神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
7 / 285
チーズたっぷりグラタンは、罪の味 ~純喫茶のキノコグラタン~

ジョオウタケ

しおりを挟む
 探知魔法を頼りに、キノコボスを探しています。

 奥に、地底湖が見えてきました。あそこの向こうにはなにもないみたいですから、ゴールに着いちゃったみたいですね。

「ミュラーさん、こんなところにキノコが生えているのですか?」

 キノコと聞くと、森に生息しているイメージがありますが。

「ああ。【ジョオウタケ】といってな」

 長い年月をかけたキノコが死んだ魔物を取り込んで、モンスター化したそうです。
 たしかに、モンスターの死骸に白いキノコが取り憑いていました。

「気をつけろよ。強いモンスターらしいからな。ただ、でかいからすぐにわかる」
「あんな感じですか?」

 地底湖の中央に、やたら巨大な女性の影が。

「あれがジョオウタケだ!」

 ウワサをすれば、キノコ型の女性がいました。
 地底湖の上に空いた天井から、キノコの女王が月明かりを眺めています。
 大昔の魔法使いがかぶっていそうな三角帽子、白いワンピースと思っていたら、女の人の格好をしたキノコでした。

 本当に、意思がないのでしょうか。無害な女性型モンスターのようにも見えますが。
 しかし、そう思えたのは一瞬でした。

「ジャ!」

 ジョオウの口が避けて、キノコの胞子を撒き散らします。
 やはり、根っこはモンスターだったようですね。

「やべえぞ、あの胞子を吸ったら身体がしびれるぞ!」
「下がって! ホアタ!」

 ヌンチャクに防御魔法を施して、振り回しました。

 二人に胞子が飛ばないようにします。
 胞子を吸ったとしても、わたしは自力で解毒できますから問題ありません。

「ナイスだ嬢ちゃん! 行くぜ!」

 ミュラーさんが囮になって、ヘルトさんの魔法詠唱時間を稼ぎます。

 横薙ぎが、キノコジョオウの脇腹にヒットしました。

 しかし、敵の胴体は大木のように固く、傷口も再生してしまいます。

 ジョオウタケが戦法を変えてきました。胞子を周囲に吐き出します。
 さっきまで死体だった魔物が、ムクリと起き上がってくるではありませんか。

「キノコをアンテナ代わりにして、魔物を操作しているのね!」

 ヘルトさんが火炎弾を撃って、自分たちを取り囲もうとしているキノコゾンビをやっつけます。

「くそ、キリがねえ!」

 腕や脚を切っても、すぐに元通りになります。

 どうすれば。このままでは、ジリ貧です。

 わたしは、目をつむりました。戦闘をあきらめたわけではありません。

「あれだけ大きいのです。どこかに、魔力供給源があるはず」

 モンクのスキルである【心眼】で、気流の流れを見ます。

「見つけました。地底湖……違いますね!」

 地底湖に、何らかの魔力が降り注いでいます。どこから……ありました!

「ヘルトさん、天井の穴を塞いでください!」
「わかったわ!」

 土魔法で、ヘルトさんが天井の穴を閉じました。月が隠れます。

 相手も、胞子を飛ばそうとしました。しかし急に咳き込んで、息切れを起こします。

 どうやらジョオウは、炎魔法を警戒しているようでした。あるいは氷の魔法か。

 しかし、実際にヘルトさんが唱えたのは、キノコ属に有利になるはずの「土魔法」だったのです。

 キノコ女王が、段々と弱っていきました。魔力供給を断たれて、しぼんでいきます。

 そこへ、ミュラーさんが一撃をお見舞いします。

 ですが、また再生しようとしていました。

 キノコの頭部分に、わたしは接敵します。

「ブレイズフィストです!」

 ヘルトさんの炎魔法で拳を包み、わたしがとどめをさしました。

「やったな、嬢ちゃん!」
「ケガをしていますね。こちらへ」

 ミュラーさんの腕に付いた傷を、治癒魔法で癒やします。

「なんで、月がボスを強くしているってわかったの?」

 ヘルトさんも、毒性の胞子を吸っていたので治療します。

「あのキノコ型ボスは最初、わたしたちを無視して月をずっと眺めていました」

 おそらく、月の魔力を含んだこの地底湖から栄養を取り込んでいたのだろうと踏んだのです。

「だから、天井を塞いだのね。見事だわ」

 ジョオウタケ、討伐完了です! お疲れさまでした!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...