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チーズたっぷりグラタンは、罪の味 ~純喫茶のキノコグラタン~

今日はモンクなシスター・クリス

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 わたしは今、仲間と共に未踏破のダンジョンを攻略中です。
 
 冒険者の助っ人も、わたしの主な仕事です。
 大所帯の教会を支えるためには、シスター業だけをしているわけにはいきません。
 これも大切な資金源です。
 報酬のほとんどは、教会へ寄付していますが。

「せぃや!」

 前衛の「イグナーツ・ミュラー」さんが、豪快に大剣を奮ってコウモリを蹴散らします。

「ホワチャ! ホアァタ!」

 わたしも中衛にて、ヌンチャクを振り回しています。

 気絶したコウモリの集団が、ボトボトと地面に落ちてきました。

 仲間であるエルフさんが、クスクスと笑います。

「なんです、ヘルトさん?」
「その格好だと、いつものクリスと大違いね。アチョーなんて言ってるのを見たら、ホントにのほほんシスターなのか疑っちゃうわ」

 魔術師のエルフ「ヘルトルディス・コット」、通称ヘルトさんが笑いながら壁に手をつこうとします。

 たしかに今日の私は、いつものローブではありません。動きやすい革製胸当てと、ショートパンツ姿です。

「ヘルトさん、壁に」
「わかってます、って」

 壁から襲いかかろうとしたアメーバ状の物体を、ヘルトさんが手のひらに火炎を集結させて燃やします。

「依頼は、採取だったな。ヘルト、何かわかるか?」

 本日のメインミッションは「キノコ型ボスを討伐すること」です。
 そのキノコボスが洞窟内の生態系を荒らしているので、やっつけてくれとのこと。
 ついでにボスがドロップする素材も取ってきてと言われているそうです。

 キノコですか。食べられますかね? 食べられるものなら食べてみたいです。

「待ってて」

 ヘルトさんが、探知魔法を唱えました。
 松明だけが頼りだった洞窟内が、さらに明るくなります。

「ボスのフロアが近づいたら、キノコが生えているはずよ。それを辿っていきましょう。

 探知魔法のせいで、ヘルトさんのワガママボディがあらわになっていきました。ショートカットの天然パーマで、スリットの入ったローブを着ています。

 決して露出狂なわけではなく、普通の服では豊満な身体を隠せないのだとか。
 ただローブを着ているだけでは布地が引っかかってしまうので、胸や太ももにわざと切れ目を入れているそうです。

 うらやましいですね。こっちはオフショルダーの革製胸当ても落ちないというのに。

「どうしたの? わたしの身体になにかついてる?」
「いえ別に。キノコを探していただけですよー」

 思わず、ご立派な双丘に見とれていました。ないものねだりというやつですね。

 キノコを探さないと。

「クリスお嬢ちゃんには、お嬢ちゃんの魅力があるって」
「ミュラー、それセクハラ」
「えーっ!? 嫁や娘にも言われたことねえぞ!」
「奥さんもお嬢さんも、遠慮しているのよ! そういうところが、デリカシーないっての!」

 エッチな発言をするミュラーさんを、ヘルトさんがたしなめます。

 ミュラーさんは既婚者で、かかあ天下です。
 冒険に出る際も、お家の前で「お宝見つけてくるまで帰ってくるな」と、奥さんから言われていました。
 ご家族のお財布のヒモは堅く、教会並みだそうです。

 そんなことより、キノコです。

「クリス、最近はモンク職も、一部程度なら報酬の使用が許されるのよね?」
「はい。教会の規正が緩和されて」

 わたしたちのようなモンク職は、食事代程度なら自分で稼いでいいようになりました。

「だからといって、自由に食べ歩いていいわけではありませんけれど」
「大変ね」

 わたしが教会を抜けるときに鉢合わせた女性も、わたしと同じモンクです。冒険者の同行依頼があったから、外に出られたのでした。

 このダンジョンで手に入るお宝の売値も、わたしのお財布に入ります。ほんの少しだけですが。

「あ、キノコ発見です」

 白いキノコが、こんな洞窟の隅に群生していました。
 とにかく、今はキノコです。

 ああ、おいしそう。
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