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第五章 魔王の墓へ
第50話 敵の魔王は、カイムーンの国王
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南バリナンが保護したキルリーズの民が、魔王に寝返ったという。
正確には、彼らこそ魔王側のスパイだったらしい。
「カイムーンとキルリーズとの間に、地下水脈があってね。そこから魔物を引き連れて」
「で、カイムーンの軍勢を抑えられず、南バリナンの首都が敵の手に渡ってしまったのよ」
「妻と娘を保護できただけでも、なんとかなったけどね」
問題は、魔王自らが攻め込んできたことだとか。
「魔王の正体は、やはりカイムーンの国王だった」
カイムーン王が魔王となって、首都に直接攻め込んだという。
「彼が助けてくれなければ、ボクは死んでいただろうね」
バリナン国王が、スッキリした顔立ちの青年に手を差し伸べる。
「お初にお目にかかります。カイムーンの王子です」
「どうも、シンクレーグの領主ディートヘルムです」
カイムーンの王子と、あいさつをかわした。
「申し訳ございません、ディートヘルム王子!」
そのとなりで、ソラドロアの王女がボクに土下座をしている。
「過ぎたことなので、構いません。それに、僕も妻を娶ったので」
「ああああああ。お美しいお方で」
ソラドロア王女は、リユにまで頭を下げ続けた。
「頭を上げてください。アタシには過ぎた主人です」
リユも膝を折って、ソラドロア王女を立たせる。
「カイムーンに逃げ込んだ北バリナン貴族は、魔王に対して攻撃的だったのでは?」
魔族と積極的に戦う姿勢を取っていたのは、北バリナンだ。敗戦してさらに北へ逃げ込み、彼らは小国カイムーンを建国する。
「昔の話だ。今は積極的に、魔族と取引をしている」
魔族に取って代わられたのではないか、とのこと。
「父の様子は、数日前から変わりました。ボニファティウスともことを構えるかもしれません」
「そのために、まずはバリナン、そしてボニファティウスを挟み込もうと」
全領土制覇に、巨大な王都ボニファティウスはもっとも邪魔だ。
バリナンを制圧したことで、港を抑えている。どこからでも、ボニファティウスを攻撃できてしまう形だ。
「わかった。テッシム・ソラドロアと連携して、ボニファティウスには防御に徹してもらおう」
「連絡役を仰せつかります。せめて、罪滅ぼしをさせてください」
王女が、役割に名乗り出る。
「いいえ。私が行きます。長女ですから。ついでに、夫もかくまってもらうわ」
「ですが」
「あなたは、自国の領土を守ってちょうだい。その方が、ボニファティウスを抑えられる」
「承知いたしました! たとえ消し炭になっても、王子の故郷をお守りいたします!」
ドンと、王女が胸を叩く。鼻息も荒い。
「では、さっそく帰ります! 王子、壁役はおまかせを!」
「頼もしいです。この際、わだかまりはなしで行きましょう」
僕が伝えると、王女は覚悟を決したような表情に。
「ディートヘルム殿下、ご武運を」
「そちらもどうかご無事で」
カイムーン王子とともに、ソラドロア王女は去っていった。
「これから、忙しくなるぞ。まずはテッシムへ連絡だ。レフィーメ、頼めるか?」
レフィーメへ、僕は指示を送る。
だが、レフィーメは首を振った。その目は、なにかを決意しているような感じである。
「ディータの防具について、アイデアがある。一人にしてほしい」
丹精込めて作った剣をあっさり破壊されて、思いついたらしい。
「……わかった。レフィーメは急いで、僕のヨロイを修復してくれ。カガシ、お願いできる?」
僕が指示を出すと、カガシはすぐにテッシムへ向かってくれた。
「ヘニーは周囲の警護を。冒険者と連携して、特に農園などのライフラインの守護。アリ一匹も通すな」
「はいっ」
妖精とイノシシを召喚し、ヘニーはすぐに現場へ急行する。
