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第六章 コラボ相手は関西人

第36話 「これから」のオレたち

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 新幹線の駅まで向かうだけなのだが、星梨セイナおばさんがレンタカーを借りていた。大阪支部での会議が終わってから、ずっと大阪じゅうをドライブしていたらしい。

「どうだった?」

「失敗したー」

 ぶっちゃけ、大阪は歩き回ったほうがマシだったそうだ。

「せやろー? 市内はなぁ。交通量とかルールとか思うたら、大阪市内でドライブはちょーっとオススメせんわ」

 逆に大阪市以外だと、車がないと不便らしい。

「今日は、ありがとうございました」

「ごちそうさまでした」

 オレと夢希ムギは、タコ足配線の二人にお礼を言う。

「こちらこそ、おおきに。これ、星梨さんにおみやげ」

 小春コハルさんが、星梨おばさんにタコ焼きを差し出す。

「晩酌用に、濃いめに作ってありますさかい」

「ありがとうございます。コラボの件も」

「いえいえ。わざわざ出向いてもろて。今度はうちらがくるさかい」

「お待ちしております」

「ウソちゃうで。『行けたら行きます』とか、ちゃうからね」

「あはは。ではありがとうございました!」

 大人組があいさつを終えて、帰ることになった。

 レンタカーを返し、新幹線に乗る。

「いい人たちだったなあ」

「明るいけど、大変な過去を背負っているからかも」

「旧友にも会えて、よかったじゃないか」

癒乃ユノちゃんと再会したのは、予想外だった。まだ恥ずかしい」

 赤面する夢希を見ながら、オレは考える。

 オレは、人に見せても大丈夫な恋人だろうか?

 あの夫婦YouTuberみたいに、苦難を乗り越えられるカップルになれるのか、オレは?

 支えていけるのか?

 配信のときは、プレッシャーなんて感じたことはなかった。

 でも、今はなにをやっても空回りになりそうな気がする。

 あの二人は、完璧さを重視するタイプの配信者じゃない。日々を淡々と公開しているだけで、そこに戦略もノウハウもなかった。だからこそ、あそこまで続けられている。継続こそが、最大の武器だと知っているから。気がつけばそこそこの大手になっていた、というタイプである。

 それでも、根気が必要だ。

 オレにそんな、度胸があるだろうか?


「どうしたの、快斗カイト?」

「なんでもない」

「思い詰めたような顔になってた」

「違う違う。別にそんな」

 夢希が、オレの手の甲に自分の手を添えた。

「快斗は、そのままでいい。ムリして、大人になろうなんて思わなくていいから」

 オレの考えを見透かしたかのように、夢希がオレに告げる。

「You Tubeの歴史に押しつぶされたら、ダメなんだって。もっと大事なのは、自分たちで積み上げていくことでしょ?」

「そうだよな。オレたちは、これからなんだ」

 うん。これからだよな。オレたちは。

 で、タコ足配線の夫婦は本当にこっちに来た。

(第六章 完)
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