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第五章 魔王の墓へ

第49話 南バリナン、堕つ!

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 僕の周りに、粒状に光った精霊たちが集まってくる。

「さっすが、ディートリンデ・ボニファティウスの孫だね。ご先祖も大満足」

 先祖? そうか。この精霊たちはすべて、シンクレーグを守っていた僕の先祖たちだったのか。

「あなたが、初代ディートリンデ?」

「まあ、そんな感じ? 言うなれば、英霊かな?」

 各世代のディートリンデの思念集合体だと、説明をしてくれた。つまり、僕もいずれは彼らの仲間入りをするらしい。

「ディートヘルム、キミにはご先祖から、『よくできたで賞』をあげよう」

「具体的には……」

 祖母の魔改造スキルはいただいた。それだけでも、たいしたごほうびである。

「こいつかな?」

 ズゾゾ、と地面が盛り上がった。地面から、サーベルが生えてくる。といっても、刃がない。鞘と、柄のみである。コイン状態の丸い刃が、四枚くっついているだけ。

「これは【フォース・エスパーダ】。我がシンクレーグ領土の宝剣だよ」

 大昔にテッシムでドワーフが作ったとされる、宝剣らしい。

「使い方は?」

「キミのお友だちに聞くといい」

 それだけ言い残して、精霊たちは天へと昇っていった。

「ありがとう。祖母と話せてよかった」

 僕の視界が、光に包まれる。

「……タ、ディータ! 起きんか!」

 リユに揺さぶられて、僕は目を覚ます。

「え、リ、ユ?」

 手が、暖かく柔らかい感触のものを握っている。

 てっきり、僕はサーベルを掴んでいるものだと思っていたが。

 僕が握っていたのは、リユの豊満なバストだった。

「ダンナ様とはいえ、往来でなんちゅうことをするんかのう?」

「ご、ごめん! でも、僕どうして?」

「おめえ、急にうつ伏せに倒れだしたから、慌てて抱きとめたんぞ!」

 つまり、あの霧状の入口に入った途端、僕は気を失ったわけか。

「じゃあ、さっきの戦闘も、もらった武器も全部、幻?」

「そうでもないみたい」

 レフィーメが、僕の腰辺りを指差す。

 そこにはしっかりと、フォース・エスパーダが。おまけに、【ナイブズ・アウト】は砕けてしまっている。

「すまない。せっかくつくってくれたのに」

「作り直したらいい。それより、その武器最高!」

 興奮しながら、レフィーメが僕の新しい武器に興味を示した。

「ドワーフなら、使い方がわかるだろうって」

「わかるもなにも、これはウチの先祖が作って、未だに超えられない逸品」

 レフィーメが、武器を展開した。サーベルだった刀身が、大剣へと変わる。

「魔力の込め具合で、武器の形状が変わる」

「なるほど。刀身どうしを魔力でくっつけるのではなく、刀身を魔力で形成するのか」

 で、武器の形が自由自在になると。コイン状の刃は、魔力を安定化させるための繋ぎ目の役割を果たしているわけだ。

「わたしたちドワーフの技術で、作れないはず。これはシンクレーグにしかない発想」

 シンクレーグの技術力に、レフィーメも舌を巻く。

「さあ、帰ろう。ナイブズアウトも修理しないと」

 街へ戻ると、機動執事トラマルが屋敷から飛び出してきた。

「大変でございます。早く中へ!」

 いつも冷静なトラマルが、やけにテンパっている。

「どうし……姉さん!?」

 大広間には、お腹に重症を負った南バリナンの王が。

 側には、僕の姉さんと娘が。

「やられた。南バリナンが、敵の手に堕ちたよ」
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