「アタシは、なにをすればええんじゃ?」
「まずは姉さんを連れて、ボニファティウスで打ち合わせだ。姉さんの警備を頼みたい。その後、南バリナンへ乗り込もう」
正確には、彼らこそ魔王側のスパイだったらしい。
「カイムーンとキルリーズとの間に、地下水脈があってね。そこから魔物を引き連れて」
「で、カイムーンの軍勢を抑えられず、南バリナンの首都が敵の手に渡ってしまったのよ」
「妻と娘を保護できただけでも、なんとかなったけどね」
問題は、魔王自らが攻め込んできたことだとか。
「魔王の正体は、やはりカイムーンの国王だった」
カイムーン王が魔王となって、首都に直接攻め込んだという。
「彼が助けてくれなければ、ボクは死んでいただろうね」
バリナン国王が、スッキリした顔立ちの青年に手を差し伸べる。
「お初にお目にかかります。カイムーンの王子です」
「どうも、シンクレーグの領主ディートヘルムです」
カイムーンの王子と、あいさつをかわした。
「申し訳ございません、ディートヘルム王子!」
そのとなりで、ソラドロアの王女がボクに土下座をしている。
「過ぎたことなので、構いません。それに、僕も妻を娶ったので」
「ああああああ。お美しいお方で」
ソラドロア王女は、リユにまで頭を下げ続けた。
「頭を上げてください。アタシには過ぎた主人です」
リユも膝を折って、ソラドロア王女を立たせる。
「カイムーンに逃げ込んだ北バリナン貴族は、魔王に対して攻撃的だったのでは?」
魔族と積極的に戦う姿勢を取っていたのは、北バリナンだ。敗戦してさらに北へ逃げ込み、彼らは小国カイムーンを建国する。
「昔の話だ。今は積極的に、魔族と取引をしている」
魔族に取って代わられたのではないか、とのこと。
「父の様子は、数日前から変わりました。ボニファティウスともことを構えるかもしれません」
「そのために、まずはバリナン、そしてボニファティウスを挟み込もうと」
全領土制覇に、巨大な王都ボニファティウスはもっとも邪魔だ。
バリナンを制圧したことで、港を抑えている。どこからでも、ボニファティウスを攻撃できてしまう形だ。
「わかった。テッシム・ソラドロアと連携して、ボニファティウスには防御に徹してもらおう」
「連絡役を仰せつかります。せめて、罪滅ぼしをさせてください」
王女が、役割に名乗り出る。
「いいえ。私が行きます。長女ですから。ついでに、夫もかくまってもらうわ」
「ですが」
「あなたは、自国の領土を守ってちょうだい。その方が、ボニファティウスを抑えられる」
「承知いたしました! たとえ消し炭になっても、王子の故郷をお守りいたします!」
ドンと、王女が胸を叩く。鼻息も荒い。
「では、さっそく帰ります! 王子、壁役はおまかせを!」
「頼もしいです。この際、わだかまりはなしで行きましょう」
僕が伝えると、王女は覚悟を決したような表情に。
「ディートヘルム殿下、ご武運を」
「そちらもどうかご無事で」
カイムーン王子とともに、ソラドロア王女は去っていった。
「これから、忙しくなるぞ。まずはテッシムへ連絡だ。レフィーメ、頼めるか?」
レフィーメへ、僕は指示を送る。
だが、レフィーメは首を振った。その目は、なにかを決意しているような感じである。
「ディータの防具について、アイデアがある。一人にしてほしい」
丹精込めて作った剣をあっさり破壊されて、思いついたらしい。
「……わかった。レフィーメは急いで、僕のヨロイを修復してくれ。カガシ、お願いできる?」
僕が指示を出すと、カガシはすぐにテッシムへ向かってくれた。
「ヘニーは周囲の警護を。冒険者と連携して、特に農園などのライフラインの守護。アリ一匹も通すな」
「はいっ」
妖精とイノシシを召喚し、ヘニーはすぐに現場へ急行する。
「アタシは、なにをすればええんじゃ?」
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