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第五章 敵はヒロイン!? 初の攻略対象との戦闘?

第25話 国家転覆を図るおっさんに、アツアツおでんを

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「ヒハハハ。なにをほざくかと思えば。魔王の側近の中でも屈指の実力を誇る、この妖術師をひいい!?」

「しゃべらせねえよ」

 のんきにくっちゃべっていた妖術師に、ソードオフを放つ。
 ちなみにイリュージョンの魔法によって、砲身が「ちくわ」、マガジンが「大根」、持ち手が「はんぺん」の形をとっている。弾丸は、小さい「がんもどき」だ。

 相手には、障壁でガードされた。
 が、それでも敵のシールドにはヒビが。
 こちらの魔力に合わせて、ソードオフの威力も増すようだ。
  
 この世界に来て、初めて本気でブチのめしたい相手が出てきた。

「凄い音がしたよ、ベップおじさん!」

「今のが、銃だ。ドワーフの技術の粋を結集して作られた。魔力を弾丸として撃ち出す武器だよ。こっちは任せろ、ミラベル」

「はい。オオカミさん、おねがい」

 銀狼が「御意」と、ミラベルを自分の背中に乗せた。ミラベルの速度では、エデル・ワイスの動きについていけない。ナイスな作戦だと思う。
 今までジャストガード以外に回避行動をしていなかったミラベルが、まともに戦えるようになっている。
 エデルの剣戟をすりぬけ、おでん型のハンマーで殴りかかった。

 圧倒的に劣勢だったのが、ようやく五分といったところか。

 こっちだって、負けていない。
 妖術師の杖を、ソードオフ・ショットガンでへし折る。

「なんと珍妙な武器を! 若造が、この歴戦の妖術師に歯向かうなど!」

「黙れ。姫様の後ろ盾がなかったら、なにもできねえくせによ」

「そちらこそほざけ!」

 妖術師が、本性を表した。骨ばった、悪魔の姿を取る。腕と足がなく、手の平だけが浮いている。こちらの世界観に合わせて、多少はファンシーさを残しているようだ。だが、邪悪さのほうが勝る。
 これも妖術かと思ったが、こちらが本体らしい。

「わが名は、妖術師のリッチ! お主は我が秘術によって傀儡になどしてやらぬ! 永遠に闇をさまようがいい!」

「うるせえよ。おでんの餌食になりやがれ」

 相手が人間じゃないならば、ぶっ飛ばしても問題なかろう。
 容赦なく、おでんを打ち込む。

 浮いている手をクルクルと回して、リッチがより強力なバリアを張った。

 がんもどきが、弾き飛ばされる。

 ダメージが通らないどころか、コイツを攻撃するだけムダか?

「すばらしかろう! これが魔王様よりたまわった力だ!」

「バカ言え。ただ、通せんぼさせるだけの力をもらっただけじゃねえか! なんの自慢にもならねえよ!」

 ミラベルは力を与えられても、自分でアレンジを試みる。探究心が強い。
 ただ力をもらってイキっているだけの魔物とは、頭の構造が違う。

「黙れ若造が! 魔王様の偉大さも知らずに、能書きだけを!」

「能書きだけかどうか、試してみな!」

 ソードオフに、合成魔法をプラスする。

「ウインド・カッター!」

「バカめ! マジックシールド!」

 リッチが再び手をクルクルさせて、魔法を弾く。

「バカは、テメエだ!」

 障壁に弾かれた魔法が、エデルの背中にヒットした。

「ありがと、おじさん! えーい!」

 そのスキに、ミラベルがエデルに一撃を加える。

 こんにゃくで突きを喰らい、エデルが怯んだ。

 ようやく、エデルにまともなダメージが通る。

「ぐおお! イカン!」

 エデルの魔法修復のために、リッチの魔力が吸われていった。

 やはりか。
 初撃でおかしいと思った。

 妖術師が、ヨロイにパワーを与えているんじゃない。

 ヨロイのほうが、妖術師を魔力タンクにしてやがる。

 もし妖術師が本当にエデルを操っていても、それこそ遠くから指揮をしていればいい。

 なのにコイツは、わざわざ至近距離まで出向いてきた。
 攻撃されるリスクを、背負いながら。
 
 つまり、リッチの本体は、あのヨロイだ。
  
「銀狼、リッチはこの際、無視だ! エデルだけに焦点を絞る!」
 
「御意!」


 銀狼が、爪でエデルに攻撃をしかけた。

 緑色の剣閃を放ち、銀狼を遠ざけようとする。

 ミラベルが、銀狼の背中からダイブ。エデルへ飛びかかった。

 再び、剣閃を放とうとする。
 側面から、オレが銃撃でハルバートを撃ち落とす。

「姫よ、正気に戻り給え!」

 銀狼が、エデルの横っ面をひっぱたく。

 エデルが被っていた仮面がわずかに砕け、顔から離れていった。

「ぶっつぶせ、ミラベル!」

「はい! このおお! エデルちゃんから離れろーっ!」

 必殺おでん攻撃で、ミラベルは仮面を砕いた。

「ダメ押しのハートビート!」

 ハート型の火球も、ミラベルは仮面に叩きつける。

「おおおおおおお魔王様あぁぁあああああ!?」

 妖術師リッチが、断末魔の叫びを上げる。
 
 エデルを包んでいたヨロイが、古くなった土壁のようにボロボロと剥がれ落ちた。

「どうにか、倒せたのか?」

 オレの脳内に、ファンファーレが鳴り響く。

                                      *

【クエスト達成!】

 おめでとうございます。
 王女エデル・ワイスの呪いも解けて、クエストを達成しました。  

                                      *

 よし、クリアはできたようだ。

「うう。ボクは、いったい?」

 男装のドワーフ麗人が、そこにいた。
 ショートカットで、ボーイッシュな感じである。

「おお、エデル王女よ。ご無事で」

 エデル王女の前に、銀狼が腰を下ろす。
 色々と、事情を説明した。

「そうか。やはり大臣が。ボクは大臣の不正を暴こうとしたが、近づきすぎたようだ。いいように操られてしまうとは」

 エデル王女は、オレとミラベルに礼をいう。
  
「ミラベルといったな。どうだろう? ボクと結婚してくれ」

 ええーっ!? 
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