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初めての、罪の味 ~ポテチ一袋~
武術の指導
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「セッ?」
一二歳の子どもだったわたしは、シスター・ローラ言葉の意味が理解できません。
「……わたしには、よくわかりません」
「今は、わかんなくてもいいよ。オトナになったら、いやってほどわかるからさ」
へへっ、と、ローラ先生は笑います。
「あんたには、人を引きつける何かがある。それがなにかってのはあたしにも表現できないが、きっと色んな人がさ、あんたに救われると思うよ」
足を組みながら、ローラ先生はまた行儀悪くポテチを貪ります。
「わたしは、あなたが言うほど優れた人間じゃありませんよ」
「気が向いたら、歌のレッスンに戻ってきな。待ってるからさ」
「……考えておきます。ごちそうさまでした」
残りのポテチを先生に返し、わたしはその場を立ち去ります。
あまりにアレなローラさんに反発しつつ、わたしの中に罪の味が刻まれたのでした。
その罪深さのため、出前ニャンの方々にはポテチの件は伏せております。
また、彼女はわたしの武術師匠でもあります。
とある依頼で、ダンジョンへ探索しに行ったときのことでした。
わたしたちのパーティは、強いモンスターに囲まれてしまったのです。
当時のわたしは、まだしがないプリーストで、武術などロクに学んでいません。このままでは全滅を待つのみでした。
しかも、相手は自分をグレーターデーモンと名乗ったじゃありませんか。
「修道女か。これはいい。食ったらより強い力を得られるぜ」
魔物が、疲弊しているわたしたちを品定めします。
「みなさんは、逃げて。彼の狙いはわたしのようですので。あなたも、それでいいでしょ? 見逃しなさい!」
わたしが囮なっている間に、仲間に助けを呼んでもらう作戦を立てます。
しかし、仲間はわたしを見殺しにできないと反論してきました。
「ここで全滅しては、街が壊されます。わたしだって、ただでは死にません!」
「ギハハハァ! いい子だ、お嬢さん。お前さんの心意気に免じて、仲間は見逃してやろう」
「ありがたいですね。さあ、みなさん早く!」
後にわかったのですが、この魔族は仲間の増援さえ食い物にしようと考えていたらしいです。わたしをいたぶることもできて、わたしの仲間も殺害するつもりだったと。魔族らしい卑劣漢でした。
しかし、彼の作戦はもろくも崩れ去ります。シスター・ローラの手によって。
「どうしてここに? シスター・ローラ?」
「あなたが実績を積みたくて焦っているのが、わかったからさ。それに、あたしだって魔族はキライでね!」
ローラ先生は、魔族などモノともしませんでした。魔族の片腕片足を砕き、鼻っ柱をへし折ります。
心まで折れた魔族が泣いて詫びると、こう提案しました。
「じゃあ、この子の訓練相手になるんだね」
わたしを、ローラ先生は親指で指し示しました。
満身創痍の魔族をトレーナーとして、わたしを鍛えると言い出したのです。
「負けってのは、下手すると一生トラウマになる。それを払拭するには、慣れていき、乗り越えるしかないのさ。負けて負けて、それでも砂を噛んで立ち上がって、自分を負かした相手を超えていく。さあ、わかったらさっさとやりな!」
「はい! ホアチャ!」
ボロボロになりながら、わたしは魔族相手に戦います。ローラ先生の指導はハチャメチャでしたが、効率的で実践的でした。
相手も「手加減したら殺す」と言われ、必死です。
仲間が増援を呼んでかけつけてくれた頃には、わたしはそれなりに様になっていました。
シスター・ローラ先生の指導の元、わたしはメキメキと武術を習得していきます。
気がつけば、グレーターデーモンくらいならまったく恐れない肉体を、わたしは手に入れていました。
コーチ役だった、中級魔族の心を入れ替えてしまうほどに。
ですが、後にローラ先生がニセモノのシスターだと判明します。
一二歳の子どもだったわたしは、シスター・ローラ言葉の意味が理解できません。
「……わたしには、よくわかりません」
「今は、わかんなくてもいいよ。オトナになったら、いやってほどわかるからさ」
へへっ、と、ローラ先生は笑います。
「あんたには、人を引きつける何かがある。それがなにかってのはあたしにも表現できないが、きっと色んな人がさ、あんたに救われると思うよ」
足を組みながら、ローラ先生はまた行儀悪くポテチを貪ります。
「わたしは、あなたが言うほど優れた人間じゃありませんよ」
「気が向いたら、歌のレッスンに戻ってきな。待ってるからさ」
「……考えておきます。ごちそうさまでした」
残りのポテチを先生に返し、わたしはその場を立ち去ります。
あまりにアレなローラさんに反発しつつ、わたしの中に罪の味が刻まれたのでした。
その罪深さのため、出前ニャンの方々にはポテチの件は伏せております。
また、彼女はわたしの武術師匠でもあります。
とある依頼で、ダンジョンへ探索しに行ったときのことでした。
わたしたちのパーティは、強いモンスターに囲まれてしまったのです。
当時のわたしは、まだしがないプリーストで、武術などロクに学んでいません。このままでは全滅を待つのみでした。
しかも、相手は自分をグレーターデーモンと名乗ったじゃありませんか。
「修道女か。これはいい。食ったらより強い力を得られるぜ」
魔物が、疲弊しているわたしたちを品定めします。
「みなさんは、逃げて。彼の狙いはわたしのようですので。あなたも、それでいいでしょ? 見逃しなさい!」
わたしが囮なっている間に、仲間に助けを呼んでもらう作戦を立てます。
しかし、仲間はわたしを見殺しにできないと反論してきました。
「ここで全滅しては、街が壊されます。わたしだって、ただでは死にません!」
「ギハハハァ! いい子だ、お嬢さん。お前さんの心意気に免じて、仲間は見逃してやろう」
「ありがたいですね。さあ、みなさん早く!」
後にわかったのですが、この魔族は仲間の増援さえ食い物にしようと考えていたらしいです。わたしをいたぶることもできて、わたしの仲間も殺害するつもりだったと。魔族らしい卑劣漢でした。
しかし、彼の作戦はもろくも崩れ去ります。シスター・ローラの手によって。
「どうしてここに? シスター・ローラ?」
「あなたが実績を積みたくて焦っているのが、わかったからさ。それに、あたしだって魔族はキライでね!」
ローラ先生は、魔族などモノともしませんでした。魔族の片腕片足を砕き、鼻っ柱をへし折ります。
心まで折れた魔族が泣いて詫びると、こう提案しました。
「じゃあ、この子の訓練相手になるんだね」
わたしを、ローラ先生は親指で指し示しました。
満身創痍の魔族をトレーナーとして、わたしを鍛えると言い出したのです。
「負けってのは、下手すると一生トラウマになる。それを払拭するには、慣れていき、乗り越えるしかないのさ。負けて負けて、それでも砂を噛んで立ち上がって、自分を負かした相手を超えていく。さあ、わかったらさっさとやりな!」
「はい! ホアチャ!」
ボロボロになりながら、わたしは魔族相手に戦います。ローラ先生の指導はハチャメチャでしたが、効率的で実践的でした。
相手も「手加減したら殺す」と言われ、必死です。
仲間が増援を呼んでかけつけてくれた頃には、わたしはそれなりに様になっていました。
シスター・ローラ先生の指導の元、わたしはメキメキと武術を習得していきます。
気がつけば、グレーターデーモンくらいならまったく恐れない肉体を、わたしは手に入れていました。
コーチ役だった、中級魔族の心を入れ替えてしまうほどに。
ですが、後にローラ先生がニセモノのシスターだと判明します。
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