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第四章 海賊退治と黒幕
第39話 嫁の決意
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「リユ、なにを?」
唇が離れた直後に、僕はリユに尋ねる。
「なにって。しょげた顔したダンナ様に、ちょいとカツを入れたんです」
「……これ以上、僕を好きにならないで。別れが辛くなる」
「別れですかい。なんか尋常じゃねえのう」
僕は、ワケをちゃんと話す。
「ほうか。それでディータ、あんたはぜーんぶ一人で背負い込んでいじけとる、っちゅうことですか? アタシらをほっぽりだして、一人で魔王軍に挑もうと」
「いじけてるだなんて! 僕は色々考えて結論を――」
「その結論を、急ぎ過ぎなんやありませんかい?」
リユも言い方が、乱暴だ。しかし、僕を責める口調ではない。
「なんでもっと、アタシらを信頼してくれんのです? あたしはそんなわからず屋と結婚したつもりはござんせん」
「僕は……」
「今のアンタ、あんときのアタシみたいじゃ」
言われて、ハッとなった。
「初めて会ったとき、キミは一人で旅しようとしていたね」
「そうじゃ。でも、そばにおってええって言うてくれたんは、ディータ、あんたじゃ」
「リユ」
「考えるのは勝手じゃが、考えすぎるんも袋小路になるんぞ。不満とか不安があるんなら、外へ吐き出さんかいっ」
「そうですよ!」と、ヘニーもリユの加勢に入る。
「わたしは、領主さまの能力に救われたんですよ!」
「ワタシも」
たしかにヘニーもレフィーメも、僕が魔改造を駆使して救出した。
「それがしは、あなたが悪者ではないと、剣を交えて理解しました」
いやカガシ、あんた殺意丸出しだったよ。まあいっか。
「いいかい。こっから先は、僕がいたら巻き添えを食うことになる。僕のせいで、犠牲者が出るかもしれない」
「とっくに巻き込まれていますよ! その上で、わたしはあなたについていくと言っているんです!」
ヘニーから、意思の強い言葉が。
レフィーメたちも、無言でうなずいている。
「あなたが関わってくれなければ、ワタシたちはとっくに魔物たちの腹の中」
「いかにも。それがしも領主殿と会わなければ、リユお嬢様の行方もわからぬまま、バリナンの犬として生涯を終えるところでした。稼ぎはあちらのほうがよかったのですが」
おい。
「それにのう、おめえさんがいなくなったら、シンクレーグはそれこそ蹂躙されっぞな。領主様がおらんなったって話になれば、邪魔者はおらんけんな。そんな想像力もないなったんか?」
「でも、みんなは怖くないのか?」
「アタシらは、おめえを失うほうが怖いのう。また一人ぼっちかーってな」
「リユ!」
「アタシは!」
僕の胸ぐらをつかみ、リユは壁にまで追い詰めた。
「アタシらは! おめえが領主様じゃとか、魔王の力を持っているからとかで、そばにおるんじゃねえ! おめえがただのディータじゃから、一緒におるんじゃ!」
「だけど!」
「おめえだって、アタシをどういう言わんじゃろうが! ドラゴンとか、東洋のお姫様じゃとか!」
「うう……」
「アタシは好きに生きるんじゃ。好きなアンタの、そばにずっとおる! 誰にも、邪魔させんからの」
これはもう、言っても聞かない。
リユは自分の考えで、生き死にを決断するだろう。
「わかったよ。ありがとうリユ」
僕は、リユを抱き寄せた。
リユも、僕をきつく抱きしめる。
「仲直りできたぁ?」
ドアを開けて現れたのは、アルビーナ姉さんだ。彼女は現在、南バリナンの王妃である。
「姉さん!?」
「やっほー。オヤジに呼ばれてきたよー」
ヤバイところを見られた。
「離れて、リユ」
「イヤじゃイヤじゃ」
「離れてってば、もう!」
こうなったら、リユは言うことを聞いてくれない。
「そのままでいいよ、今日は報告だけ」
