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第〇話 アン王妃ミステリーツアー
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「ここが、ナント歴史博物館でえす。この地を治めていた、ブルターニュ大公のお城を改造して作られていますぅ」
犬山は、ツアー客であるカップルを、博物館前に連れてきた。
ここには八〇〇の所蔵品があり、ナントが歩んだ歴史を知ることができるのだ。
フランスには詳しくないという日本人カップルは、ガイドブックと城とで目を行き来させている。
「夜にはライトアップされて、キレイなんですよぉ。闇夜にポワッと浮き出た感じで、幻想的なんですぅ」
カップルは、城の前にある銅像の前に止まった。
女性の銅像は、マントを肩にかけ、颯爽と前を突き進むかのように立っている。
「この銅像、なんか存在感あるよね。カッコイイー」
「女性なのに、肩で風切るって感じがするわね」
二人とも、銅像が気になる様子だ。
「えへへ、そうでしょうそうでしょう!」
誇らしげに、犬山は語った。
「こちらの方は、アン・ド・ブルターニュ王妃でぇす。本当はアンヌ様というそうですが、『ヌ』は発音しないそうでぇす!」
彼女を紹介する、この時間が一番好きだ。
「へえ、アン王妃ね。よく知らないけど、存在感が凄いわ」
「何をした人なんだ?」
待ってました。今から語りましょうぞ。
ツアコン歴も三年目になるが、このときが一番楽しい。
「実はこの方、王妃の身でありながら、故郷のナントを守り通した、立派なお方なのです! 彼女がいなければ、ナントはフランスのいいようにされていたことでしょう!」
アン王妃は当時のフランス王シャルル八世と結婚させられて、六人の子どもを産んだ。が、その誰もが長く生きられなかった。
シャルルが事故で死去した後、ルイ一二世に嫁ぐ。そのときに、ナントの正式な領主にしてもらった。
「歴史的にも重要な方なのね?」
「しかし、それだけではないのです!」
アン王妃の話が面白くなるのは、ここからだ。
「実はこの王妃、街に繰り出しては悪徳貴族や街を混乱させていた魔術師をシバいて回っていたのです!」
カップルは、犬山の独白に唖然となる。
「嘘だろー? そんな記述はないじゃん!」
カップルの男性が、言いがかりをつけてきた。
「当然でしょ? そんなこと王族に知られたら、アン王妃は処刑されるっしょ」
事実、アンの裏稼業を記した書籍は残っていない。
だが、一切合切なくなったわけでもなく。
「ナント博物館の奥の方に、ひっそりと保管されているのです」
犬山は、歴史資料の詰まったタブレットを用意する。
ここから先は、口で説明するより、実際に資料を見てもらった方が早いだろう。
「今から語るのは、アン・ド・ブルターニュ王妃の、繁盛記でぇす。その名も、『『じゃじゃ馬王妃』なり!」
犬山は、ツアー客であるカップルを、博物館前に連れてきた。
ここには八〇〇の所蔵品があり、ナントが歩んだ歴史を知ることができるのだ。
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「この銅像、なんか存在感あるよね。カッコイイー」
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二人とも、銅像が気になる様子だ。
「えへへ、そうでしょうそうでしょう!」
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「こちらの方は、アン・ド・ブルターニュ王妃でぇす。本当はアンヌ様というそうですが、『ヌ』は発音しないそうでぇす!」
彼女を紹介する、この時間が一番好きだ。
「へえ、アン王妃ね。よく知らないけど、存在感が凄いわ」
「何をした人なんだ?」
待ってました。今から語りましょうぞ。
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「実はこの方、王妃の身でありながら、故郷のナントを守り通した、立派なお方なのです! 彼女がいなければ、ナントはフランスのいいようにされていたことでしょう!」
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「ナント博物館の奥の方に、ひっそりと保管されているのです」
犬山は、歴史資料の詰まったタブレットを用意する。
ここから先は、口で説明するより、実際に資料を見てもらった方が早いだろう。
「今から語るのは、アン・ド・ブルターニュ王妃の、繁盛記でぇす。その名も、『『じゃじゃ馬王妃』なり!」
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