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第六章 最終決戦
第63話 最終話 エピローグ 後編 夫婦になろう
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「うっしゃああああ!」
高々と、義父さんが腕を上げた。
「だーっ! 負けたーっ」
頭を抱えて、僕はひざまづく。
僕たちがやっているのは、麻雀だ。
ケンカではどうあがいても義父さんは負ける。「魔王をぶっ殺した相手に叶うわけねえだろ」というので、勝てそうな勝負をさせられていた。
「まあ、ええわ……トータルではワイが負けとるけん」
「ですよね。役満だけ狙ってましたもん」
オーラスで、僕は相手に役満を振り込んだ。しかし、義父さんはすでにマイナスになっている。役満で勝ったとしても、最終的には千点にしかならなかった。
「別にええんじゃ、ディートヘルム殿。安手でアガりまくるより男らしいわい」
あくまで、義父さんは強気である。
「結婚じゃが、とっくに認めとるし」
「いいんですか?」
「ええもなにも、おめえだって親に反対されてリユみたいなかわええ嫁を手放せるんか?」
「殺してでも奪い取ります」
「その意気じゃ! おめえ、よう自分の性格がよくわかっとろうが。それでええんじゃ。ワイがおめえを気に入るかどうかなんざ、どうでもええ。好きにせいや」
「はい」
おちゃらけた口調だが、重みのある言葉だ。
「おめえがワイの顔色をうかがって、ご機嫌を取るようなやつじゃったら、ブレスで灰にしとったわ」
「だと思っていました」
ここは、リユの親というべきだね。同じ血が流れているなあと。
「リユ、おめえからも大事な話があるんじゃろうが」
「は、はい……」
義父さんが、リユを呼んだ。
どういうわけか、リユが三つ指をつく。
「ディータ。アタシは、おめえの赤ちゃん、身ごもっています」
「……うん、リユさん、知ってます」
僕が言うと、リユはおどろきの顔をした。
「だからあのとき言ったじゃん。逃げろって。実際、僕はキミを逃したでしょ?」
義母さんとのお話も、お腹の子どものことだろう。そう、僕は察したのだ。
「それで、あんなことを。なんでおめえは、知ってた?」
「だってさ、様子がおかしかったもん。必至すぎるっていうか」
いつものリユなら、猪突猛進でありつつ、全体を見通してから戦局を見極める。だが、前の戦いはどうも先行しすぎていたなと。余裕がないと思った。
「冷静な判断ができていないから、なにかあったんだろうなって。いろんな可能性を想像した結果だよ」
「ディータ。やっぱおめえには、かないません」
「いやいや。奥さんにかなわないのは僕さ。リユ、危険な目に遭わせて、ごめんなさい」
「ええんじゃ。頭上げてくださいっ」
僕が謝罪すると、リユが慌てふためく。
「このディートヘルム、いい領主になって、今後もキミを支えるから、そばにいてください」
リユが、僕を抱き寄せた。
「お願いします」
数年後、リユが産んだ双子の赤ちゃんは、すくすくと育つ。
魔族の方が兄で、ドラゴン族は妹だ。
「領主ディータさま、次はわたしの子を」
「いやいや、ワタシの」
ヘニーとレフィーメが、側室の座を取り合う。
「そんな気はないから」
「仕方ありません。ここは、側近の私が」
カガシが胸を張ると、みんなして「どうぞどうぞ」と僕に押し付けてくる。
「だから、側室を取る予定はないから!」
そう言っていると、緊急報告が。
「ダンジョンで、危険なモンスターが」
ヘニーの配下であるエルフが、事態を伝えに来た。
「よし、僕が出動する」
「ならん!」
すっかりダメおじいちゃんになったボニファティウス王が、僕の耳を引っ張る。
「お前は領主だろうが! なにを率先して探索なんぞするのか!」
「領主である以前に、僕は冒険者だから!」
僕と父が言い争っていると、リユが火球を一発吐いた。
火球は、さきほど警報がなったダンジョンへ直撃する。
「おめえは何かあったらダンジョンだといいおって。子どもの面倒くらい見んか!」
「す、すいません」
「ほら、稽古つけたらんかい」
「はーい……」
僕は、僕そっくりの長男と、リユに似た長女に木の剣をもたせた。
