はぐれ液体金属スライムが、美少女冒険者たちから必死で逃げる

椎名 富比路

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液体金属 対 ポンコツ女勇者

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「絶対オレは、経験値になんかならねえからな!」

 森の中で、オレは冒険者に追われている。

「まてー」

 オレを追うのは、ミニスカ女勇者だ。ビキニアーマーをまとい、豪華な装飾の大剣を振り回している。胸に収まっている二体のスライムは、今にも貧弱なアーマーからこぼれ落ちそうだ。

「あいたー」

 こけた。まだ駆け出しの勇者だからか、オレに追いつくことすら一苦労である。

 オレを倒して、経験値をモリモリゲットしたいのだろう。

 しかし、オレに遭遇するのは少々早すぎたようだ。
 勇者特有の幸運か、勇者必須の不遇体質か。

「えーい」

 女勇者が、スキルを発動した。剣から、雷の魔法がほとばしる。

「サンダー・ぶつ切り!」

 雷の刃が、オレに命中した。

 しかし、オレの身体には傷一つつかない。

 さすが賢者の石ことミスリルでできた身体だ。なんともないぜ。

「えーっ。金属質だから、電気は通すと思ったのにぃ」

 魔力切れのためか、勇者がへたり込む。

「やられてたまるかっての」

 勇者を置いて、オレは逃げ出す。

 オレたちは、液体金属スライム族と呼ばれていた。冒険者にとって「経験値狩り」の対象となっている。

 賢者の石を作ろうとした錬金術師が、ミスリル銀の粉末をスライムに混ぜてたら完成したらしい。それが、オレたちの先祖だ。おおかた、話せる石でも作ろうと思ったのだろう。メタリックシルバーに輝くオレたちは、強固な身体を手に入れた。逃げ足の速さが備わったのは、レア金属を採用したことによる自己防衛機能からだろう。うかつに採集されないためだ。

 スライムという特殊性のためか、俺たち特殊なスライム族を倒したら大量の経験値が得られる。

 まったく。オレらを作った錬金術師を恨むぜ。

 オレたちは群れで活動している。だがオレの仲間たちは、みんな冒険者たちの養分になった。群れでもオレだけが生き残っている。

 長い逃亡生活の果に、オレは誰よりも素早い肉体を手に入れた。冒険者に召喚されたドラゴンに焼き殺されそうになって、身体はドロドロになっちまったが。

 絶対に、冒険者共の養分になんてならねえからな。死んでいった仲間のために。

 それはそれとして、女勇者のセンシティブさはいい。何も知らないおぼこい田舎娘に、露出度の高い服を着せて重い武器を持たせていた。これは王族か、教会のいいつけだろう。勇者じゃなかったら、身体中を撫で回したいくらいだ。負けてヘトヘトになった女冒険者をヌメヌメ撫で回すのが、旅で得たオレの日課になっている。

 けどアイツ、金属製スライムに関して、誰からも教えてもらっていないのか。オレたちが電気どころか、魔法すら通さない。もう常識だ。

 勇者ってのは、敵の基礎すら指導を受けないほどに孤独なのか? 仲間もいないようだし。

 服も露出度が高いだけで、防御力はたいしたことない。「これは伝説のビキニアーマーじゃ!」とか言われて、二束三文の装備を付けさせられたのだろう。かわいそうに。アイツは魔王様を倒すまで、ずっとあんな格好をさせられるに違いない。

 一応、オレたちは勇者を仕留めたら「半殺しで連れてこい」って言われている。嫁にするからと。防衛策を講じられ、勇者たち冒険者は、戦闘不能になると教会へ強制送還されてしまう。

 もしくはアイツ、始めから魔王様の嫁として捧げられているとか? 勇者システムって、ていのいいイケニエシステムとかいうんじゃねえだろうな?

「ひえー」

 腰が抜けた勇者に、グリズリーが迫る。縄張りに入っちまったのか。

「まだ動けねえのかよ!」

 見たところ、勇者はガチで燃料切れのようだ。

 こんなんじゃ、魔王様に辿り着く前に野良の魔物に殺されてしまう。

「ああもうバカが。そいつはオレサマの獲物だ!」

 オレは姿を見せて、女勇者の太ももにベチャッと降り立つ。

「あ、またはぐれミスリルスライム!」

 見つかった。まあいい。お楽しみの前に、楽しませてもらう。

「あれへえ。だめえ……」

 内ももを撫でると、女勇者は艶っぽい声を上げる。太ももから腰まで移動すると、勇者が足を広げた。

「こ、こんなことしてる場合じゃないのに」

 バカが。なにを勘違いしてやがるのか。たしかにオレは、勇者を気持ちよくさせてはいる。が、理由は別にあった。

「あっ。足が治ってる」

 そうだ。オレは単に、女勇者の両足に薬草を塗りこんだけ。これで動けるようになったはずだ。とっとと逃げやがれ。

「スライムちゃん下がってて! わたしがオトリになるから逃げて!」

 あろうことか。女勇者は剣を構えた。オレを守ろうなんてしてやがる!

 アホめ。オレとオマエのレベル差がどんだけあるってんだ? よわっちいくせに!

 クマも興奮してやがる。勇者の放つオーラを、クマのメスと勘違いしてやがるのか。

 仕方ねえ。やってやらあ!

 魔王様からは、「勇者を生娘のまま連れてこい」って言われているんだ。クマのヨメになんて、させてたまるかよ!

「ホンモノの雷ってものを見せてやるぜ! 稲妻落とし!」

 体内を駆け巡るミスリルの粒子に摩擦を起こし、オレは雷の魔法を放った。

 脳天に雷を受けて、グリズリーは絶命する。ドン、と仰向けに倒れ込んだ。

 あとは、肉にするなり素材にしてくれればいい。

「なんだろう。助けてくれたのかな? そうだ。お礼しなきゃ」

 さすがに勝手がわかっているのか、勇者はクマの解体をはじめた。肉と売却用素材に切り分ける。

 森から脱出させるために、街まで誘導するか。

 こんな鬱蒼とした森の中で、野良モンスターに死なれたらかなわない。魔王様になんといえばいいか。

 ン? なんだこいつっ! クマの爪をよこしてきやがった!
 そんなの食わねえよ! 人間で言うところのセミの死骸に等しいんだよ!

 んだよ、助けてやったのにその仕打ちは!

「まってー。これ、鉄分含んでるからダメージが回復するよー」

 何も知らない女勇者は、なにか言いながらオレを追いかけ回す。
 両手いっぱいにクマの爪を持ちながら。

 ええい、待つかよ! 

 オレは絶対、お前の養分になんかならねえんだからな!
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