神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
15 / 285
独り占めするスイカは、罪の味 ~カピバラと食べる、スイカ半玉独占~

半玉スイカは、罪の味

しおりを挟む
「きゃあ!」

 バルン! と、エマの北半球があらわになってしまいました。

 なんと業深エロい。

 これでは、飼育員さんも前かがみにならざるを得ません。手がふさがる形に。

「今、助けます。とう!」

 悪いカピバラさんを、エマから引き剥がします。

「園児の皆さん、シスター・エマの代わりに手を貸してください!」

 わたしは、園児たちに呼びかけました。

「さあさあ、カピバラさんを温泉まで誘導してくださいねー」

 よちよちと歩かせて、カピバラさんを温泉へ連れていきます。

 わたしの呼びかけに応じた園児たちも、カピバラさんのオシリを押して温泉へと向かいました。

「はい、ドボーン。よくできましたねー」

 パチパチと、わたしは園児に拍手を贈ります。

 こうして、どうにかカピバラさんパニックは収まりました。
 
 
 
「ひどい目に遭ったわ」


「すいません、ありがとうございました」

 進行役のお姉さんから、お礼を言われます。

「さすが武術家ですね。カピバラのツボを、あんな簡単に見つけ出すなんて」
「いえいえ。園児たちが無事で何よりです」

 おとなしい動物といえど、げっ歯類ですからね。 
 刃物を持った車両と同等と思っていていいでしょう。
 ケガなどになったら、二度とココに来られないかもしれません。




 プールから上がると、飼育員さんたちがスイカをくれました。こちらはちゃんとおいしいスイカだそうです。

「遊びに来てくださったお礼と、危ない目に遭わせちゃいましたことのお詫びです」

 切り分けられたスイカが、我々の前に置かれました。

「ありがとうございます。みなさん、いただきましょうか」
 みんなで神様に祈ります。
「いただきます」

 園児たちが、スイカをほおばりました。カピバラさんのようにケンカなんてしたりしません。仲良く分け合っています。
「カブトムシにあげるから皮をくれ」と、周りに頼んでいる男の子もいますね。

 わたしたちの分のスイカは、ありません……。

 当然です。園児たちを差し置いて、自分たちが食べるなどありえません。

「落ち込まなくても、先生方の分もありますよ。こちらへ」

 わたしとエマは、別席に呼ばれました。子どもたちには見えない席へ。

 何も知らない子どもたちは、キャッキャと種飛ばしで遊んでいます。

「余り物ですが、どうぞ召し上がってください」

 飼育員さんが用意したのは、丸いままのスイカでした。園児たちにあげた分より、やや小ぶりです。半分だけ割って、わたしとエマの前に置きました。

 ワオ、期せずして半玉スイカをゲットしてしまうとは! 小さいですが、女の子が食べるなら十分です。

「こんなにたくさん、いいんでしょうか?」

 本来なら、子どもたちのほうが喜びそうですが。

「糖度の低いスイカで、いうほど甘くないんですよ。それに子どもたちだと、こんなに食べられませんからね」
「我々からの、ささやかな気持ちでございます」

 ならば仕方ありません。

 お言葉に甘えて、スプーンを差し込みます。

「いただきます」

 シャクと、いい音が口の中で鳴り響きました。


 ああ、これは罪深うまい。

 たしかに甘みは薄いです。

 が、半玉を独り占めしているという独占欲を、これでもかと掻き立ててくれていますね。

 これだけでもぜいたくぜいたく。セレブ食いです、これは。

「うわあ、素敵」

 シスター・エマも、同じように罪を噛み締めています。セレブ食いを楽しんでいました。

「大きさも丁度いいわね」
「はい。これなら、全部食べれちゃいます」

 スプーンが止まりません。スイカの島を攻略し続けます。

 こんな大きなものが、シスター・エマにも詰まっているのでしょうか。

 だんだん、憎たらしくなってきました。ガンガン食べちゃいましょう。

「ごちそうさまでした」

 最高のぜいたくですね。

「まだまだ、これからですので。ご用意しますね」

 なにか、隠し玉があるようです。なんでしょう?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ・21時更新
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...