追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

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第三章 住民のおかげで街の発展がはかどりすぎて怖い

第24話 ドワーフ特製の装備

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 僕たちの装備ができ上がるまでは、かなり時間がかかる。ひたすら、あちこちのダンジョンへ潜って調査を続けた。軽めのダンジョンを攻略して、とにかく陣地を拡大する。装備の材料になる鉱石の採掘も、忘れない。

 装備がいつもより貧弱なのが、もどかしいが。

「これは、使えそうか?」

 鉱石を掘っては、レフィーメに鑑定してもらう。

「あなたたち用では、弱い。他の冒険者には使えそう」

「じゃあ、冒険者用に持ち帰ろう」

 結構、値が張りそうな魔力を秘めている。しかし、ドワーフからすると純度が低いとか。

「こっちは?」

 さっきの鉱石より、やや小さめの石をレフィーメに渡す。

「そっちは、アクセサリに使える。ぜひとも、持って帰りたい」

「わかった。ほら」

 指で摘める程度の、石なのに。鉱石ってのは、わからないものだ。

「レフィーメ、コイツはどうじゃ?」

 リユが持ってきたのは、モンスターの死体である。翼の生えたサーベルタイガーだ。牙が鉱石として使えないかと、持ってきたらしい。

「あっちで、ヘニーガ仕留めたんじゃ。どうじゃろう?」

 こめかみに、魔法で撃ち抜かれた跡があった。

「うん。このモンスターは亜種。牙もレアに等しい。持って帰る」

 レフィーメが、驚いている。

「よし。ディータよ、お互いお手柄じゃ。ヘニーもな」

「ありがとうございます。リユさま」

 このメンバーでは、ヘニーがもっとも装備に依存しないファイトスタイルを持つ。お供のモンスターが、めまぐるしい活躍をしてくれた。弱めのモンスターなら、量産した召喚獣で片付けられるだろう。まあ弱いダンジョンに潜っている目的は、召喚獣たちのレベル上げだからね。

「しかし、安心はできない。この魔物はキメラ。改造されている」

 つまり、こういう改造を魔物に施す魔族がいると、同義なのだ。

「向こうも、強敵を配置しているわけか」

「装備の強化を急ぐ」

 工房へと帰り、レフィーメが装備を強化にかかる。

「特に、リユを優先する」

 リユは戦闘において、スキルよりフィジカルを重視していた。もともとドラゴンなため、たいしてスキルを必要としない。たいてい、筋力で片がつく。よって、装備品で実力が左右される。

「ハンパな装備では、アタシの腕力が勝ってしまうでのう。やりづらかろうて」

「器用さを重視しなくて済む相手は、比較的楽」

 ひたすら頑丈に作ればいいので、あまり繊細さが求められないからだ。

「どう? わかりやすいコンセプトにしてみたけど?」

 レフィーメが、太刀をリユに渡す。

 僕が魔改造した大剣と、ゴツゴツさは変わらない。だが、丁寧さは僕を遥かに上回る。

「ふむふむ。ええのう。ディータが作ったものを、ここまで強化してくれるとはのう」

 威力が五倍近くあるのに、振る力が三分の一でいい。

「魔力石の密度を上げたんじゃな?」

「そう。あなたは、力任せに剣を降っているわけじゃない。攻撃の際に、魔法を乗せている。だから魔力石や魔法の鉱石を大量に仕込んで、攻防一体の剣に仕上げた」

 説明を受けながら、リユは太刀を自分の手になじませていく。

 紫色のドレスアーマーにも、篭手が追加された。腕までカバーして、篭手全体にも魔法石が散りばめられている。

 ヘニーの新装備は、緑色のローブだ。これで、より魔法使いらしくなる。武器は杖にチェンジした。『はてなマーク』のようなデザインは、そのままにしている。だが、触媒の宝石が大きい。

「ありがとうございます。力がみなぎりそう」

 最後に、僕の服とサーベルだ。

「ほう、男前が上がったのう」

 僕の戦闘服を見て、リユがお世辞を言う。

「あなたは雷魔法を使うイメージだった。黄色で攻めている」

 中央の黄色い魔法石からは、稲妻が常に走っている。

 サーベルは、ペーパーナイフを薄い歯車でつなぎ合わせたような、独特のデザインだ。

「武器名は、【矛先ナイブズ・アウト】。あなたの剣は蛇腹剣だったので、多節棍の応用」

 剣が蛇腹状に広がる意匠はそのままに、さらなる珍妙な動きが可能となった。

「ナイブズ・アウトか。ナイフとナイフのつなぎ目に、グレーターデーモンの目を使っているのか?」

「あの化け物をどうやって倒したのかは、あえて聞かないけど」

 僕も、説明しづらい。

「ディータ。お前さん、さらに凶悪な力が手に入ったのう」

「うん。これなら……」

 どこかで試し切りができないかと思っていたときに、農民が研究室へ入ってくる。

「領主ディータ様! 北の農村で、昆虫型のデカい魔物が暴れています!」

「特徴は?」

「カニのハサミが両手についた、カブトムシです!」

 農民の言葉に、すかさずレフィーメが「ジャイアントビートル」と答えた。

「魔物に魔族が改造を施した、キメラモンスター。おそらく、この国を攻撃に来た」

「そうか。僕たちが出撃する」

 いい的が、向こうから来てくれた。
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