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第三章 デート? 違う! 遠出だっ!

第16話 水着選び

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 水着売り場に到着する。

 どうしよう。注射を打つよりドキドキするぜ。

 夢希ムギは、平然と際どい水着をチョイスする。女子と一緒に水着選びなんて、男子にとっていかにヤバいイベントかも知らずに。

快斗カイト、選び終わった」

「う、うむ」

「三着買ったから、その中から選んで」

「わかった」

「じゃあ、更衣室に入るね」

「おう」

 機械的にしか、返答ができない。

 衣擦れの音が、聞こえてくる。

 いつもなら、隣の部屋で着替えられても何も感じない。壁やドアでしっかりと、音が遮られているからだ。

 それに同居しているにもかかわらず、これまでラッキースケベ的な展開なんて起こりえなかった。着替え中に、ばったり出くわすこともない。オレが風呂場に突撃されたのは、先日の動画に上がった。だがオレの方は、夢希の入浴中にうっかり突撃することなどない。

 オレと夢希は、配信以外ほとんど行動パターンが違う。夢希のほうが合わせてくれているのではないかと思うほど、大きい事故は起きていない。こちらのパターンが読めているのでは、とさえ感じた。

 しかし、今は違う。神経レベルでビリビリと、夢希を意識せざるを得なかった。

「おわった」

「ひゃい!」

 変な声で振り返ると、花がらビキニ姿の夢希が姿を現す。

「んぐ」

 ヒモ! ローライズ! あら~っ! 

 全体的に際どいが、布面積は広い。パレオ付きなので、多少の露出も押さえられる。

 うなずきながら、サムズアップを繰り返す。

「じゃ、次」

 オレのリアクションがお気に召さなかったのか、夢希はすぐにカーテンを閉めた。再び、衣擦れの音が。

「できた」

 続いて夢希は、際どい黒ビキニで登場した。ブラジリアンビキニ、というタイプらしい。

「アンダーがVの字になってるのが、特徴ね」

 ヘソの下をツンツンと指差し、強調してくる。胸の辺りも、かなり面積が小さい。
 めちゃくちゃうれしいが、若干攻め過ぎのような……。

「わかった。OKだ」

「じゃあ、次ね」

 夢希がまた、サッとカーテンを閉めた。

「これで最後」

 ラストに夢希は、王道の白ビキニで現れた。

「おおおおお」

 布面積もヒモの太さも、さっきの花柄ビキニの方が際どい。しかし、なぜか今の方がかわいさもセクシーさも増している。花柄だと、いやらしさが弱まってしまうからだろうか。

 白い生地に、夢希のバストがすっかり収まっているのが、最高にいい。よく胸がはみ出ている極小ビキニのイラストなどがあるが、オレにしてみればあれは邪道だと思う。バストを支えている感じがしないのだ。

 オレは華やかさやエロチックさより、こういった清潔感のあるエロスのほうが好きなのかも。

「これだね」

 夢希は即決し、服に着替えた。水着とは別に、ヘソの上で縛って着るタイプのブラウスと、デニムのホットパンツをカゴに入れる。

「快斗の分は?」

「オレはもう決めた」

 グレーの単色でアロハ柄の短パンと、同色のラッシュガードだ。オレは露出しないから、これでいいだろう。

 オレと一緒に、会計へと進む。

「よくそんな格好を、三連続も続けられるな? 照れとかなかったのか?」

「他人に対しては、全然」

 人の視線は、夢希の目には入らないらしい。

「でも、快斗がなにを好きか、視線でわかった。それが恥ずい」

 なにもかも、全部バレていたのか。目は口ほどに物を言うのは、本当らしいな。

「もっと布面積が小さくて、局部しか隠せてない水着もあったよ」

「そうなんだよな」

「でも、全然そっちに目線が行ってなかったもん」

 やっぱりだ。夢希には、すべてお見通しだった。

「とりあえずわかったのは、快斗はグラビアアイドルがするみたいな水着より、女の子が普段使うような水着のほうが好みなんだなって」

 おっしゃるとおりでございます。

「一応、他の水着も買ったので、ファションショー動画は撮るね」

「肌色が濃すぎると、動画サイトから待ったがかからないか?」

「そのためのパレオだったりするので」

 なるほど。
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