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第五章 敵はヒロイン!? 初の攻略対象との戦闘?

第26話 アイテム合成と、温泉イベント

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 なんと、エデルがミラベルに交際を申し込んできた。
 マジか。そっちのケもあったとは。

「姫よ、お考え直しを。そもそもあなたの美少女好きが、この手の混乱を招いたと」

「わかっている。だからわたしは、夫も妻も大事にする姫騎士を目指したのだ」

 エデルは、かなりクセのあるヒロインだったようだ。

 さて。ミラベルは、どう出るだろう?

 お姫様から求婚されるなんて、めったに起きないイベントだしなあ。

「ごめんなさい」

 ミラベルは、きっぱりと断った。
 王族相手でも、ミラベルは考えを曲げない。

 そりゃあそうだ。魔王討伐に出た勇者の手助けを、人知れずやっているんだ。
 恋愛にうつつをぬかしているヒマは……。
 
「わたし、ベップおじさんが好きなんだ!」
 
 おお、ありがたい! 

「おじさんのお嫁さんになるから、エデルちゃんのお嫁さんにはなれません」 

 胸がジーンと、熱くなる。

 かつてミラベルが、ここまでストレートに愛を語ってくれたことがあっただろうか。
 戦闘のパーティとしか、思われていないんじゃないかって、何度も考えた。
 しかし、ミラベルはオレに好意を持ってくれていたのだ。
 
 だがこれで、オレは斬首ってことになったりしないよな?

「わかった。ではせめて、一緒にシバレリアの街を見て回ってくれないか? 街の近況なども知りたいし、キミを連れて歩きたい」

「それくらいなら、いいよ」

 おっ。やはりクエストログが出てきたな。

 
                                      *
 

【デートイベント】

 エデル王女と、街を回りましょう。
 一晩かけて街を歩き、被害状況などを調べます。
 夜は、社交界デビューもしましょう。

 
                                      *

 さすが王族とのイベントともなると、社交界などもあるのか。


 
 みんなで銀狼の背に乗って、シバレリアまで戻る。
 
 エデルの案内のもと、街を回ることになった。
 ドワーフたちは器用で、街が多少ぶっ壊されても自力で修繕している。

「ベップ、ミラベル。ありがとう。お礼として、二人に【アイテム合成】を教えよう」

 待ってました。

 二つの武器を持って、エデルが説明をする。

 オレの眼の前に、鍛冶用のログが出てきた。

 厳密には、鍛冶に使うセットが目の前に突然出てきた感じである。
 
「アイテムには、属性や特性がある。それを抜き出して、別のアイテムに移すイメージを」

 オレはアイテムのログが勝手に出てくるから、属性・特性を移動させるだけでいい。


 鍛冶のログにセットして、武器を叩く。
 特性を抽出したい武器を、破壊した。オレの場合は、店売りの杖である。
 武器の破片から、小さな青い石が出てくる。

「それが、要素だ。では次に、石を別の武器に移す」

 この場合、石と武器の上に置き、一緒に叩けばいいらしい。

「できた」
 
 オレは、ソードオフと杖を合成させて、より強い魔法弾を撃てるようにする。

 こういうのって、ゲームだと成功率とかがあるんだよなあ。
 だが【勇☆恋】は、絶対に成功するみたいだ。
 どこまでも、親切設計である。

 しかし、ミラベルって、どうやって想像するんだろう?

「大丈夫か、ミラベル?」

「平気。すぐにわかったよ」

 野生の勘みたいな感じで、ミラベルはスイスイっとアイテム合成を覚えてしまった。


「おじさん、見てこれ」

 ミラベルは、角笛とハンマーを合成させていた。
 他にも、金属ヨロイをキグルミと組み合わせる。
 オーバーオールを着たキグルミが、完成した。

「かわいさが激増ししたな!」

「わーい」

 ミラベルが、アイテム合成の成功に歓喜する。


 その後、社交界に招かれた。

 オレはダンスホールの隅で、ミラベルの着替えを待つ。
 白いタキシードを、何度も確認した。
 
 貴族の軍服風のエデルに手を引かれ、ミラベルがダンスホールの階段から降りてくる。
 
「おおお、キレイだ。ミラベル」

 髪を整え、ドレスに身を包んだミラベルが。
 天使どころか、女神とさえ思える。
 
「ベップおじさんも、めちゃかっこいいよぉ」

 ドレス姿のミラベルと、ダンスを踊った。

 オーケストラに合わせて踊るなんて初めてだったが、どうにかうまく踊ることができたようだ。

 こんな民間人が踊っていいものかと思っていたが、国を救った英雄として、オレたちは歓迎された。

 ダンスを終えて、エデルがオレたちを城の裏手に連れ出す。
 
「城の中に、温泉がある。そこに連れて行ってやろう」

「温泉かー。いいなー」

 異世界にも、温泉みたいな場所があるんだなぁ。


「あああ。生き返るなあ」

 さすが異世界の温泉ともなると、温かいだけではない。
 魔力がみるみる、回復していく。
 ずっと戦い詰めだったので、わずかな傷や痛みなどが残っていたようだ。
 身体が癒やされ、肩こりも解消されていった。

「おじさん……」

「うわ!」

 なんと、バスタオル一枚のミラベルが隣に!

「ここって、男湯だよな!?」

 看板を見て、たしかに男湯だと確認したはずだが。

「えっとね。ここは王族専用のお風呂らしくて、男女兼用なんだって」

 更衣室だけ、男女に分かれているらしい。

「エデルは、一緒じゃないのか?」

「向こうに入っている」

「そうか」

 なにかしゃべってないと、気まずいんだが。

 ミラベルの全身は、湯気でうまく見えなかった。
 これはむしろ、ありがたい。
 もし全身がバッチリ見えるようなら、オレは理性を保てるかどうか。

 ミラベルが、オレのすぐ側に浸かった。
 肩がピトッと、くっついている。
 
「エデルちゃんから聞いたんだけど、もう魔王の城は目の前なんだって」

「うむ……」

 もう、このエンドコンテンツも終わりなんだな……。

 
(第五章 完)
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