転生メスガキ、苦手な食べ物を克服させるだけで勇者を最強に育てる!

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
9 / 9

最終話 あたしがいないと冒険もできないなんて。ざっこ

しおりを挟む
 あたしの役目は、教会を潰すこと。勇者のスキキライをなくしてあげることだ。

 その二つを達成した今、もう冒険に付き合う必要もない。

「さあ、行きなさい。ピッキー。あなたは英雄よ。あたしがいたら、あなたは甘えちゃうわ」

「デリン、キミは、ついていかないのか?」

「あたしは、役目を終えたわ。あたしがいなくても、あなたは戦えるでしょ?」

「ムリだ。キミも連れて行く。一人になんか、したくない」

「ほんとにざっこ。あたしがいないと、剣も握れないの?」

 できるだけ嫌われるように、あたしは悪女ムーブを行う。

「おまえさー。そうやってわざと嫌われようとしてんの、バレバレなんだよなー」

 しかし、マレリーはあたしの作戦を見抜いていた。

「そうですぞ。離れ離れになりたくないと、顔に書いておりますぞよ」

「てえてえ! てえてえは正義!」

 ユリー二世と、ハッサンまで。

「どうしてよ? あたしはもう、役立たずよ? 魔王との戦いで、あなたたちをサポートできるわけないわよ?」

「だからって、オイラたちは仲間だろ? 一緒に魔王を打ち倒したら、お前にも恩恵が与えられるんだぞ」

「恩恵なんて、あなたたちだけで受ければいいじゃない」

 あたしは、首を振る。
 旅に同行しても、あたしにやれることはない。

「オイラ、デリンのおいしいゴハンが食べたいぞ。魔王を倒したら、めちゃごちそうしてもらおうと思っていたのによー」

「そうだぞ。デリン。みんな、キミが必要なんだ。キミは私が、この勇者ピッキーが守るから、心配しないで」

 みんな……。

「もう、みんな揃ってザコザコなんだから! あとで足手まといだって追い払っても、しがみついてやるんだから!」

「それでこそ、ピッキーだよ!」
 
 結局、あたしは魔王の城まで同行した。

 いよいよ、魔王と対決する。

 だが、拍子抜けするくらい、魔王は弱かった。

 あの四天王とかいうやつが、やはり最強だったみたい。

「待ってくれ! もう人間を襲ったりはしない。俺は、命令されていたんだ!」

「あなたを動かしていた黒幕を、白状しなさい」

「教会だよ!」

……ピッキーの目から、光が完全に消えた。

 ああ、もう。どうなっても知らないからね。教会、覚悟していなさい。



 
 魔王を証人として、あたしたちは王城へ帰国した。

 証言を魔王から聞いて、国王は困った顔になる。
 
「騙されてはなりませんぞ、国王! この者共は、四天王をそそのかして教会を潰したんですぞ!」

 教会のトップである司祭が、言い訳をした。
 
「いやあ。余罪がありすぎて、おめえを信用できねえ」

 うわ。国王の信頼までなかったのね、教会って。

 教会の悪事を、常々国に報告していた甲斐があったわ。

「バカな! 魔王を倒せば証拠隠滅できて、さらなる収益が見込めたのに!」

 言い逃れできないと判断した司祭が、本性を現す。

「司祭さま」

「なんじゃ? 役立たずの勇者がぉう!」

 ピッキーが司祭に、無言の腹パンを食らわせた。

 司祭が悶絶して、白目をむく。

 倒れた司祭を、兵隊が連れて行った。

「すまんな、勇者よ。お見苦しいところをお見せした」

 国王が、勇者に頭を下げる。
 
「いえ。こちらこそ」

「褒美を取らせる。宴の準備を!」

 こうして、あたしたち勇者一向は、魔王を討伐したことで本物の英雄となった。
 
 のだが……。

「ゼ、ゼリー」

 勇者が、デザートのコーヒーゼリーの前に頭を抱えている。

「私は、寒天系が苦手なんだ。すっかり忘れていた」

 はあー?

「まだスキキライがあったの? ホントに勇者って、ザッコ」

(おわり)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

不死の果実は誰のために!

印象に残る名前
ファンタジー
『その果実を口にしたものは、永遠の命を手に入れる』 そんな言い伝えを、誰もが知っている世界。 人より魔力が多いことだけが自慢である少年のサクヤは、ある日、『祝福者』と呼ばれる特別な力を持つ少女と出会う。 たった一人で戦場を蹂躙することさえできるその少女の口から語られるのは、自身の持つ力ついての秘密、言い伝えの裏側。 そして、少女は告げる。「あなたには私の傍にいてほしいの。私が一生面倒を見てあげるっ!」 これは、少年と少女が果たした運命の出会いから始まる、不死の果実を巡る戦いの物語。 ※なろうでも公開しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...