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初めての、罪の味 ~ポテチ一袋~
シスター・ローラの正体
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シスター・ローラは純粋なシスターではなく、ハーレム出身のステージ歌手だったそうです。
かつてこの大陸を総べていた魔王の復活に、深く関わっていたとのこと。
魔王の攻略法を知ってしまい、魔族に狙われていたのでした。
困り果てた彼女は王国の騎士団を頼り、我が協会を紹介してかくまっていたのだとか。
しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。
とうとう復活した魔王に、先生の所在がバレてしまいます。
わたしのせいでした。功績を焦ったわたしがスタンドプレーをしたから。
中級魔族がチクったのかと思ったら、取り巻きの方でした。
魔王は教会にまでやってきて、「ローラを差し出せ」と脅してきました。
わたしたちは、そのときどうしたか。
戦いました。
シスター総出で、相手を袋叩きにしたのです。
相手が泣くまで。泣いて詫びるまで。
そりゃあ、魔王は怖かったです。一度肉弾戦を挑んでみましたが、拳が相手の身体をすり抜けてしまいました。逆に、魔王の攻撃は我々に届くという理不尽さ。
しかも、桁違いの強さだったのです。
が、そのときはみんながシスター・ローラの弟子でした。ローラ先生を守るため、彼女を狙う魔族をボコボコにしたのです。
ええ、歌で。
シスターローラは、ただの指導員ではありませんでした。この魔族を倒せる歌を、教えていたのです。
しかし、この歌を覚えるには条件がありました。
歌唱者が、処女であること。
わたしを鍛えたことだって、彼女の計画の一つでした。ミッションで鉢合わせた中級魔族に、わたしの純血を奪わせるわけにはいかなかったからでしょう。
彼女だって、死ぬのは怖かったということ。ちゃんと予防線は張っていたのです。
最終的に、我が教会で魔王を消滅させることが目的だったのでしょう。
我々シスターは、彼女に一杯食わされたと言っていいでしょう。
わたしを含めたシスターは総出で、全霊を込めて歌います。魔王撃滅のために。手をつなぎ合い、心の限り。
歌が魔王の弱点だったなんて、思いもしませんでした。しかし、浄化作用があると聞かされて、可能性にかけたのです。
どうせ、肉弾戦では手も足も出ませんからね。人間の常識が通用しない相手ですし。
わたしたちシスターの力で、デーモンの王は浄化されました。
一人の犠牲者も出すことなく、我々は最強の悪魔に勝利したのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「以上が、わたしが強くなった経緯です」
「その後、シスター・ローラはどうなさったので?」
わたしは、ゴロンさんからの質問に首を振ります。
「すべてが終わった後、責任をとって彼女はこの教会を去りました。今は、どこにいるのかもわかりません」
どこか別の大陸へ移ったか。魔物に殺されたという噂も聞きました。
ゴロンさんたちはショックを受けていました。
「ですが、わたしは信じません。あの人が魔王ごときに負けるイメージなんて、湧いてきませんよ」
「そうですね。シスター・クリスの師匠ですもんね」
わたしは、苦笑いを浮かべます。
「強くなるのはいいですが、どうなりたいかの方が大事ですよ。みなさんも、目的を持って行動しましょう。でないと、当時のわたしみたいに迷走することになりますから」
「はい!」
こうして、トレーニングは終了となりました。
学生時代によく訪れていた港の石段に、わたしは腰を掛けます。
ローラ先生は、今ごろどうしているのでしょうね?
「一つどうだい?」
誰かがわたしに、ポテチ一袋を差し出してくれました。
顔を上げて、わたしは手の主と向き合います。
そこにいたのは、ダークエルフさんでした。
銀髪片目を隠し、はちきれんばかりの巨乳ではありますが、ほっそりとした女性です。
「まあ、ローラ先生ではありませんか」
しかし、声は同じです。わたしは彼女の正体を知っていました。
この人こそ、シスターローラです。
かつてこの大陸を総べていた魔王の復活に、深く関わっていたとのこと。
魔王の攻略法を知ってしまい、魔族に狙われていたのでした。
困り果てた彼女は王国の騎士団を頼り、我が協会を紹介してかくまっていたのだとか。
しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。
とうとう復活した魔王に、先生の所在がバレてしまいます。
わたしのせいでした。功績を焦ったわたしがスタンドプレーをしたから。
中級魔族がチクったのかと思ったら、取り巻きの方でした。
魔王は教会にまでやってきて、「ローラを差し出せ」と脅してきました。
わたしたちは、そのときどうしたか。
戦いました。
シスター総出で、相手を袋叩きにしたのです。
相手が泣くまで。泣いて詫びるまで。
そりゃあ、魔王は怖かったです。一度肉弾戦を挑んでみましたが、拳が相手の身体をすり抜けてしまいました。逆に、魔王の攻撃は我々に届くという理不尽さ。
しかも、桁違いの強さだったのです。
が、そのときはみんながシスター・ローラの弟子でした。ローラ先生を守るため、彼女を狙う魔族をボコボコにしたのです。
ええ、歌で。
シスターローラは、ただの指導員ではありませんでした。この魔族を倒せる歌を、教えていたのです。
しかし、この歌を覚えるには条件がありました。
歌唱者が、処女であること。
わたしを鍛えたことだって、彼女の計画の一つでした。ミッションで鉢合わせた中級魔族に、わたしの純血を奪わせるわけにはいかなかったからでしょう。
彼女だって、死ぬのは怖かったということ。ちゃんと予防線は張っていたのです。
最終的に、我が教会で魔王を消滅させることが目的だったのでしょう。
我々シスターは、彼女に一杯食わされたと言っていいでしょう。
わたしを含めたシスターは総出で、全霊を込めて歌います。魔王撃滅のために。手をつなぎ合い、心の限り。
歌が魔王の弱点だったなんて、思いもしませんでした。しかし、浄化作用があると聞かされて、可能性にかけたのです。
どうせ、肉弾戦では手も足も出ませんからね。人間の常識が通用しない相手ですし。
わたしたちシスターの力で、デーモンの王は浄化されました。
一人の犠牲者も出すことなく、我々は最強の悪魔に勝利したのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「以上が、わたしが強くなった経緯です」
「その後、シスター・ローラはどうなさったので?」
わたしは、ゴロンさんからの質問に首を振ります。
「すべてが終わった後、責任をとって彼女はこの教会を去りました。今は、どこにいるのかもわかりません」
どこか別の大陸へ移ったか。魔物に殺されたという噂も聞きました。
ゴロンさんたちはショックを受けていました。
「ですが、わたしは信じません。あの人が魔王ごときに負けるイメージなんて、湧いてきませんよ」
「そうですね。シスター・クリスの師匠ですもんね」
わたしは、苦笑いを浮かべます。
「強くなるのはいいですが、どうなりたいかの方が大事ですよ。みなさんも、目的を持って行動しましょう。でないと、当時のわたしみたいに迷走することになりますから」
「はい!」
こうして、トレーニングは終了となりました。
学生時代によく訪れていた港の石段に、わたしは腰を掛けます。
ローラ先生は、今ごろどうしているのでしょうね?
「一つどうだい?」
誰かがわたしに、ポテチ一袋を差し出してくれました。
顔を上げて、わたしは手の主と向き合います。
そこにいたのは、ダークエルフさんでした。
銀髪片目を隠し、はちきれんばかりの巨乳ではありますが、ほっそりとした女性です。
「まあ、ローラ先生ではありませんか」
しかし、声は同じです。わたしは彼女の正体を知っていました。
この人こそ、シスターローラです。
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