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第三章 住民のおかげで街の発展がはかどりすぎて怖い

第25話 キメラモンスターとアイスキャンディー

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 魔物が、家畜を襲っている。

 カニとカブトムシが合体したような、巨大生物だ。大型の馬車より大きい。

「あれが、ジャイアントビートルか」

「装甲が並外れている」

 レフィーメの説明だと、あの装甲は少々の魔法や物理攻撃なら跳ね返すという。

「ディータさま、わたしが先行します!」

 ヘニーが、妖精たちに射撃指示を送る。

 しかし妖精たちが放った矢は、弾かれてしまった。

「なるほど、固そうだ!」

「固いんなら、溶かせばよかろうが」

 剣から炎を巻き上げながら、リユが斬りかかる。

 魔物は、ハサミで応戦した。

「おお、思っておるよりすばしっこいぞ!」

 リユの剣戟を、魔物はたくみに捌く。ずんぐりむっくりした見た目に反して、反応速度がすごい。

「魔法を弾くらしいが、リユの魔法攻撃すらも通じないとは」

「強化されてる。おそらく魔族が改造した、局地戦闘型みたい」

「任せろ!」

 僕は、サーベルを抜く。

「リユ、僕が弱点を見つけ出す。それまで持ちこたえてくれ」

「おう!」

 装備の威力を見せてやる!

 まずは、動きを封じねば。

 剣を蛇腹状に伸ばして、足の一本に絡みつかせた。そのまま、足をもぐ。

「関節は、案外脆いぞ!」

 あれだけのスピードを出すには、関節部を軽量化する必要があったのかも。

 とはいえ、そうそうこちらの作戦がうまくいくはずがない。すぐに対処され、攻撃をよけられる。

「後ろにも目がついているのか、こいつは?」

 リユと戦いながら、器用にこちらにも応戦してくるとは。

「レフィーメは……あそこか!」

 地面に魔法で穴を彫り、レフィーメは魔物を沈めた。

 動きを封じれば、こちらのものだ。

 関節部を狙い、ズタズタに切り刻む。

「ふう。ありがとうレフィーメ」

「問題ない。素材を回収したいだけ。ドワーフの攻撃すら受け止める装甲には、興味がある」

「そうか」

 こういった逸品こそ、ドワーフにとっては至極の報酬かもな。

「被害状況は?」

 ここではチーズを作るため、酪農をしている。家畜に死なれたら大変だ。

「問題ありません。氷魔法で、ミルクへの被害も抑えられています」

 普段はミルクを魔法で固めて、売りに行くのだという。

「これなら保存がききますから、魔法使いを一人同行させるのです」

「ほうか。どれどれ」

 リユが、ミルクにかじりつく。

「溶かさずにそのまま食べるとか、ワイルドだな」

「やや、うまいぞ。おめえもやりな」

 固いミルクを鷲掴みにして、リユがこちらへ差し出した。

「たしかにうまい!」

「これ、お砂糖がほしいですね」

「いいアイデアだ、ヘニー。採用しよう」

 アイテムボックスにあった砂糖を少々まぶすと、最高にうまい。

「これは売れる。キャンディーみたい」

 レフィーメも、この氷ミルクに可能性を見つけたようだ。

「いいな。このおやつは、アイスキャンディーと名付ける」

 僕は、農家を呼び出す。

「これからは、砂糖を加えて一口サイズに固めろ。それで売ってしまえ」

「はっ」

 売り込み遠征の時は、僕たちも同行することにした。このアイスキャンディーを、南バリナンへ売りに行く。

 ちょっと、バリナンにはあいさつをしておきたかったところだ。

 新しい物好きなバリナンにとって、このキャンディーはいい土産になるだろう。
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