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第四章 和風ファンタジーの魔法学校を、オロチから救え

第20話 勇者の妹と浴衣

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 お祭りの日を迎えた。
 神社の隣にある民家で、ミラベルが着付けをしてもらっている。
 ここは、キョーコの実家だ。
 
「えへぇ。ベップおじさん、似合うかな?」

 ミラベルが、浴衣姿でオレの前に立つ。
 朝顔と金魚が、ブルーの浴衣に映えている。
 いいな。金魚柄! あまり女子の浴衣なんて注目していなかったのだが、推しの浴衣となると気になってしまう。

 しかも、ミニ浴衣! 
 膝丈とはいえ、ミニの浴衣はミラベルの健康的な足を映えさせる。

 ミラベルは、オレを殺す気なのか?
 オレには、目の毒だぜ。 

「ワタシのお古ですが、似合っててよかったです」
 
 キョーコも、浴衣姿で出てきた。こちらは、花火柄である。こっちもいいな。夜に、赤い花火が浮かんでいる。

「お祭りはもう、始まっているです。行くです」

 キョーコに連れられて、神社の中へ。
 こういうとき、神社が家ってのは便利だ。住んでいる人からしたら、プライベートもへったくれもないんだろうが。
 

「おお、たい焼きだ」

 アツアツのたい焼きを、みんなで頬張る。

「おいっし」

「はいです。ここのたい焼きは、シッポまでアンコがぎっしりですぅ」

 ミラベルもキョーコも、幸せように食べていた。

 わたがしと、りんごアメを買って、祭りを楽しむ。

 射的やくじ引きをしつつ、たこ焼きとラムネを持って、山のてっぺんへ。

 神社の私有地があって、そこのベンチで花火を独占できるという。

 待ちきれないのか、ミラベルは駆け足で頂上を目指していた。

 森の中で視界の悪い中、オレも後へ続く。

「おおおおお」

 視界がひらけた瞬間、特大の花火が打ち上がった。

「きれい」

 たしかに、美しい。

「すごい。おいしい。わあ花火キレイ。たこ焼きおいしい」

 たこ焼きを食べつつ花火を見ているので、ミラベルの感情がせわしない。 
 しかし、ミラベルはどこかさみしげである。
 大事なものが消えていくような感じが、常に漂っていた。
 不安な気持ちをかき消すかのように、たこ焼きに手を伸ばしているような。
 
「えっと、この力は、お二人に預けよとのことなのです」

 キョーコが、胸に下げていたネックレスをオレに渡す。

 形は、狐面のロケットだ。

「おじさん!」

「うむ」

 狐面が割れて、光となる。

 光が、キツネ耳の女性の姿を取った。
 キョーコをグッとオトナにしたような姿に。

『このたびの働き、見事だった。これで余も、天へ還れるというものだ』

 頭の中に、声が響いてきた。

 声の正体は、キョーコの中に封じられていた土地神だという。

 おそらくキョーコに取り憑いていた存在は、最後の力をもってオロチを封じたんだな。

 頭に入ってきた情報によると、第一形態はジャストガードで攻撃を防ぎ切ってもらい、第二形態では一対一に持ち込んで初めて、オロチを倒せたという。
 偶然とはいえ、奇跡のような偶然が重なったと。

 キョーコをサポートが必要なくなったので、元の仕事に戻るという。

『お主たちに、この力を授けよう』

 二つの光の玉が、キツネ耳女性の手から放たれた。
 
 ホタルほど小さい光の玉は、オレたちの身体の中に吸い込まれていく。

 新しいスキルが、ステータス画面に追加された。
 
 これは……【スキル合成】だ!


 スキルを合体させる力が、とうとうオレたちにも備わったわけか。
 おそらく実装されるだろうと、オレは思っていた。
 まさか、ここで手に入るとは。

『オロチ退治を手伝ってくれて、礼をいう。ささやかだが、我が力を受け取るがよい。キョーコには、もう必要のない力だ』

 最後に連発の花火が打ち上がって、一瞬青空になる。

 同時に、キツネの魂が天へ登っていった。

 ミラベルが見せていた悲しみの正体は、これだったのか。

 キョーコも空を見上げながら、「今までありがとうございますです」と、土地神に手を振った。


 翌日、オレたちは船を乗り継いで北を目指す。

 向かう先は雪山地帯の【シバルキア】である。

 しかし、そこでとんでもないトラブルに巻き込まれるとは、オレは考えてもいなかった。

(第四章 完)
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