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第一章 辺境、廃城・ゴーストタウン・悪役令嬢つき
第9話 麻薬農園のアラクネ退治
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「ぬう! バカな! なぜだ。剣の軌道が曲がっただと?」
首の血を押さえながら、騎士が後ずさる。
「このスキルは、【電光石火】という」
雷の属性魔法をまとわせて、剣の先を伸ばしたのだ。
「メタリックジェルの素材と融合させて、剣に伸縮性を持たせたんだ」
「なんと……おのれ。ボニファティウスのガキが、こんなに強いなんて聞いてないっ。ガフウ!」
騎士のマスクが落ちる。
「え、お前は!?」
「くっ! かくなる上は……おお!」
ドシン、ドシンと、何かが近づいてきた。
現れたのは、大型のアラクネである。上半身は人間の姿だが、大木くらいにサイズが大きい。クモのような胴体と、ハサミのついた腕を持つ。腹が異常に膨れていて、中は緑色の液体で満たされていた。
「遅いぞ、アラクネ! 今すぐコイツらを――」
アラクネが不機嫌そうな顔で騎士を腕で挟み、持ち上げる。そのまま、騎士を頭から食べてしまった。
「うるっせえな。睡眠の邪魔だっつーの」
騎士の手だけが、ボトリと落ちる。その指には、彼の国籍と地位を示すリングが。
僕は騎士の手を回収し、アイテムボックスに保管した。これは、重要な証拠になる。
「次はお前たちをいただいちゃおっかなー?」
「やれるもんなら……!?」
アラクネの腹が、透けていた。中には、幼いエルフが眠っている。
「そういえば、森といえばウッドエルフじゃのに、一人もおらなんだ」
「きっとあの子を人質に取られて、麻薬づくりを手伝わされているんだろう」
これだけの規模がある農園を誰も管理していない理由は、これか。おそらくは、村の責任者に関係している子なのだろう。
ならば、解放してやらないと。
「電光石火!」
剣を伸ばす。雷のスキルを発動して、腹のエルフを助け出そうとした。
「面白いスキルを持ってるじゃん! けどさあ!」
丸太のように太い足で、剣を防がれる。
「ディータ! 下半身は任せい!」
リユが、剣に炎をまとわせて、アラクネの足を切り落とす。
「なあ!? このアマ!」
アラクネが、リユを踏み潰そうとした。
「電光石火!」
剣を伸ばして、アラクネの足をとらえる。そのまま足を切断した。
「ちくしょお! 【召雷】!」
アラクネの腹が、光る。中の幼いエルフが苦しみだした。
雷魔法が、僕たちに降り注ぐ。
僕は飛翔して距離を取り、リユは雷を剣で受け止めた。
「あいつ、中のエルフっ子の魔力を、自分のパワーに変換しとる!」
「最悪な奴だな!」
剣から【ファイアアロー】を放ち、アラクネをけん制する。
だが、ロクにダメージが通らない。
リユが、再度アラクネの足に斬りかかった。
「同じ手は食わないよ!」
アラクネが、シッポから糸を放つ。
「くっ!」
リユの足に糸が絡みついた。
「そのまま食っちまおうかね!」
「食えるもんなら食うてみい!」
糸に吊り上げられながら、リユも剣を構える。
「むちゃするな、リユ! 【マジックミサイル】、全弾発射!」
僕は、腕を交差させる。指から、小型のマジックミサイルを放つ。
アラクネに攻撃を浴びせつつ、ミサイルでリユに絡んだ糸を切った。
「ナイスじゃ! 【焔の波】!」
リユが、アラクネの人間部分を切り裂く。
「ぎゃあああ!」
まずい。このままでは少女に引火してしまう。
「電光石火!」
腹の周りを切り取って、少女を包む水を抜く。
「くうう!」
なんと、少女の背中に触手が突き刺さっていた。
アラクネの身体と、融合させられている。
「まずいぞ、リユ! これではアラクネを殺すと、少女も死んでしまう!」
「どないしたらええんじゃ!?」
危機を察知したリユが、剣に付与した火の魔法を消した。
アラクネが息を吹き返し、リユに猛反撃をする。
「僕がなんとかする! 【魔改造】!」
背中に幻影の腕を出して、僕は少女とアラクネを切り離す改造を施した。
魔改造の能力は、未知の知識から新しい物質を作り出すだけじゃない。
