追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

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第六章 最終決戦

第61話 トラマルと、ディートリンデのアウゴエイデス

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 身体のあちこちを爆発させ、魔王が崩れ落ちる。

「ディータさま、はやく我が頭部から乗り込んでください」

 トラマルは半球状の頭を手で開けて、僕を中へ押し込む。

 ゴレームの体内は、柔らかい素材でできていた。これなら、落下してもダメージは少ないだろう。

「お前、トラマルなんだな?」

「はい。レフィーメ様が、ワタクシをシールドのパーツとして作ってくれたのです」

 レフィーメが? だから時間がかかったのか。僕の身体にすっぽりと収まるアーマーに慣れるのも、それで説明がつく。

「どうしてトラマルを、ヨロイに変えようなんて?」

「レフィーメ様はお城のガレキを見て、ワタクシの役割を理解したそうです」

 彼女が言うには、シンクレーグの城は壊れ方がおかしかったという。まるで「なにかが落ちてきたような」感じだったと。

 あの城は魔王との戦いで壊れたのではなく、「空から降ってきてトラマルが壊した」のではないかと、レフィーメは推理したという。

 たしかに、どうしてこのゴーレムがガレキなんかに埋まっていたのか、わからなかった。

「じゃあトラマルは、どうして落ちてきた?」

「ワタクシの正体は、ディートリンデのアウゴエイデスから作られた、アイアンゴーレムです」

 昔、今の僕と同じようなことがあったという。

「ワタクシは魔王との戦いで、赤ん坊だった一八代目を遣わしたのです。あなたのお祖母様を」

 ディートリンデのアウゴエイデスは、どうにか当時の魔王を倒したが、力尽きてシンクレーグで眠っていた。トラマルが取り戻した記憶には、そうあるらしい。

「シンクレーグの城に落ちます。耐衝撃の準備を」

「おう!」

 トラマルの体内で、僕は身体を縮めた。

「いったああああああ!」

 ドン! という音とともに、脇腹に痛みが走る。折れてはいないが、かなり痛かった。

「ディータ!?」

 リユが、トラマルの頭部を開いて、僕に抱きついてくる。

「一人で行くから、心配したじゃろうが!」

「ごめんよ。ごめん……」

 泣きじゃくるリユの頭を、なでた。

 しかし、泣いてばかりではいられない。

「おいおい、冗談だろ?」

 魔王の残骸が、こちらまで降ってきたではないか。

「待っとれ。全部叩き落としてくれるわい!」

 リユが、ドラゴンの姿になる。

「お供します!」と、カガシもドラゴンに。

「アタシが空から残骸を破壊するけん、おめえは地上を守れ!」

「承知!」

 僕も連れて行ってくれと頼み、トラマルと一緒にガレキに立ち向かった。

「数が多すぎる!」

 このままでは、シンクレーグもボロボロになってしまう。

 と思っていたら、すべてのガレキが謎のブレスによって壊された。キレイさっぱり。

 誰が? 

 大量のドラゴンが、シンクレーグに向かって飛んでくるではないか。

 先頭にいる赤黒いドラゴンが、ひときわデカい。リユの三……いや、五倍くらいはある。

「リユー! 無事かーっ!?」

「お父ちゃん!?」

 ドラゴンを率いていたのは、リユの父親だった。
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