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第四章 和風ファンタジーの魔法学校を、オロチから救え

第17話 制服で、ジャストガードの練習

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「ベップおじさん、どうかな?」

 少し恥ずかしげに、ミラベルが更衣室から出てきた。

「おおおおお」
 
 着替え終わったミラベルを見て、オレは息を呑む。

 ミラベルが着ているのは、魔法科学校の制服である。
 白を基調とした、セーラー服だ。
 スカートの長さが膝丈とか、完璧ではないか。
 ヘタにギャルっぽいミニスカにしないあたり、ミラベルは人のツボを心得ている。

 ミニスカなら、なにも制服である必要はないからな。
 制服に必要なのは、ある程度の理性なのである。
 白セーラーは、ただでさえ着こなしが難しい。
 ヘタに短くすると、イメクラになっちまう。
 
  
 勇者の装備もよかったが、少女といえばやっぱり制服だよな。
 目の保養になる。

 なお、制服は【イリュージョン】効果を受けない。つまり、【勇者装備】には見えない作りになっている。

「おじさん、この制服すごいよ。着ているだけで魔力を制限されるんだよ。魔法の訓練をするために開発されたんだって!」

 たしかに、魔法攻撃力が、一〇分の一まで下がっていた。

「制服を着て、街で暴れないようにするためかもな」

 学生ともなると、イキった生徒も出てくる。
 異世界だろうがゲーム世界だろうが、例外ではないのかもしれない。
 おそらく、そんな生徒たちを制御するために、この制服は存在しているのだ。
 
「まあミラベルはオトナだから。そんなマネなんかしないよな」

「えへへ。そうだよ」

「よし。じゃあふたりとも、特訓だ」

 グラウンドを借りて、実戦を行う。
 内容は、ミラベルとのタイマン形式だ。
 
 やはりというか、キョーコは魔法の使い方においては一流だった。
 しかし、物理攻撃とのコンビネーションともなると、難しい。

 今どきの魔法使いは、物理戦闘も自力でこなす必要がある。

 キョーコには、それが難しいようだった。

「前に出るのは、怖いか?」

 オレが聞くと、キョーコは首をブンブンと横に振る。
 恐れているわけじゃないのか。

「おじいちゃんに習ったせいか、『魔法使いは後方支援』というクセが染み付いているのですぅ」

 杖を持ちながら、キョーコが縮こまる。

 対するミラベルは、【ジャストガード】の練習に明け暮れた。

 キョーコが撃ち出す火球の連続攻撃【鬼火】すら、すべて角笛バトンで打ち返す。
 少し教えただけで、すぐに対処した。

「ジャストガードって、今後も必要になってくるかな?」

「オレはそう考えている。あのタイミングで、ジャストガードからの追撃が必要になる敵が現れたからな」

 今後の敵は、単純なレベリングだけで勝てそうになさそうだ。
 きっと技術的な要素も、必要になってくる。
 だったら、覚えるに越したことはない。
 
 この六日間、厳密には半年分の時間を、有効活用させてもらう。

 さらに、相手は「オロチ」ときている。
 オレの記憶違いでなければ、オロチといえば多頭のモンスターだ。
 複数回攻撃してくるのは、目に見えている。
 だったら、ジャストガードかカウンターは必須のスキルだろう。

 とまあ、ミラベルの育成方針は見えてきた。

 あとは、キョーコなんだが。

 メロならサポートに徹してもらい、相手の力量や弱点の分析役を任せられた。

 だがキョーコは、伝説の英雄の孫だ。
「育成してくれ」ってことは、オロチ戦における大事な戦力なのだろう。
「キョーコの攻撃でしかダメージが通らない」とかは、勘弁してもらいたい。
 といっても、これってフラグなんだろうなぁ。

 なんたって二日経っても、一向に進展がないんだもの。
 狩り場に連れて行ったり、新しいスキルを覚えさせたりしてみたが、どうにもこうにも。

「ぜえ。ぜえ。みなさん、強すぎですわ」

 四つん這いになりながら、キョーコは肩を上下させる。
 
 そもそも半年そこらで、強くなれるわけがない。
 ゲーム世界で言うのはナンセンスだが、これはゲームではないのだ。
 単に敵を倒しまくって、レベルアップというわけには行かないか。

 難しい。どうやって勝つんだよ?

 見た目が九尾のキツネっぽいから、キョーコはもっと強い目のキャラだと思っていたのだが。
   天才ではあるが、実戦はからっきしというのは。

「ちょっと待て」

 オレは、キョーコの使う【鬼火】に着目した。

「お前さん、このスキルはどこで覚えたんだ?」

 ファイアボールを複数同時で撃てるスキルを求めて、オレは魔法科学校じゅうを歩き回った。
 しかし、それっぽいスキルは見当たらなかったのである。
 先生にも話を聞いて、図書館なども調べたのに。

 これがあったら、ミラベルにも使わせてやりたかったのだが。
 
「これは、自分で魔法を合体させて、編み出したのですが?」

 マジかよ。天才現る。いや、元々天才だったか。

「そうか。スキルって、合体させることができるのか!」

 その発想はなかった。

 ちなみに、ミラベルの使っている【ハートビート】や【ピンクサンダー】は、ユニークといって、上位のスキルである。

 スキル同士を合体させるなんて、オレの記憶にはなかったな。

 そんなことが、可能だとは。

 しかし、ちゃんと調べてみると、【スキル合体】はキョーコ固有の特技らしい。

 とはいえ、これを活用すれば、活路を開けるかも。

 どうして、これに気づかなかったのか!

「キョーコ。お前がいれば、オロチに勝てるぜ」

「本当ですか?」

「ああ。オレが育成を間違えなければって条件付きだが」

 とにかく、キョーコがカギだ。
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