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第九章 おひとりさまYouTuber ふたりきり

第62話 女の子らしい……キャンプギア

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 というわけで、オレたちは場所を移した。

「はい! で、今日はちゃんと目的があって外出している。女の子らしいものを買いに来たのだ」

「女の子らしいものといえば?」

 オレと夢希ムギにつづいて、モミジが発言をする。

「そう。女の子らしいものと言えばぁ……キャンプギアでしょーっ! いえーい!」

 三人で、乾いた拍手をした。

 そう。オレたちはキャンプ用品を買いに来たのだ。

 実は事前に、小春コハルさんから連絡があった。「シルバーウィークに天気がよかったら、キャンプをしないか」と。
 以前からキャンプがしたいとリモートでしゃべっていたのだが、連日の台風でタイミングを逃していた。
 子どもたちを外で遊ばせたいと、涼しくなったら行こうと話していたのだ。
 なにより癒乃ユノが、夢希に会いたがっている。

 紅葉シーズンには、まだ早い。が、オレたちには近々、学園祭や体育祭などのイベントが控えている。中間試験も近い。休めるときに、遊びたいのだ。

 車・食材・紙のコップや皿は、小春さんら森本モリモトさん一家が出してくれる。

 オレたちは、ギアだけ用意すればいい。

 ただ、コテージではなくガチのテント泊になるという。安全を考えるとコテージ一択だったが、子どもたちが「テント以外ありえん」と言い出したそうだ。

 てなわけで、オレたちはキャンプ用品店に足を運んだのである。

 ここでカメラを止めた。店内の撮影は、さすがに控える。許可をもらったところで、他のお客さんが映り込むためだ。モザイクをかければどうにかなるわけでもないし、ヘタなトラブルは避けたい。

「なんかー。関西でお笑い芸人さんがお買い物するだけの番組あるじゃん。あれすっごい憧れる」

「わかる。わたしも関西に遊びに行ってハマった。テレビのネット配信でも、そればっか見てる。爆買い感がすごい」

「そう。毎回同じの買ってんじゃん! 毎回、化粧品とレトルト買うの! 前に買ったじゃん!」

 夢希とモミジで、ゲラゲラ笑い合う。ツボに入って、笑いが止まらない。

「ちゃんと季節に合った寝袋を買うんだぞ」

「はーい」

 返事を聞きつつ、オレは女子勢を見守った。まあ、ムチャはしないだろう。

「で、女の子らしいものは見つかったか?」

「これかな?」

 夢希が指定したのは、寝袋である。ピンク色をして、ややぶ厚い。

「アタシは、これかなー」

 なんと、モミジが手にしたのは、着る寝袋である。いわゆる「きぐるみ」のような形だ。

「あと、買いたい物はあるか?」

「ある。飯ごう」

 夢希が手にしたのは、メスティンだ。

快斗カイトの分もあるよ」

「え、どうしてだ?」

 割り箸などは、小春さんが用意してくれると言っていたのに。

「中学の時の、林間学校のリベンジしよ」

「……おう!」


(第九章 完)
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