上 下
18 / 70
第三章 デート? 違う! 遠出だっ!

第18話 本格的デート配信

しおりを挟む
 日曜日、オレたちは家の中で撮影をしている。

「よ、よお、カイカイだ」

「ムム、ムゥだ……」

「えーっと今日は、今日はな、ちゃんとしたデート動画を撮ることになった」

 土曜日は、買い物がメインだった。事務用品なら、星梨せいなおばさんの会社で余った物を用意してくれるという。「アウトレットで揃えるくらいなら引き取ってくれ」と、会社から言われたらしい。

 なので、お金が余ってしまった。

 そこで急遽、「まともなデートをしてきなさい」と指令が下ったのである。

快斗カイト、ちゃんとしたーデートって何?」

 夢希ムギから、もっともな質問が飛んできた。

「そんなこと、デートダメ勢なオレに聞かれてもわかんねえよ」

 外に出て何をするか、アイデアが浮かばない。

「もうすぐ期末だから図書館で勉強、というわけにもいかんよな?」

「それはデートとは言わないって、言われそう」

 だよな。第一、図書館で撮影とかもムリだしな。

 かといって繁華街なんかで動画を撮ろうものなら、トラブル待ったなしだ。誰の許可取っとんねんなんて因縁をつけられたら、逃げるしかない。炎上案件になる。

「撮れるところとしたら、公園くらいか」

「じゃあ、ピクニックしよ」

「いいな! 今日はちょっと涼しいから、外で弁当を広げるのもいいかもな」

「では、お弁当作ろ」

「おう、一緒に料理をするぞ」

 ようやく、動画映えしそうなネタができあがったぞ。

「サンドイッチタイプとオニギリタイプがあるけど?」

「夢希はどっちがスキなんだ?」

「どっちも独特の味わいがあって、好きだよ」

 ならば、オレが選択したほうがよさそうだ。

「オニギリだな」

「じゃ、和食メインで。まずは、唐揚げを作るぞー」

 冷蔵庫の余り物から、夢希は鶏モモを出して切っていく。

 その間に、オレは米を炊く。洗い物が出たら、せっせと洗った。

「ミートボールは、レトルトを使うね。あとはなにが欲しい?」

「卵焼きがいいな」

「甘いやつ? しょっぱいの? ウチはしょっぱいんだけど」

「しょっぱいのだな。ウチと同じだ」

「OK~」

 塩気のある卵焼きを、夢希はネギと一緒に巻く。

 オレは洗い物をしつつ、フルーツの盛り合わせを作った。リンゴをウサギ型にカットして、パイナップルと巨峰を敷き詰めた容器に収める。

「最後は、オニギリを作るぞ」

「たわらと三角、どっちがいい?」

「三角だ。オレはそれしか握れない」

「わかった。一緒にやろう」

 夢希と二人で、オニギリを作った。かつお節を混ぜたもの。ツナマヨ、梅干し、昆布と。

「チャーハンとか肉巻きおにぎりとかあるけど」

「悩ましいな。チャーハンは夕飯にしよう! オレが作るぞ」

「ありがとう。じゃあお願いするね」

「任された。よし、完成だ」

 余りは星梨おばさんの分にして、別の皿に盛り付けておく。

「これで、お金をつかわなくてよくなったな」

「材料費だけもらえたらいいね」

 オレはバスケットに保冷剤を詰めて、容器を詰め込む。上にタオルで巻いた保冷剤を乗せて準備完了だ。

 今日の夢希は、白いTシャツにデニムのショートパンツである。動きやすいように、スニーカーにしていた。ダメージジーンズとか、オレを殺す気か?

 オレはTシャツの色は夢希と同じだが、黒のデニムにしている。

「じゃあ、出かけるか」

「待って。夕方から雨が降るって書いてる」

 スマホで、夢希が天気予報をチェックする。

「そのへんの公園で食うだけだから、特に問題ないだろう」

「だといいけど」

「じゃあ、ピクニックに行くぞ」

 念のため、傘も用意しておいた。これで、平気だろう。

 そのへんを歩くだけなのに、結構な汗が出てきた。

「持とうか?」

 パラソルを持った夢希が、手を差し伸べる。オレは夢希に、水筒しか持たせていない。

「いやいや。荷物が重いからじゃないんだ。暑いな」

「じゃあ、こうしよう」

 夢希が、オレに近づいてきた。日傘に入れてくれる。

「これいいでしょ? 日傘にもなる、雨傘なんだよ」

 動画で紹介しようとして買った、便利グッズらしい。しかし、夢希のグッズ紹介系は、あまり再生数が伸びていなかった。プレゼン上手な配信者には、負けてしまうようである。

「ああ、ありがてえ」

「近いっていっても割と距離あるからさ、コンビニ行こうよ」

「だな。アイスでも食うか」

 コンビニで、棒アイスを買ってもらった。

「はい、快斗、あーん」

 バリバリ食べるチョコ棒アイスを、夢希に差し出される。

「あーん」

 大きく口を開けて、オレはアイスにかじりついた。

「うまい。でも、開けただけでもう溶けちゃってるな」

「あはは。うける」

「なにが」

「口の周り、チョコだらけなんだけど」

 バッグからハンカチを出して、夢希がオレの口を拭く。

 なんか、すっごいデートって気分だ。


 しかし、オレのホホに不穏な水滴が。


「雨だ!」

 公園にたどり着いた途端、ザーッとひどいゲリラ豪雨が降り注ぐ。

「ぎゃー!」

「快斗、あっちに屋根がある!」

 屋根のあるスペースまで、避難した。

「すごかったね」

「ああ、すごふ!?」

 夢希のTシャツさまが、透けていらっしゃる!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三日かけて作成した美少女キャラで遊ぼうとしたら、「ネカマは死ね」とゲームから追放されました。現実で世話します。

椎名 富比路
青春
 三日かけて、ボクはアバターとなるキャラを作成した。  遊ぼうとしたら、いきなりナンパされてしまう。 「男だ」と話したら、「ネカマは重罪死ね!」と吐き捨てられる。    その後、いわれのない罪でボクはアカウント停止を食らってしまう。  渾身の出来の美少女キャラとして活躍するはずだったのに!    しかも、ゲームキャラが現実世界に飛び出してきた!  ボクの部屋に現れたのは、性癖バリバリドンピシャの美少女。  なんたって、自分で作ったんだから。  いくところのないヒロインを、現実世界でかくまうことにした。  ちなみに、通報者は別の女子キャラをナンパして地雷ネカマに当たって爆死。  ゲームは過疎った。 「あなたを嫌う人たちはゲームからいなくなりました。快適になったゲーム世界に戻ってきませんか?」  そう伝えてきた運営に、ボクたちは告げる。 「もう遅い」

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

私の話を聞いて頂けませんか?

鈴音いりす
青春
 風見優也は、小学校卒業と同時に誰にも言わずに美風町を去った。それから何の連絡もせずに過ごしてきた俺だけど、美風町に戻ることになった。  幼馴染や姉は俺のことを覚えてくれているのか、嫌われていないか……不安なことを考えればキリがないけれど、もう引き返すことは出来ない。  そんなことを思いながら、美風町へ行くバスに乗り込んだ。

山の上高校御馬鹿部

原口源太郎
青春
山の上にぽつんとたたずむ田舎の高校。しかしそこは熱い、熱すぎる生徒たちがいた。

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...