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第三章 船旅と人魚と水着回

第10話 食いしん坊人魚と、海賊退治

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 オレたちは、人魚を保護した。

 冒険者ギルドに連れて行っていいものか迷ったが、ミラベルは有無を言わさず担いでいく。グラマラスで、自分より背丈の多い人魚を。
 オレも一緒になって、人魚を背負った。
 
 オレが治療を施した結果、人魚は無事に意識を取り戻した。
 普通なら、三週間は寝込む大ケガだったらしい。
 周回プレイで【エリクサー】を保管しておいて、よかったぜ。ここくらいしか、使い所がないだろうからな。


「ありがとうございます。モグモグ」

 で、起きてそうそうこの食欲である。

 エビフライを乗せた大盛りサバカレーはもう三杯目だ。
 アサリとワカメのスープパスタも、二杯平らげている。

 オレも同じカレーを、ミラベルも同じパスタを食べているが。

「人魚だから、魚は同類だから食べないかと思っていたぜ」
 
「いえいえ。お魚は貴重なタンパク源です。モグモグ」
 
 人魚は、海の幸が好物なんだな。

「わたしミラベル。こっちはベップおじさん。あなたは?」
 
「あっ。申し遅れました。ワタシは、こういうものです」

 口を拭いて、人魚が貝殻を差し出した。どうやら、身分証のようである。

「メロウ・リンク、って名前なんだな」
 
「ワタシのことは、メロとお呼びください。むしゃむしゃ」

 あいさつをしながら、メロは食事の手を止めない。

「ちなみに、栄養は胸にはいっていませんので」

 スプーンを持つ手で、メロは自分の豊満な胸を隠した。

 誰も言ってないって。

「魚型のモンスターといい、あんたたちは、海じゃなくても泳げるんだな?」

「はい。海の近くならば、生きられます」

 この酒場に来るときも、空中をヒレでかくようにして進んでいた。器用な種族だ。
 
「メロちゃんは、海でなにをしていたの?」

 さすがにメロは、南国フルーツをかじる手を止めた。
 
「我が人魚族の島を、海賊が襲ってきまして。ワタシは、救援を求めに」
  
「海賊!」

 たしかに『勇☆恋』にも、海賊イベントは存在する。ヤツらを倒さないと船を出せず、別天地へ行けないのだ。
 ヤツらは船を壊してしまうため、漁師も困っている。


 出たよ。またクエストログ
 

【海賊討伐イベント】

 海を荒らす海賊を、やっつけてください。
 このイベントを攻略することで、【船】をゲットできます。
 船を手に入れてからは、東にあるヤマト国か、北にある雪山地帯シバルキアへのルートが解禁されます。
 また、【人魚の島】ダンジョンへも、通行が可能になります。

 このイベントを攻略しなければ、コンテンツのラストに控える大ボス討伐のフラグが立ちません。



 おっ。重要なワードが出てきたな。

 エンドコンテンツのラスボスは、魔王じゃないんだろうな。
 魔王は勇者が倒すから、世界の裏で暗躍しているヤツがいるのかも。
 そいつを、やっつける展開になるのか。


「オレの記憶違いなら、海賊は倒されたはずだが?」

「それが……勇者様が倒した海賊は、アンデッドになって復活したのです!」

 ええ……。
 そんな展開になるわけ? 

 ただ、気になることもある。【人魚の島】ってなんだ? 本編では、出てきたこともないぜ。
 
 
「人魚の島には、ダンジョンがあるそうだが?」

「はい。我々人魚でも危険なので、立ち入りませんが」


 海賊イベントも気になるが、本命はそっちだろうな。
 アンデッド海賊を操っているのは、そっちのダンジョンに棲むボスだ。

 
 ギルドで、海賊退治のクエストを受ける。

「ベップおじさん、がんばろうね」

「おう。人魚を助けるぞ」
 
 
 南の島に、財宝のあるダンジョンがあるという。
 財宝は先住民によって、大切に守っているらしい。
 だが、海賊が海を荒らすので困っているそうだ。

 まずは、海賊共を片付けるか。

 ギルドが、船を用意してくれた。
 といっても、途中で小舟に降ろされたが。
 有事に備えて、海賊船はオレたちだけで対処せよとのこと。
 船の大砲を海賊船に向けてくれているので、薄情とは言えない。
 