「まずは【魔改造】の原理だけど」
「いきなりハードルを上げすぎじゃ!」
(おわり)
高々と、義父さんが腕を上げた。
「だーっ! 負けたーっ」
頭を抱えて、僕はひざまづく。
僕たちがやっているのは、麻雀だ。
ケンカではどうあがいても義父さんは負ける。「魔王をぶっ殺した相手に叶うわけねえだろ」というので、勝てそうな勝負をさせられていた。
「まあ、ええわ……トータルではワイが負けとるけん」
「ですよね。役満だけ狙ってましたもん」
オーラスで、僕は相手に役満を振り込んだ。しかし、義父さんはすでにマイナスになっている。役満で勝ったとしても、最終的には千点にしかならなかった。
「別にええんじゃ、ディートヘルム殿。安手でアガりまくるより男らしいわい」
あくまで、義父さんは強気である。
「結婚じゃが、とっくに認めとるし」
「いいんですか?」
「ええもなにも、おめえだって親に反対されてリユみたいなかわええ嫁を手放せるんか?」
「殺してでも奪い取ります」
「その意気じゃ! おめえ、よう自分の性格がよくわかっとろうが。それでええんじゃ。ワイがおめえを気に入るかどうかなんざ、どうでもええ。好きにせいや」
「はい」
おちゃらけた口調だが、重みのある言葉だ。
「おめえがワイの顔色をうかがって、ご機嫌を取るようなやつじゃったら、ブレスで灰にしとったわ」
「だと思っていました」
ここは、リユの親というべきだね。同じ血が流れているなあと。
「リユ、おめえからも大事な話があるんじゃろうが」
「は、はい……」
義父さんが、リユを呼んだ。
どういうわけか、リユが三つ指をつく。
「ディータ。アタシは、おめえの赤ちゃん、身ごもっています」
「……うん、リユさん、知ってます」
僕が言うと、リユはおどろきの顔をした。
「だからあのとき言ったじゃん。逃げろって。実際、僕はキミを逃したでしょ?」
義母さんとのお話も、お腹の子どものことだろう。そう、僕は察したのだ。
「それで、あんなことを。なんでおめえは、知ってた?」
「だってさ、様子がおかしかったもん。必至すぎるっていうか」
いつものリユなら、猪突猛進でありつつ、全体を見通してから戦局を見極める。だが、前の戦いはどうも先行しすぎていたなと。余裕がないと思った。
「冷静な判断ができていないから、なにかあったんだろうなって。いろんな可能性を想像した結果だよ」
「ディータ。やっぱおめえには、かないません」
「いやいや。奥さんにかなわないのは僕さ。リユ、危険な目に遭わせて、ごめんなさい」
「ええんじゃ。頭上げてくださいっ」
僕が謝罪すると、リユが慌てふためく。
「このディートヘルム、いい領主になって、今後もキミを支えるから、そばにいてください」
リユが、僕を抱き寄せた。
「お願いします」
数年後、リユが産んだ双子の赤ちゃんは、すくすくと育つ。
魔族の方が兄で、ドラゴン族は妹だ。
「領主ディータさま、次はわたしの子を」
「いやいや、ワタシの」
ヘニーとレフィーメが、側室の座を取り合う。
「そんな気はないから」
「仕方ありません。ここは、側近の私が」
カガシが胸を張ると、みんなして「どうぞどうぞ」と僕に押し付けてくる。
「だから、側室を取る予定はないから!」
そう言っていると、緊急報告が。
「ダンジョンで、危険なモンスターが」
ヘニーの配下であるエルフが、事態を伝えに来た。
「よし、僕が出動する」
「ならん!」
すっかりダメおじいちゃんになったボニファティウス王が、僕の耳を引っ張る。
「お前は領主だろうが! なにを率先して探索なんぞするのか!」
「領主である以前に、僕は冒険者だから!」
僕と父が言い争っていると、リユが火球を一発吐いた。
火球は、さきほど警報がなったダンジョンへ直撃する。
「おめえは何かあったらダンジョンだといいおって。子どもの面倒くらい見んか!」
「す、すいません」
「ほら、稽古つけたらんかい」
「はーい……」
僕は、僕そっくりの長男と、リユに似た長女に木の剣をもたせた。
「まずは【魔改造】の原理だけど」
「いきなりハードルを上げすぎじゃ!」
(おわり)
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