもホアッタ!」

 最後は、海賊頭を蹴り飛ばしへ海へ。

「お姉ちゃん、お寿司屋さんが!」

 いけません! お寿司屋さんも、ターゲットなのでした! 

 急いで、お店に駆けつけます。

「大丈――」

 しかし、わたしがたどり着いた頃には、全てが終わっていました。

 海賊たちは、壊滅していました。わたしがやった以上のボロ雑巾になって。


「シスター・エンシェント」


 やったのは、スキンヘッドのエルフです。
 エンシェント院長でした。




 その後、海賊たちは全員ミュラーさんたち冒険者ギルド預かりになって、牢屋に入れられるそうです。

 海賊らが連行されている間、わたしは茫然となっていました。
 
 どうやら、潮時のようです。
 
 さようなら。わたしの趣味。密かな楽しみよ。これからは質素に……。


「あ、あの、院長」
「少し、お酒に付き合ってください。シスター・クリス」

 言いながら、エンシェントはグラスを傾けるジェスチャーをします。

「え? と、言いますと」
「今から、夕食にしようと思いまして」

 そういって、シスター・エンシェントはハマグリの網焼き屋台に座るのでした。

「でも」
「ごちそうします」

 そうおっしゃるなら。
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