「どうしたの?」
「南東諸国最後の砦、海賊の根城と言われたキルリーズが……消滅したの」
唇が離れた直後に、僕はリユに尋ねる。
「なにって。しょげた顔したダンナ様に、ちょいとカツを入れたんです」
「……これ以上、僕を好きにならないで。別れが辛くなる」
「別れですかい。なんか尋常じゃねえのう」
僕は、ワケをちゃんと話す。
「ほうか。それでディータ、あんたはぜーんぶ一人で背負い込んでいじけとる、っちゅうことですか? アタシらをほっぽりだして、一人で魔王軍に挑もうと」
「いじけてるだなんて! 僕は色々考えて結論を――」
「その結論を、急ぎ過ぎなんやありませんかい?」
リユも言い方が、乱暴だ。しかし、僕を責める口調ではない。
「なんでもっと、アタシらを信頼してくれんのです? あたしはそんなわからず屋と結婚したつもりはござんせん」
「僕は……」
「今のアンタ、あんときのアタシみたいじゃ」
言われて、ハッとなった。
「初めて会ったとき、キミは一人で旅しようとしていたね」
「そうじゃ。でも、そばにおってええって言うてくれたんは、ディータ、あんたじゃ」
「リユ」
「考えるのは勝手じゃが、考えすぎるんも袋小路になるんぞ。不満とか不安があるんなら、外へ吐き出さんかいっ」
「そうですよ!」と、ヘニーもリユの加勢に入る。
「わたしは、領主さまの能力に救われたんですよ!」
「ワタシも」
たしかにヘニーもレフィーメも、僕が魔改造を駆使して救出した。
「それがしは、あなたが悪者ではないと、剣を交えて理解しました」
いやカガシ、あんた殺意丸出しだったよ。まあいっか。
「いいかい。こっから先は、僕がいたら巻き添えを食うことになる。僕のせいで、犠牲者が出るかもしれない」
「とっくに巻き込まれていますよ! その上で、わたしはあなたについていくと言っているんです!」
ヘニーから、意思の強い言葉が。
レフィーメたちも、無言でうなずいている。
「あなたが関わってくれなければ、ワタシたちはとっくに魔物たちの腹の中」
「いかにも。それがしも領主殿と会わなければ、リユお嬢様の行方もわからぬまま、バリナンの犬として生涯を終えるところでした。稼ぎはあちらのほうがよかったのですが」
おい。
「それにのう、おめえさんがいなくなったら、シンクレーグはそれこそ蹂躙されっぞな。領主様がおらんなったって話になれば、邪魔者はおらんけんな。そんな想像力もないなったんか?」
「でも、みんなは怖くないのか?」
「アタシらは、おめえを失うほうが怖いのう。また一人ぼっちかーってな」
「リユ!」
「アタシは!」
僕の胸ぐらをつかみ、リユは壁にまで追い詰めた。
「アタシらは! おめえが領主様じゃとか、魔王の力を持っているからとかで、そばにおるんじゃねえ! おめえがただのディータじゃから、一緒におるんじゃ!」
「だけど!」
「おめえだって、アタシをどういう言わんじゃろうが! ドラゴンとか、東洋のお姫様じゃとか!」
「うう……」
「アタシは好きに生きるんじゃ。好きなアンタの、そばにずっとおる! 誰にも、邪魔させんからの」
これはもう、言っても聞かない。
リユは自分の考えで、生き死にを決断するだろう。
「わかったよ。ありがとうリユ」
僕は、リユを抱き寄せた。
リユも、僕をきつく抱きしめる。
「仲直りできたぁ?」
ドアを開けて現れたのは、アルビーナ姉さんだ。彼女は現在、南バリナンの王妃である。
「姉さん!?」
「やっほー。オヤジに呼ばれてきたよー」
ヤバイところを見られた。
「離れて、リユ」
「イヤじゃイヤじゃ」
「離れてってば、もう!」
こうなったら、リユは言うことを聞いてくれない。
「そのままでいいよ、今日は報告だけ」
「どうしたの?」
「南東諸国最後の砦、海賊の根城と言われたキルリーズが……消滅したの」
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