追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

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第六章 最終決戦

第56話 ディータ、最終装備

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「父に聞いてきた。かつてシンクレーグは、テッシムに技術提供をしていた」

 僕の装備やシンクレーグの歴史に関して、レフィーメが説明してくれる。

 共同開発の末に、【魔改造】の理論にたどり着く。しかし、魔力が低いドワーフでは、知識ではわかっていても扱えなかった。魔族であるシンクレーグ王家によって、ドワーフたちの理論は形になったらしい。

「その最終形態が、今ディータが身につけているもの」

 この姿は、魔改造を全身に施した僕そっくりじゃないか。

「ほお、すごいのう。ヒーターシールド以外は、おめえそっくりじゃのう?」

 生まれ変わった僕の姿に、リユも舌を巻く。

「フン! いくらガワをマネたところで、魔王からの贈呈品であるこのアイアンゴーレムを破ることはできませんぞ」

「それはこの武装を破壊してから言って」

「こしゃくな!」

 キルリーズ王が、ゴーレムの拳を飛ばしてきた。

 僕はその場にとどまっただけなのに、鋼鉄のパンチは着弾後、粉々に砕け散った。

「な、なんですと……」

「この装備は、敵の攻撃を構成している素材ごと分解する」

「ならば、魔法はかわせますまい。くらいなさい!」

 あぐらをかいた状態のまま、キルリーズ王が雷撃を放つ。
 上空から、黒い雷撃が落ちてきた。

「愚かな。電撃攻撃が得意なディータに、雷を撃つなんて」

「魔王の力を得た、特別な電気攻撃ですぞ!」

「その回答が、あれ」

 黒い雷は、僕に当たる前に霧散する。

「がああああ!?」

「その玉座、バリナン王様に返してあげなよ」

「黙りなさい! ようやくつかんだこの栄光! おめおめと手放してなるものですか!」

「じゃあ、死ぬよりもっとひどいめにあわせてあげよう」

 僕はヨロイをパーツに分離した。部品がすべて、【電光石火】の魔法を作動する。

「電光……石火!」

 稲妻のヤリが、アイアンゴーレムを刺し貫く。必殺の威力を持つ雷を、無数に撃たれたのだ。ゴーレムが無事で済むはずがない。

 が、鉄の守護者を失ったキルリーズ王は無事だ。腰が抜けているとはいえ、無傷である。

「なにが、死ぬよりひどいめにあうというのです?」

「これからだよ」

「はあ? なにを……はっ!?」

 後ずさるキルリーズ王は、背後にいた南バリナン王にぶつかった。

「あとは、お好きなように」

「ありがとう、ディートヘルム殿下」

 僕たちは結末を見守るでもなく、きびすを返す。
 悲鳴が聞こえたが、犬でも吠えたのだろう。気にするまでもない。



「ありがとう、レフィーメ。おかげで被害は最小限に食い止められた」

「ワタシの功績じゃない。その装備は、テッシム全体の悲願」

「悲願、だって?」

「やっとワタシたちテッシム王家も、この粋に達した。あなたとの出会いによって」

 テッシムは数百年単位で、魔改造の理論をどうにか自身の手で作れないかと、ずっと模索していたらしい。それが、今ここに誕生したのである。

「わたしが開発した【ナイブズ・アウト】も、その一環。ディートリンデにはまるで刃が立たなかったけれど、だからこそ伸びしろができた。ボロボロにされていなければ、さらに飛躍ができなかった」

 破壊された箇所を入念にチェックして、何が足りないのか調べ尽くしたという。
 
 ここからは、バリナンの問題だ。

 僕たちは、自分たちの領土を守るため、最後の戦いに赴く。

「北バリナンで、動きがありました」

 カガシが、僕たちのもとに駆け寄ってくる。

「あのままいくと、カイムーンからエィヒメを襲撃するかと」

「なんじゃと!?」

「幸い、カイムーンに魔王は不在。テッシムとソラドロア、ボニファティウスで、カイムーンを止めている状態です。が、時間の問題でしょう」

 魔王は北にある敵国を、魔族の領土から物量で押しつぶす気だ。

「みんなは全員、シンクレーグの守護と他国のサポートへ行け。エィヒメは故郷じゃ。アタシが北バリナンに行って、魔王を」

「じゃあ、僕はリユについていく。ここから北バリナンへ乗り込む」

 押し切られる前に、頭を潰す。
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