作り変えられたものを、元に戻す能力もあるのだ。
「分離!」
アラクネと少女を切り離す。少女を抱き上げて、僕は飛んだ。
「なああああ!?」
エネルギー源だった少女を切り離され、アラクネが一気に干からびていく。
「今だ!」
「よっしゃああ!」
リユが、アラクネの心臓に剣を突き刺した。
「あばああああ!」
アラクネが、断末魔の叫びを上げる。
エルフの少女を片手に持ちつつ、リユの襟をつかんだ。
僕が飛び去った瞬間、アラクネが大爆発を起こす。
魔物の破片が、農園に飛び散った。エルフの血を養分にしていたのだろうか。破片が落ちた地点の植物が活性化する。
「おお。この植物を急成長させる力を使って、麻薬を栽培しとったようじゃのう」
「だろうね……ん?」
僕は、地面に降りた。
エルフの面々が、やつれた顔で僕を見ている。
助け出した冒険者によると、この麻薬農園をムリヤリ管理させられていたらしい。
「この子は無事だ。息はある」
「おお。なんとお礼を言っていいやら」
男性のエルフが、僕に頭を下げる。彼が農園の責任者のようだ。
「では、僕たちに協力してくれ。麻薬農園は解体して、普通の作物を植えてほしい」
「承知した」
「ただ、できあがっている薬草は残して、ポーションの素材に使おう」
毒も、調合次第では薬になる。彼らだって、熟知しているはずだ。
「……はっ。わたしは」
僕の腕の中で、エルフの少女が目を覚ます。
エルフの少女を、腕から下ろした。
「おお、ヘニー。無事か」
「おとうさま。おとうさま!」
ヘニーという少女と、エルフの男性が抱き合う。
「わたしを助けてくださって、ありがとうございました。あなた様は?」
「僕はディータ。ここの領主だ。魔物から、この土地を奪還しに来た」
「ヘニー・デ・フェンテです。エルフを魔物から解放してくださって、本当にありがとうございます。わたしに、なにかお手伝いできることがあったら」
「じゃあ、街まで来てくれ」
「はい!」
ヘニーの父親であるデ・フェンテ氏にも、街まで同行してもらった。
だが、行き先はシンクレーグではない。
「どこまでいくんじゃ? シンクレーグは向こうじゃて」
「ボニファティウス王国に行くんだ。このデフェンテ卿に、シンクレーグを治めてもらう」
首の血を押さえながら、騎士が後ずさる。
「このスキルは、【電光石火】という」
雷の属性魔法をまとわせて、剣の先を伸ばしたのだ。
「メタリックジェルの素材と融合させて、剣に伸縮性を持たせたんだ」
「なんと……おのれ。ボニファティウスのガキが、こんなに強いなんて聞いてないっ。ガフウ!」
騎士のマスクが落ちる。
「え、お前は!?」
「くっ! かくなる上は……おお!」
ドシン、ドシンと、何かが近づいてきた。
現れたのは、大型のアラクネである。上半身は人間の姿だが、大木くらいにサイズが大きい。クモのような胴体と、ハサミのついた腕を持つ。腹が異常に膨れていて、中は緑色の液体で満たされていた。
「遅いぞ、アラクネ! 今すぐコイツらを――」
アラクネが不機嫌そうな顔で騎士を腕で挟み、持ち上げる。そのまま、騎士を頭から食べてしまった。
「うるっせえな。睡眠の邪魔だっつーの」
騎士の手だけが、ボトリと落ちる。その指には、彼の国籍と地位を示すリングが。
僕は騎士の手を回収し、アイテムボックスに保管した。これは、重要な証拠になる。
「次はお前たちをいただいちゃおっかなー?」
「やれるもんなら……!?」
アラクネの腹が、透けていた。中には、幼いエルフが眠っている。
「そういえば、森といえばウッドエルフじゃのに、一人もおらなんだ」
「きっとあの子を人質に取られて、麻薬づくりを手伝わされているんだろう」
これだけの規模がある農園を誰も管理していない理由は、これか。おそらくは、村の責任者に関係している子なのだろう。
ならば、解放してやらないと。
「電光石火!」
剣を伸ばす。雷のスキルを発動して、腹のエルフを助け出そうとした。
「面白いスキルを持ってるじゃん! けどさあ!」
丸太のように太い足で、剣を防がれる。
「ディータ! 下半身は任せい!」
リユが、剣に炎をまとわせて、アラクネの足を切り落とす。
「なあ!? このアマ!」
アラクネが、リユを踏み潰そうとした。
