上 下
59 / 70
第九章 おひとりさまYouTuber ふたりきり

第59話 デートへたくそ克服動画

しおりを挟む
「よお、おひとりさまYouTuberのカイカイだ! 今日はムゥもやっと回復したということで、デートをしようと思う」

「よぉ、ムゥだ。わたしが休んでいる間、たくさんのねぎらいコメントありがとうな。今日はリクエストの多かった、デート動画で楽しんでくれよなっ」

 ようやく、二人揃っての動画撮影が再開できた。一応、夢希ムギは快方に向かっていたのだが、ムリをさせられないとなって自粛していたのである。

 知らず知らずのうちに、オレたちにはムダなストレスが溜まっていたらしい。それが、病気という形で出てしまったのでないかとのことだ。

 急なコラボ、案件など、いろいろあったからな。繋がりができた分、身体の方は悲鳴を上げていたのだろう。気をつけているつもりだったんだけどな。

「それで今回は、デートへたくそすぎる自分たちを、なんとかしようと考えた。アドバイザーはこの人。ジャン! マルチチューバーのモミジだ!」

「生のモミジだよー。やっほー」

 オレたちのスマホに向かって、モミジが手を振る。

「デートなのにアタシがいて、平気なん?」

「二人だけだと、ネタに行き詰まるようになってな」

 実を言うと、最近は二人だけになることをお互い避けている。二人きりだと、どうも気まずくなる時間が増えた。

「自分のやりたいことしか、しなくなるんだよ」

「それでよくね?」

「最初はよかったんだが、画面の向こうにいる人も楽しんでもらおうと思うとな」

「でも、アタシはあんたらのイチャイチャを、マジマジと見せつけられるわけだが」

「うわっ、そこまで考えてなかった」

「あははー。でもいいじゃん。アタシもマンガの参考になるから」

 この動画は、モミジにとっても取材なのだという。恋人づくりの参考にしない辺り、いかにも夢を追うモミジらしい動機だ。

「ほんじゃまー、今日は女の子が好きそうなお店とか行くから」

「今日はご指導、よろしくおねがいします」

 オレに続いて、夢希も挨拶をした。

 さっそく、昼飯に向かう。

「アタシに任せてよね」と腕を振って歩くモミジの姿は、実に頼もしい。

 しかしモミジは、こちらの予想を華麗に裏切る。よりにもよって、いきなり向かったのはラーメン屋だった。しかもガッツリ系である。席も、カウンターしかない。

 何を考えているのか、モミジが店主と交渉を始めた。

「撮影OKだって」

 モミジが、指で輪っかを作る。

「飛び込みなのに!?」

「むしろどんと来いやって」

 たしかに、店の名前も「どんとこい」だもんな。

「店主がね、『なんなら生配信もしてみる?』だって」

 さすがにそれは、遠慮する。

 食券を買おうとしたら、すでにモミジが購入していた。

 現れたのは、どでかいラーメンである。


 ここは、デカ盛りの店なのだ。


「これ一杯で、四人前だって」

 このラーメンを、三人で食べようとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

私の話を聞いて頂けませんか?

鈴音いりす
青春
 風見優也は、小学校卒業と同時に誰にも言わずに美風町を去った。それから何の連絡もせずに過ごしてきた俺だけど、美風町に戻ることになった。  幼馴染や姉は俺のことを覚えてくれているのか、嫌われていないか……不安なことを考えればキリがないけれど、もう引き返すことは出来ない。  そんなことを思いながら、美風町へ行くバスに乗り込んだ。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

PictureScroll 昼下がりのガンマン

薔薇美
青春
舞台は日本の温泉地にある西部開拓時代を模したテーマパーク『ウェスタン・タウン』。そこで催されるウェスタン・ショウのパフォーマーとタウンのキャストの群像劇。※人物紹介は飛ばして本編からでも大丈夫です。

これからの僕の非日常な生活

喜望の岬
青春
何の変哲もない高校2年生、佐野佑(たすく)。 そんな彼の平凡な生活に終止符を打つかのような出来事が起きる……!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...