「メロ。あんたは戦えるのか?」

 おそらくヒロインなら、戦闘がこなせるはずだ。

「相手の弱点を突くなど、戦闘補助くらいなら可能です。鍵開けや罠抜けなどは、お任せください」

 直接的な戦力としては、当てにならないようである。
 しかし、弱点を教えてくれるのはありがたい。

「来たよ!」

 ミラベルが、前方を指差した。

 幽霊船が、こっちに向かってくる。
 大砲なんかを装備されていたら、こっちがお陀仏になっちまうが、どうやら体当たり以外に攻撃はしてこないっぽい。

 と思っていたら、船の頭が口に。

 オレは慌てて舵を操作し、体当たりを避ける。
 
「こいつ、噛みついてきやがった!」

 揺れる船で、攻撃は難しい。
 内部から、やっつけてやる!
 
「取り付くぞ! 捕まってろ!」

 幽霊船に横付けをして、飛び跳ねて錨を掴む。

「捕まれ、ミラベル!」

 ミラベルが、オレの反対の手を掴んだ。

 どうにかミラベルを引っ張って、錨に腰を下ろす。

 その後で、メロが続く。
 
 オレたちを乗せていた船が、流されていった。
 あれは、ギルドに回収してもらおう。

 船の甲板にたどり着くと、さっそくスケルトン共のお出ましだ。

「【ターンアンデッド】!」

 しょせん、幽霊相手である。オレは、浄化魔法で一掃した。
 ミラベルの鍛錬も考えたが、急ぐ必要がある。
 ボスは頼もう。

「乗り込むぞ」

「うん」

 虫は苦手だが、ミラベルはお化けに耐性はあるようだ。

 ミラベルは【ファイアフィスト】による徒手空拳で、道を開く。
 狭い場所での戦闘を、心得ているな。

「どこでそんな戦闘方法を覚えたんだ?」

「え? べップおじさんがコーチしてくれたからじゃん」

「いや。オレは何も教えてないぜ。そんな戦い方は」

「でも、ベップおじさんの動きをマネしたら、こんな戦い方になったよ」

 そうなの? オレ、自覚なかったんだけど?

 とにかくミラベルは、見様見真似でオレの動きをトレスしていたらしい。
 なんてこった。天才の天使が、ここにいたよ。
 
「この幽霊船サメ野郎を操っているヤツが、ここにいるはずなんだよなあ」
 
 そいつを倒せば、海賊を撃退できるはず。


「奥の部屋が、やたら豪華だよ」

 あそこだ。あれがボス部屋だろう。

「乗り込むぞ!」

 オレが先頭になって、ドアを開く。

 クラゲの帽子を被ったガイコツが、お出迎え。

「グギャギャ。海賊共は、オレサマの手下だぜえ」

 アゴの骨をあげさせて、クラゲはガイコツをムリヤリ笑わせていた。

「【ハートビート】!」
 
「【ライトニング】!」

 ミラベルが、ハート型のファイアボールを打ち出し、オレが電撃を火球へ上乗せした。 
「そんなもん、通じんよ! それ!」
 
 サーベルとレイピアによる二刀流で、オレとミラベルの魔法をかき消した。

「メロ。あのボスを倒せば、幽霊船は止まるか?」

 敵の剣戟を受け止めて、オレはメロに問いかける。
 
「はい。ですが、みなさん。あのボスの本体は、ガイコツじゃなくてクラゲの帽子です!」

 メロが、ボスを分析した。

「ミラベル、やれるか?」

 ここは、ミラベルに任せる。

「メロ。ヤツの弱点を、ミラベルに教えてやってくれ」
 
「はい」

 オレが相手の攻撃をさばいている間、再度メロが敵を分析した。


「ミラベルさん。クラゲには、脳も心臓もありません」

「えー! 詰みじゃん!」
 
「ですが! 水管という、栄養を補給する部分があります。それを、ガイコツとつなげているんです! なので、そこに電流を流し込んでください!」

 水管って、クラゲの胴体全体じゃねえか!
 
 ん? とはいえ、さっき雷を弾いたよな?
 だとしたら、こういうことか?

 オレは、ボスの剣を弾き飛ばした。

「いえ、ミラベル!」
 
「わかった! 【ピンクサンダー】!」

 桃色の雷を、ミラベルがキャンディケインから放つ。

 武器……というか「避雷針」を失ったボスに、直撃した。
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