「電光石火!」
剣を伸ばして、アラクネの足をとらえる。そのまま足を切断した。
「ちくしょお! 【召雷】!」
アラクネの腹が、光る。中の幼いエルフが苦しみだした。
雷魔法が、僕たちに降り注ぐ。
僕は飛翔して距離を取り、リユは雷を剣で受け止めた。
「あいつ、中のエルフっ子の魔力を、自分のパワーに変換しとる!」
「最悪な奴だな!」
剣から【ファイアアロー】を放ち、アラクネをけん制する。
だが、ロクにダメージが通らない。
リユが、再度アラクネの足に斬りかかった。
「同じ手は食わないよ!」
アラクネが、シッポから糸を放つ。
「くっ!」
リユの足に糸が絡みついた。
「そのまま食っちまおうかね!」
「食えるもんなら食うてみい!」
糸に吊り上げられながら、リユも剣を構える。
「むちゃするな、リユ! 【マジックミサイル】、全弾発射!」
僕は、腕を交差させる。指から、小型のマジックミサイルを放つ。
アラクネに攻撃を浴びせつつ、ミサイルでリユに絡んだ糸を切った。
「ナイスじゃ! 【焔の波】!」
リユが、アラクネの人間部分を切り裂く。
「ぎゃあああ!」
まずい。このままでは少女に引火してしまう。
「電光石火!」
腹の周りを切り取って、少女を包む水を抜く。
「くうう!」
なんと、少女の背中に触手が突き刺さっていた。
アラクネの身体と、融合させられている。
「まずいぞ、リユ! これではアラクネを殺すと、少女も死んでしまう!」
「どないしたらええんじゃ!?」
危機を察知したリユが、剣に付与した火の魔法を消した。
アラクネが息を吹き返し、リユに猛反撃をする。
「僕がなんとかする! 【魔改造】!」
背中に幻影の腕を出して、僕は少女とアラクネを切り離す改造を施した。
魔改造の能力は、未知の知識から新しい物質を作り出すだけじゃない。
作り変えられたものを、元に戻す能力もあるのだ。
「分離!」
アラクネと少女を切り離す。少女を抱き上げて、僕は飛んだ。
「なああああ!?」
エネルギー源だった少女を切り離され、アラクネが一気に干からびていく。
「今だ!」
「よっしゃああ!」
リユが、アラクネの心臓に剣を突き刺した。
「あばああああ!」
アラクネが、断末魔の叫びを上げる。
エルフの少女を片手に持ちつつ、リユの襟をつかんだ。
僕が飛び去った瞬間、アラクネが大爆発を起こす。
魔物の破片が、農園に飛び散った。エルフの血を養分にしていたのだろうか。破片が落ちた地点の植物が活性化する。
「おお。この植物を急成長させる力を使って、麻薬を栽培しとったようじゃのう」
「だろうね……ん?」
僕は、地面に降りた。
エルフの面々が、やつれた顔で僕を見ている。
助け出した冒険者によると、この麻薬農園をムリヤリ管理させられていたらしい。
「この子は無事だ。息はある」
「おお。なんとお礼を言っていいやら」
男性のエルフが、僕に頭を下げる。彼が農園の責任者のようだ。
「では、僕たちに協力してくれ。麻薬農園は解体して、普通の作物を植えてほしい」
「承知した」
「ただ、できあがっている薬草は残して、ポーションの素材に使おう」
毒も、調合次第では薬になる。彼らだって、熟知しているはずだ。
「……はっ。わたしは」
僕の腕の中で、エルフの少女が目を覚ます。
エルフの少女を、腕から下ろした。
「おお、ヘニー。無事か」
「おとうさま。おとうさま!」
ヘニーという少女と、エルフの男性が抱き合う。
「わたしを助けてくださって、ありがとうございました。あなた様は?」
「僕はディータ。ここの領主だ。魔物から、この土地を奪還しに来た」
「ヘニー・デ・フェンテです。エルフを魔物から解放してくださって、本当にありがとうございます。わたしに、なにかお手伝いできることがあったら」
「じゃあ、街まで来てくれ」
「はい!」
ヘニーの父親であるデ・フェンテ氏にも、街まで同行してもらった。
だが、行き先はシンクレーグではない。
「どこまでいくんじゃ? シンクレーグは向こうじゃて」
「ボニファティウス王国に行くんだ。このデフェンテ卿に、シンクレーグを治めてもらう」
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