転生メスガキ、苦手な食べ物を克服させるだけで勇者を最強に育てる!

椎名 富比路

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ピーマン苦手な勇者だなんて、普通にザコザコ

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「勇者ピッキーって、ピーマンも普通に食べられないのね。ザッコ」

 あたしは、ピーマンの肉詰めをモッシャモッシャ食べる。

 魔王に仕える四天王の一人が収めていた塔を、攻略したばかりだ。

「せめてものおもてなしを」とのことで、ピーマン料理をいただいている。

 この街は、冒険者の初期装備である「竹の槍」の名産でも知られていた。
 驚いたことに、竹は魔法使いの杖としても愛用されている。あたしも魔法の触媒には、ここの竹を使用しているくらいだ。
 エジソンが電球を開発する際に使用していただけあり、やはり竹は魔力の伝導率が高いみたい。
 よく考えたら、おとぎ話に出てくる魔女のホウキも、持ち手は竹だったわね。

 で、この街の名産が、竹とピーマンである。

 出された夕飯は、タケノコごはんと、ピーマンのハンバーグ詰め、ラーメンだ。

「まあ、そういうなって。オイラも苦手だぞ」

「百合に挟まれる三人衆」のひとり、盗賊のマレリーも、ピッキーと同じようにピーマンがキライだ。
 ハンバーグのピーマンだけを、残している。

「でもあなたと違って、勇者はタケノコは食べているわよ?」

 勇者ピッキーも、タケノコは食べるのだ。
 タケノコごはんは、おいしそうに食べている。
 案外、高級品だと思うんだが。それも、日本人の感覚だからなのだろう。
 異世界では、割とメジャーな食べ物なのかもしれない。

「その辺に生えてる、雑草じゃん。あんなの、何がうまいんだってのー」

「そうだそうだ」
 
 同じようにタケノコに手を伸ばさないハッサンと共に、ラーメンをすする。
 メンマとナルト、チャーシューのついた、昔ながらの中華そばだ。
 異世界に「中華」なんてないが。

 ひょっとすると、異世界ではタケノコって、雑穀扱いとかだろうか?

「その割には、二人はおいしそうにメンマを食べているじゃない」

「おう。コリコリしてうまいんだよな」

 ハッサンに至っては、メンマのおかわりまでしている。

 あたしは、どんぶりの中に入っているメンマを取り出した。
 
「メンマの原料は、さっきあなたが『その辺に生えている』と形容した雑草なんだけど?」

「マッ!? メ、メンマの原料が、竹だっていうのか?」

 マレリーが、お箸からメンマを取り落とす。

 メンマがタケノコであることは、本当だ。
 タケノコを蒸して一ヶ月ほど乾燥させたものが、メンマである。
 中国や台湾に、メンマ専用のタケノコがあるらしいけど。

 異世界のメンマは、それに勝るとも劣らない。
 
「どう? 竹も案外、おいしいもんでしょ?」

「おお。デリン。お前、オイラたちのスキキライまでなくして、オイラたちまで百合に溺れさせようってか?」

「てえてみが深い」

 マレリーとハッサンが、青ざめていった。

「ないわよ。安心して食べなさい」

 あたしはただ、竹の偏見をなくしたいだけだ。

「いやあ、竹ヤブでタケノコを取ったときを思い出しますな、勇者よ!」

 ユリー二世がピッキーに声を掛ける。

「そうだな。しかし、成長しすぎたタケノコは、あまりありがたがられなかった」

 タケノコは、成長して青くなると、竹になってしまう。そうなると、もう食べられなくなる。流しそうめんの台にでも、するしかないだろうな。

「子どもが苦手な野菜といえば、ニンジンとピーマンはほぼツートップじゃないのかー?」

「かもしれないわね。あたしも子どもだったときは、ピーマンが苦手だったわ」

 あたしが言うと、ピッキーがあたしの肩を掴む。
 
「デリン! どうやって克服したのか、ぜひ聞きたい!」

「そんなにガッツかなくても、教えてあげるわよ。そうねえ」

 あれは、母親が作ってくれた料理である。
 
 当時はそれほどメジャーではなかったが、無限ピーマンという料理が開発された。

「ツナとピーマンを和えたものよ」

 たしか、ツナの水煮、細ぎりにしたピーマンを使う。
 で、一緒に和えてレンチンし、コショウをかけたらできあがりだ。

「デリン。ツナってなんだー?」
 
 マレリーのリアクション通り、ここにはツナがなかった。
 マグロはあるが、ツナのような保存食品がないのだ。

「でも、うまそうだな。ピーマンって、なにがうまいんだ?」

「食感かしら? 慣れると、苦みもクセになるものよ」

「そうかー。いただきまーす」

 ガマンして、マレリーがピーマンをかじる。

「ううーん、オイラにはまだ早かったかもしれんなー」

「ムリをする必要はないわよ」

 マレリーを強くしたところで、勇者ほど強く慣れるわけじゃない。

「いつものように、ピッキーでも食べられそうなアイデアを考えるわ。ささ、食べさせてみなさいよ」

「わかった。あーん」

 毎度おなじみ、ピッキーによる食べさせっこを始める。

 焼いているためか、コリコリ感はなくなっていた。
 その分、しっとり感が肉と混ざっている。
 苦みが舌を支配する分、肉の旨味がさらに引き立った。
 スキキライを克服させてくれた、母親には感謝だな。

 とはいえ、これは強敵だ。 

 さすがに、勇者にピーマンを食べさせるのは無理だろうか?

 あたしが長考モードに突入していると、運悪く魔物が襲ってきてしまった。
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