追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

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第三章 住民のおかげで街の発展がはかどりすぎて怖い

第28話 海賊退治とニンジャ

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「では、我々はこれで」

「帰りは、ウチの船を使うかい? 安全なルートを回るよ。こっちだって、やられっぱなしではいられない。ちゃんと対策をしてある。問題ない海路でお返しするつもりだ」

「いえ。丈夫な船を一隻譲っていただければ、あとは自力で帰ります」

 バリナン王の顔が、真面目になる。

「帰るついでに、海賊でも狩るつもりかい?」

「はい。我々には、船がありませんので」

 僕たちは、海賊に舐められてはいけない。

 海路は自分たちで開拓する。

「わかった。海側からのキャンディー流通ルートを、確保してくれるかい?」

「おやすい御用です」

 アイスキャンディーには、それだけの価値があると踏んでくれたのか。

 用意してもらった小型蒸気船に、みんなで乗り込む。

「じゃあ最後に、ひとついいことを教えてあげよう。リユちゃんだっけ? キミの正体は、さる筋から聞いたんですよ」

「王様、それは、どういう意味ですかいの?」

「じきにわかりますよ。じゃ、頼んだよ」

 国王に見送られながら、船で海路を渡った。

「わあ、すごい。ディータさま、わたし、お船なんて初めてですぅ」

 ヘニーが何度も、船の端を外周する。

 リユは慣れているのか、船にもたれながらくつろいでいた。

「ドワーフは、陸の神に仕える種族。海は得意ではない」

 レフィーメは海が苦手なのか、おっかなびっくりで落ち着きがない。

「湖はあるだろ?」

「あれは陸と続いているから、ノーカン。でも、海は陸と離れている」

「海底にだって火山はある。サンゴを加工して、マジックアイテムに変える種族もいるだろう」

 実際、そういった加工アイテムが、バリナンで売られていた。かなりの高値だったが。

「これじゃろ? ありがとう、ダンナ様」

 僕はリユに、パールの指輪を買ってあげたのだ。マジックアイテムとしてなんだが、僕たちは一応夫婦である。ペアの品がないとしまらないかなと思ったのだ。

「キレイじゃ。真珠をイルカが咥えているってのが、おシャンでええのう」

 平和的シャンティか。平和な日が来るといいけど。

 ヘニーが、急に立ち止まった。

「あれはなんでしょう?」

 海の向こうで、煙が上がっているようだが。

「……商業船が燃えてる!」

 望遠鏡で、遠くの海を確認した。

 さっそく、おでましか。

「あれは、ボニファティウスに向かう船じゃ! 奴ら、ボニファティウスを弱体化させるつもりかのう?」

「かもしれない」

 僕の故郷に危害を加えるつもりなら、容赦しない。

「全力で退治に向かう。いいか?」

「もちろんじゃ! 新武器のサビにしちゃる」

 みんな、気合十分のようだ。

 優雅な船旅は、これで終わりか。

 僕たちの蒸気船に、数隻の海賊船が迫った。

「三隻来たぞ! ディータ!」

「かかってこい。【電光石火】!」

 僕はサーベルのリーチを伸ばし、船の動力部にダメージを与える。

 ヘニーが妖精を召喚して、一斉射によって海賊の弓兵を葬った。

 まずは一隻、完全に無力化する。

「かかってこいや、おらあああ!」

 リユが、海賊船の一隻に飛びかかった。なんつー跳躍力だ。海に落ちるのが怖くないのか?

 剣に炎をまとわせ、リユはそのまま剣を振り下ろした。

 船が真っ二つに。

「もう一隻!」

 残骸を足場に飛び上がり、リユは最後の船に。

 だが、海賊船の砲台が、リユの方へ。

 ジャンプしたままの状態で、リユは方向転換できない。あれではいい的だ。

「待ってろリユ! 電光石火!」

 僕はさらに、サーベルを伸ばした。

「サーベルを足場にしろ!」

「おう!」

 リユが、僕のサーベルに足を置く。

「そりゃ!」

 剣を振って、僕はリユを誘導した。

 砲撃はそれて、リユには当たらない。

「そらそらそらぁ!」

 サーベルを伝って、リユが海賊船に乗り込んだ。海賊たちを切り捨てる。

 商業船までもうすぐというあたりで、レフィーメが海賊船を指差す。

「待って。誰かが一人で戦っている」

 海賊を相手に、女の子が戦っていた。

「ニンジャ。ローグの東洋版ですね」と、ヘニーが分析する。

 ローグとは暗殺などを生業とする、戦闘力にスキルを寄せたシーフだ。
 ニンジャは、それをより攻撃的にした、東洋独特のジョブをいう。

「あれは、カガシ!」

 リユがカガシと呼ぶ少女が、こちらを見る。見た感じ、ミニスカニンジャという印象である。

「お前は……覚悟!」

 突然、ニンジャのカガシが僕に襲いかかってきた!

 なんで!?
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