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第九章 おひとりさまYouTuber ふたりきり
第59話 デートへたくそ克服動画
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「よお、おひとりさまYouTuberのカイカイだ! 今日はムゥもやっと回復したということで、デートをしようと思う」
「よぉ、ムゥだ。わたしが休んでいる間、たくさんのねぎらいコメントありがとうな。今日はリクエストの多かった、デート動画で楽しんでくれよなっ」
ようやく、二人揃っての動画撮影が再開できた。一応、夢希は快方に向かっていたのだが、ムリをさせられないとなって自粛していたのである。
知らず知らずのうちに、オレたちにはムダなストレスが溜まっていたらしい。それが、病気という形で出てしまったのでないかとのことだ。
急なコラボ、案件など、いろいろあったからな。繋がりができた分、身体の方は悲鳴を上げていたのだろう。気をつけているつもりだったんだけどな。
「それで今回は、デートへたくそすぎる自分たちを、なんとかしようと考えた。アドバイザーはこの人。ジャン! マルチチューバーのモミジだ!」
「生のモミジだよー。やっほー」
オレたちのスマホに向かって、モミジが手を振る。
「デートなのにアタシがいて、平気なん?」
「二人だけだと、ネタに行き詰まるようになってな」
実を言うと、最近は二人だけになることをお互い避けている。二人きりだと、どうも気まずくなる時間が増えた。
「自分のやりたいことしか、しなくなるんだよ」
「それでよくね?」
「最初はよかったんだが、画面の向こうにいる人も楽しんでもらおうと思うとな」
「でも、アタシはあんたらのイチャイチャを、マジマジと見せつけられるわけだが」
「うわっ、そこまで考えてなかった」
「あははー。でもいいじゃん。アタシもマンガの参考になるから」
この動画は、モミジにとっても取材なのだという。恋人づくりの参考にしない辺り、いかにも夢を追うモミジらしい動機だ。
「ほんじゃまー、今日は女の子が好きそうなお店とか行くから」
「今日はご指導、よろしくおねがいします」
オレに続いて、夢希も挨拶をした。
さっそく、昼飯に向かう。
「アタシに任せてよね」と腕を振って歩くモミジの姿は、実に頼もしい。
しかしモミジは、こちらの予想を華麗に裏切る。よりにもよって、いきなり向かったのはラーメン屋だった。しかもガッツリ系である。席も、カウンターしかない。
何を考えているのか、モミジが店主と交渉を始めた。
「撮影OKだって」
モミジが、指で輪っかを作る。
「飛び込みなのに!?」
「むしろどんと来いやって」
たしかに、店の名前も「どんとこい」だもんな。
「店主がね、『なんなら生配信もしてみる?』だって」
さすがにそれは、遠慮する。
食券を買おうとしたら、すでにモミジが購入していた。
現れたのは、どでかいラーメンである。
ここは、デカ盛りの店なのだ。
「これ一杯で、四人前だって」
このラーメンを、三人で食べようとなった。
「よぉ、ムゥだ。わたしが休んでいる間、たくさんのねぎらいコメントありがとうな。今日はリクエストの多かった、デート動画で楽しんでくれよなっ」
ようやく、二人揃っての動画撮影が再開できた。一応、夢希は快方に向かっていたのだが、ムリをさせられないとなって自粛していたのである。
知らず知らずのうちに、オレたちにはムダなストレスが溜まっていたらしい。それが、病気という形で出てしまったのでないかとのことだ。
急なコラボ、案件など、いろいろあったからな。繋がりができた分、身体の方は悲鳴を上げていたのだろう。気をつけているつもりだったんだけどな。
「それで今回は、デートへたくそすぎる自分たちを、なんとかしようと考えた。アドバイザーはこの人。ジャン! マルチチューバーのモミジだ!」
「生のモミジだよー。やっほー」
オレたちのスマホに向かって、モミジが手を振る。
「デートなのにアタシがいて、平気なん?」
「二人だけだと、ネタに行き詰まるようになってな」
実を言うと、最近は二人だけになることをお互い避けている。二人きりだと、どうも気まずくなる時間が増えた。
「自分のやりたいことしか、しなくなるんだよ」
「それでよくね?」
「最初はよかったんだが、画面の向こうにいる人も楽しんでもらおうと思うとな」
「でも、アタシはあんたらのイチャイチャを、マジマジと見せつけられるわけだが」
「うわっ、そこまで考えてなかった」
「あははー。でもいいじゃん。アタシもマンガの参考になるから」
この動画は、モミジにとっても取材なのだという。恋人づくりの参考にしない辺り、いかにも夢を追うモミジらしい動機だ。
「ほんじゃまー、今日は女の子が好きそうなお店とか行くから」
「今日はご指導、よろしくおねがいします」
オレに続いて、夢希も挨拶をした。
さっそく、昼飯に向かう。
「アタシに任せてよね」と腕を振って歩くモミジの姿は、実に頼もしい。
しかしモミジは、こちらの予想を華麗に裏切る。よりにもよって、いきなり向かったのはラーメン屋だった。しかもガッツリ系である。席も、カウンターしかない。
何を考えているのか、モミジが店主と交渉を始めた。
「撮影OKだって」
モミジが、指で輪っかを作る。
「飛び込みなのに!?」
「むしろどんと来いやって」
たしかに、店の名前も「どんとこい」だもんな。
「店主がね、『なんなら生配信もしてみる?』だって」
さすがにそれは、遠慮する。
食券を買おうとしたら、すでにモミジが購入していた。
現れたのは、どでかいラーメンである。
ここは、デカ盛りの店なのだ。
「これ一杯で、四人前だって」
このラーメンを、三人で食べようとなった。
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