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第一章 辺境、廃城・ゴーストタウン・悪役令嬢つき

第8話 ゴブリン、キラービー、ミノタウロス退治

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「ずいぶん、張り切っているじゃないか」

 冒険者たちが活躍してくれたことで、僕たちはかなりの領地を取り戻した。約三割くらいだろうか。

 あちこちに、やられたゴブリン共が転がっている。

 農家も、ほとんどが助け出されていた。魔物や魔族への食料供給を命じられていたらしく、農園も無事である。

「果樹園まであるのか。リンゴやミカンなどもあるぞ」

「山ン中にも、果樹園があるわい」

「動物に食べさせる用だね。全部農園で作ると、猛獣が山に降りてきてしまうから」

 僕たちも、戦闘に参加するか。

「サーベルやないか。武器を新調したんか?」

「僕が使う本来の武器は、これなんだ」

 サーベルなら、杖の役割も果たしてくれる。剣術と魔法の使い分けが、容易なのだ。

「アタシの武器も、改造してくれて」

 リユの剣を、魔法で改造したのである。ゴツゴツした質感こそそのままだが、東洋の刀のように反りを入れてみた。剣の腹で斬り、背で防ぐ。攻防一体の武器にしたのである。

「太刀の形になっとる。これはこれで、使いやすかろう」

「【魔改造】……ってほどではないけどね」

 下位互換の、【融合】を試してみた。

「さっそく、試し切りの相手が出てきたぞい!」

 領地を奪われて、怒り狂ったゴブリンが襲いかかってくる。

「オラオラ、おめえらの相手はアタシじゃ!」

 リユが、ゴブリンたちを切り裂く。剣の振りが、早くなっていた。そこまで威力を上げたつもりは、なかったんだが。

 僕も、サーベルから【ファイアアロー】を撃った。炎の矢で、ゴブリンの心臓や額を撃ち抜く。

「おお、これはええわい!」

 剣の切れ味に、リユもご満悦の様子だ。

「ご機嫌そうで、なによりだ。【ファイアランス】!」

 僕は剣から炎のヤりを伸ばした。背後に迫っていたゴブリンを、ノールックで撃ち落とす。

 僕がさっき倒したゴブリンは、肌が赤かった。どうやら、ゴブリンチーフを打ち倒したらしい。

 だが、ゴブリンチーフは絶命の間際にラッパを吹く。

 森が、ざわつき始める。

 人間サイズのハチが森を飛び出し、上空から迫ってきた。

「新手じゃ!」

「キラービーか!」

 膨大な数である。空を覆い尽くすほどだ。偵察と、農民の脱走防止用のモンスターか。

「これだけなら、物の数ではない。【レビテイト】!」

 僕は、浮遊魔法を唱える。身体を宙へ浮かせた。

「飛べるアドバンテージが、ソッチだけにあると思うなよ」

 竜巻を起こし、キラービーの大半を削る。

 この手の虫型モンスターは、羽根だけをちぎればいい。後は、リユが悠々と切り刻んでくれる。

 キラービーたちが、森へと戻っていく。

 森に入ると、キラービーの巣が見えてきた。

「でけえ。ハチミツまみれかのう?」

「キラービーの巣の材料は、家畜や人間の脂だ。蜜を取ろうなんて思うなよ」

「うえええ。わかったわい」

 巣の撃退に、容赦しない。キラービーを巣ごと殲滅する。

 合計七個の巣を撃滅した。

「これであらかた……ディータ、まだなんかが来よるぞ!」

 森の奥で、何かが光る。

「うわっと!」

 僕はとっさに攻撃を避けた。

「気をつけい! ミノタウロスの斧じゃ!」

 バカでかい斧が、岩山に突き刺さる。

 ノッシノッシと、巨体が斧を回収しに来た。硬い岩に刺さった斧を、軽々と引き抜く。

「ガアアアア!」

 よだれを垂らして絶叫したミノタウロスが、リユに切りかかった。

「リユ!」

「手を出さんでええ! 【焔の波】ィ!」

 リユの剣から、紅蓮の炎が巻き起こる。炎に包まれた剣で、リユがアッパー気味に剣をすくい上げた。

 ドロッ、と、ミノタウロスの巨体が真っ二つに。剣戟ではなく、熱で切り裂かれたかのようだ。

「すごい。これが本気になったリユの斬撃か」

「感心するねえて。おめえが作った武器がええんじゃ。アタシでもここまで斬れると思っておらなんだ。いつもは、武器を切れればええくらいよってに」

 リユの武器から、炎が消える。

「これだけで、済むとは思えない」

「おう。これだけの規模で、親玉がミノタウロスなんてことはなかろう」

 ゴブリンを倒して農民たちを解放しつつ、さらに奥へと向かう。

「おったぞ!」

 リユが、前方を指差した。

 冒険者たちが、一体のモンスター相手に苦戦している。

「お前たちは逃げろ! ここは、僕がやる!」

 重傷者を避難させ、僕はモンスターと対峙した。

「なんだ貴様らは? 魔王様の畑を荒らすのは貴様か?」

 カブトムシ型の全身ヨロイに身を包んだ騎士が、大剣をこちらに突き立てる。

「ここは僕の領地だ、人の領域を荒らしているのはお前たちのほうだろ?」

「貴様が、例のボニファティウスのガキか。貴様の首を持ち帰れば、俺は魔王の手によって更に強くしてもらえよう! キラービーッ!」

 騎士が、増援を呼ぶ。だが、ハチたちは現れない。

「もういないよ」

「なんと……斥候も偵察部隊も全滅とは」

「サシで勝負しよう」

「望むところ!」

 僕は、ファイアランスを放つ。

「ムダムダ! 大型の虫型モンスターと融合した俺の装甲、そんなマッチのごとき火では貫けぬ!」

 昆虫騎士の剣が、僕の剣を弾く。

「しまった!」

「ハハハ! 領主などこの程度か!」

 無防備になった僕に、騎士が剣の先で刺そうとした。

 だが、首を刺されたのは騎士の方である。

 僕の剣の先が伸びて、騎士を刺したのだ。
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