40 / 63
第四章 海賊退治と黒幕
第40話 黒幕は誰だ?
しおりを挟む
国がひとつ消滅って、物騒だな。
さっきまで僕にしがみついていたリユでさえ、身体を自然と離す。
「崩壊とかじゃなくて、消滅なんだ」
「そう。ドカーンと一発で」
アルビーナ姉さんから、写真を見せてもらった。壊滅したキルリーズが、痛々しい。
「魔王がやったのか?」
「多分」
王城だけではなく、住民にも死傷者が多数出ているらしい。
「ひどいのう」
調査資料を見て、リユも苦い顔をした。
「生存者はバリナンで保護しているけど、国が一個なくなっちゃったからね。どうしようかと」
ただでさえバリナンは、二つの国を管理するようになったばかりだ。そこにもう一国分の国力が必要となると、骨が折れるだろう。
「復旧作業を、シンクレーグも手伝います」
ちょうど、幽霊船で得た財宝も持て余していたところだ。存分に活用しよう。
「ですが、そんなピンポイントに国を滅ぼせるなんて。キルリーズって、そんなに派手な活動をしていましたか?」
ヘニーが手を上げて、アルビーナ姉さんに問いかける。
「どちらかというと、裏工作担当よ。表舞台に立つような存在では、ないわね」
「では、用なしになって処分されたと」
「一連の工作活動が失敗に終わって、処理されたんでしょうね」
姉さんはいうが、僕の考えは違う。
「魔族さえ利用していることが、バレたんじゃ?」
「たしかにそうね。従属しているとはいえ、可能な限り対等な関係にまでもっていきたかったはず。ことごとく失敗しまくったけど」
ピドー王や娘のペカディア姫などは、イケニエに捧げられたのでは。
「ヒューテインも国や住民をイケニエにして、力を得ていた。だがキルリーズは、元のままだったみたい。従うフリをして、反抗を画策していた?」
生存者である王族関係者から、聞いた話だそうだ。
もちろん、善行に目覚めたわけではない。自分たちで魔族を支配しようと考えていたという。無謀な作戦だが。
「しかし、どこからか情報が漏れて、発覚した。それゆえに処刑されたと」
「そう考えたら、辻褄が合うわね」
「情報漏洩の出どころに、心当たりは?」
「一つだけ」
姉さんが指を一本立てる。
「問題です。この三国が壊滅して一番得をする国はどーこだ?」
「ウチじゃ。シンクレーグじゃろ?」
リユの回答に、姉さんは「ブッブー」と、両手でバツを作った。
「たしかに目の上のコブは、消え去るわ。でも、シンクレーグは直接のダメージを負っていたわけじゃない」
バリナンと直接交易していたから、僕たちのほうが優位に立っている。彼らが欲しがっていた、海も手に入れていたし。
「大ヒント。ねえカガシちゃん、あなたはさる国からシンクレーグの領主の悪評を聞いて、バリナン経由でシンクレーグに来たんだよね?」
「え、ええ。シンクレーグの領主は、エィヒメの令嬢をそそのかしていると」
なんだそれ、初めて聞いたぞ!
「その悪評を、どこから聞いたのかな?」
「北東。カイムーン王からの伝達で」
カイムーン!
「僕が婚約破棄された、原因になった国じゃないか!」
ソラドロアの姫が僕との結婚を解消したのは、カイムーンの王子と結婚するためだった。
さっきまで僕にしがみついていたリユでさえ、身体を自然と離す。
「崩壊とかじゃなくて、消滅なんだ」
「そう。ドカーンと一発で」
アルビーナ姉さんから、写真を見せてもらった。壊滅したキルリーズが、痛々しい。
「魔王がやったのか?」
「多分」
王城だけではなく、住民にも死傷者が多数出ているらしい。
「ひどいのう」
調査資料を見て、リユも苦い顔をした。
「生存者はバリナンで保護しているけど、国が一個なくなっちゃったからね。どうしようかと」
ただでさえバリナンは、二つの国を管理するようになったばかりだ。そこにもう一国分の国力が必要となると、骨が折れるだろう。
「復旧作業を、シンクレーグも手伝います」
ちょうど、幽霊船で得た財宝も持て余していたところだ。存分に活用しよう。
「ですが、そんなピンポイントに国を滅ぼせるなんて。キルリーズって、そんなに派手な活動をしていましたか?」
ヘニーが手を上げて、アルビーナ姉さんに問いかける。
「どちらかというと、裏工作担当よ。表舞台に立つような存在では、ないわね」
「では、用なしになって処分されたと」
「一連の工作活動が失敗に終わって、処理されたんでしょうね」
姉さんはいうが、僕の考えは違う。
「魔族さえ利用していることが、バレたんじゃ?」
「たしかにそうね。従属しているとはいえ、可能な限り対等な関係にまでもっていきたかったはず。ことごとく失敗しまくったけど」
ピドー王や娘のペカディア姫などは、イケニエに捧げられたのでは。
「ヒューテインも国や住民をイケニエにして、力を得ていた。だがキルリーズは、元のままだったみたい。従うフリをして、反抗を画策していた?」
生存者である王族関係者から、聞いた話だそうだ。
もちろん、善行に目覚めたわけではない。自分たちで魔族を支配しようと考えていたという。無謀な作戦だが。
「しかし、どこからか情報が漏れて、発覚した。それゆえに処刑されたと」
「そう考えたら、辻褄が合うわね」
「情報漏洩の出どころに、心当たりは?」
「一つだけ」
姉さんが指を一本立てる。
「問題です。この三国が壊滅して一番得をする国はどーこだ?」
「ウチじゃ。シンクレーグじゃろ?」
リユの回答に、姉さんは「ブッブー」と、両手でバツを作った。
「たしかに目の上のコブは、消え去るわ。でも、シンクレーグは直接のダメージを負っていたわけじゃない」
バリナンと直接交易していたから、僕たちのほうが優位に立っている。彼らが欲しがっていた、海も手に入れていたし。
「大ヒント。ねえカガシちゃん、あなたはさる国からシンクレーグの領主の悪評を聞いて、バリナン経由でシンクレーグに来たんだよね?」
「え、ええ。シンクレーグの領主は、エィヒメの令嬢をそそのかしていると」
なんだそれ、初めて聞いたぞ!
「その悪評を、どこから聞いたのかな?」
「北東。カイムーン王からの伝達で」
カイムーン!
「僕が婚約破棄された、原因になった国じゃないか!」
ソラドロアの姫が僕との結婚を解消したのは、カイムーンの王子と結婚するためだった。
0
お気に入りに追加
386
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる