上 下
96 / 114
最終章 Au fil du temps.Courir à travers le ciel.Pour cette star.(時を超えろ、空を

王の帰還

しおりを挟む
「かたじけない、アン殿」
「ありがとうございます」

 二名の取り巻きは、アンに詫びてモリエールの側に着地する。
 一人は腕や足に切り傷を負い、もう一人はハンマーで内臓をやられていた。

「ちょ、ちょっと、大丈夫なの二人とも?」
 モリエールが、二人に回復魔法をかける。

「天下の冒険者ギルドも、大した腕がないな」
 メリュジーヌが、二人の勇者をあざ笑った。

 二人の敵討ちと、アンは立ち上がる。
 だが、すぐによろめいてしまった。

「連戦なんて無茶です、で……アン殿!」
 一瞬、メルツィはアンを「殿下」と呼ぼうとしたらしい。

「でも、今戦えるのは私だけよ!」

 冒険者ギルド最強の二人さえ退けるほど、メリュジーヌは強かった。アン自らが出るしか。

 そのとき、数発の砲撃音が鳴り響いた。

 砲撃を浴びて、モンスターが消滅していく。

「うてうてーっ! パリをいじめるやつらをやっつけろーっ!」

 この少年声は……ルイ一二世!

 国王が、戦争から帰ってきたのだ。

「邪魔が入ったか!」
 メリュジーヌはパリに背を向ける。

「待ちなさい!」

「今日は挨拶代わりだ。手負いの貴様を殺しても、意味がないからな!」

 振り向きながら、メリュジーヌは背中にドラゴンの羽根を伸ばす。

「いずれフランスに、本格的な攻撃を仕掛ける! それまで待っているがいい!」

 またしても高笑いしながら、メリュジーヌはパリの空に消えていった。

 モンスターも、ウソのように逃げていく。

 パリは、国王の攻撃によって守られたのだ。

 アンは脱力し、倒れそうになる。

「お気を確かに」
 メルツィが、アンを後ろから抱き留めた。


 自分一人の力では、フランスを守れなかっただろう。
 その事実は、アンに重くのし掛かった。

「そうだわ、クロードを!」
 我に返ったアンは、レオの屋敷に向かうべく立ち上がる。

 だが、屋敷は火に包まれていた。


「いやあ、クロードォ!」
 自分を省みず、アンは火の中に飛び込もうとする。

「なりません殿下っ!」


「でも、クロードが、みんなが! ああああああああああっ!」
 火の粉を顔に浴びることすら構わず、アンはその場で泣き崩れた。
 また自分は、子を失うのか。自分は誰も守れないのか、と。


「あのー、姐さん」
 ジャネットが、いつものニヤけ顔をアンに近づけてくる。

「なによ、ほっといてよジャネット!」
 アンはジャネットを突き飛ばそうとした。

「言いづらいんスけど、全員無事ッスよ」
「ウソでしょ? だって炎が!」

「ホラ後ろ」
 ジャネットが、アンを振り向かせる。

 そこには、セーヌ川が流れていた。

 一隻の屋形船が、アンの眼前に止まっている。

 あれはイコの店だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ
ファンタジー
 地球では無い、何処か不思議な世界。  そこには、『ゴミスキル』とけなされる、役に立たないスキルが幾つかありました。  主人公は、一人暮らしの少女マロン。  彼女は、不味くてどうしょうもない『ゴミスキルの実』の美味しい食べ方に気付きます。  以来、巷の人々が見向きもしない『ゴミスキルの実』を食べ続けると…。  何の役にも立たないと思われていた『ゴミスキル』がなんと。  唯我独尊の妖精アルト、日本からの残念な転移者タロウに振り回されつつ。  マイペース少女マロンの冒険が始まります。  はて、さて、どうなる事やらww  毎日、20時30分に投稿する予定ですが。  最初の導入部は、1日2回、12時10分に追加で1話投稿します。

今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

俣彦
ファンタジー
栃木県宇都宮市にある旧家に眠る「門外不出」の巻物。 その冒頭に認められた文言。それは…… 「私は家康を尾張に売ってはいない。」 この巻物を手に取った少年に問い掛けて来たのは 500年前にのちの徳川家康を織田家に売り払った張本人。 戸田康光その人であった。 本編は第10話。 1546年 「今橋城明け渡し要求」 の場面から始まります。

聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。 ――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる 『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。 俺と俺の暮らすこの国の未来には、 惨めな破滅が待ち構えているだろう。 これは、そんな運命を変えるために、 足掻き続ける俺たちの物語。

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦 *主人公視点完結致しました。 *他者視点準備中です。 *思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。 *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

第二艦隊転進ス       進路目標ハ未来

みにみ
歴史・時代
太平洋戦争末期 世界最大の46㎝という巨砲を 搭載する戦艦  大和を旗艦とする大日本帝国海軍第二艦隊 戦艦、榛名、伊勢、日向 空母天城、葛城、重巡利根、青葉、軽巡矢矧 駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、響は 日向灘沖を航行していた そこで米潜水艦の魚雷攻撃を受け 大和や葛城が被雷 伊藤長官はGFに無断で 作戦の中止を命令し、反転佐世保へと向かう 途中、米軍の新型兵器らしき爆弾を葛城が被弾したりなどもするが 無事に佐世保に到着 しかし、そこにあったのは……… ぜひ、伊藤長官率いる第一遊撃艦隊の進む道をご覧ください ところどころ戦術おかしいと思いますがご勘弁 どうか感想ください…心が折れそう どんな感想でも114514!!! 批判でも結構だぜ!見られてるって確信できるだけで モチベーション上がるから! 自作品 ソラノカケラ⦅Shattered Skies⦆と同じ世界線です

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

処理中です...