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第三章 Est-ce que votre jeunesse brille?(君の青春は輝いているか)

アンの親衛隊

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 自宅の書斎にまで連れてこられるまでの間、オルガに詳しく話を聞く。

「親衛隊?」
 オルガからの提案を、アンは聞き返した。

「はい。親衛隊を結成なされませ。特に、優秀な配下を」
「なんでよ? 自分の身は自分で守れます」

 アンには、冒険者としての実績がある。今さら何に注意しろというのか。

「その慢心が、事故の素だというのです」
 また、オルガの小言が始まりそうだ。

「ここから先、お一人で出歩くのは危険です。綿密な調査も必要でしょう。なにより、王妃という身分が邪魔をする場合もございます。限りなく普通人に近い感性を持つ人物が相応しいかと」

 ぐうの音も出ない程の正論で返される。
 アンの無茶を把握している人間の意見だ。

「そこまでいうなら、心当たりがあるのね?」

 中途半端な実力では承知しない。

 アンの敵はバロール教団なのだ。

 肉体的だけではなく、精神的な強さも必要になってくる。

「ただ今、呼んで参ります」

 書斎に着くと、一人の青年が立っていた。

「信用できるの、オルガ?」
「我らダカンが誇る、優秀な護衛です」

 オルガの紹介で、革鎧を着た騎士がアンの前に出る。
「フランチェスコ・メルツィ、二〇歳です。剣の腕では誰にも負けません。フランチェとお呼びください」

「彼は、ダカン家が誇る私兵の一人です。特に戦闘に特化してございます」

 メルツィは、ガッチリしたタイプの剣士だ。ショートソード一本だけしか持っていないのに、まるでスキがない。

「名前と目鼻立ちからして、外国人ね?」

 ルックスと雰囲気から、フランチェからは人をたらしこめそうなオーラが漂っている。

「イタリア出身の元貴族です。亡命しまして」
「国を裏切ったの?」
「没落しました。フランスに望みを得ようと」

 オルガ夫人の親戚筋であり、夫人のボディガードを数年勤め上げたという。

 だが、戦争で主が死に、一族は没落した。一粒種のフランチェだけを残すのみである。

「ふぅん」
 ノーモーションで、アンは剣を振り下ろそうとした。

 だが、剣が手元にない。どこへ行ったのか。

「ご冗談を」
 いつの間にか、剣はオルガが後ろに隠し持っていた。

「どうして、斬りかかると分かったの?」
 オルガに剣を返してもらう。

「先ほどから、全くお話を聞いていらっしゃらなかったので」

 アンがずっと剣の方をチラチラ見ていたのが、フランチェは気にしていたらしい。
 何かを試そうとしていると直感で分かったそうな。


 確かに見込みがある。先日連れて行った騎士たちに、フランチェの爪の垢でも飲ませたい気分だ。

「じゃあ、私兵というのもウソね」

 今度は、オルガが驚く番だった。
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