百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

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第一章 百合王子と二人の嫁候補 ~余に嫁などいらぬ!~

ケンカするほど、仲がいい

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 オレがソフィとツンディーリアの秘密を知って、数日が経つ。

 魔族の動向などが気になったが、さして大事件は起きていない。

「今日は、クラス対抗の模擬戦でーす」

 メロンカップのポロリーヌ先生によって、体育の授業が行われた。

 グラウンドに、全面に白線で魔方陣が描かれている。多少の勢いでも学び舎を破壊させないためだ。

「一年サファイア組と、一年ルビー組で、三本勝負をしてもらいまーす。いいですかー?」

「はーい」

 やる気なさそうに、両クラスが返事をする。

 くじ引きで、三人組の班に分かれた。
 各班三人ずつになって、対戦相手もくじで決まる。

「ではルビー組はユリアンくん、トーモスくん、ソフィさんで。先方ユリアンくん、前へどうぞー」

「はあ」

 オレも、やる気がない。何より腹が減った。

「お願いします」

 対戦相手は、随分とやる気勢である。向こうのクラス委員だったかな。侯爵家の跡とりだったような気がする。名前は忘れた。

「どうも、ユリアンです」

 挨拶が終わったところで、「構えてー」とポロリーヌ先生が手をあげる。

「ユリアン・バルシュミーデ殿、ボクは手加減する気はありませんよ! あなたのような女性につれない男に、憧れの聖ソフィは渡せません。やはり彼女ののハートを射止めるのはボクのような――」


「百合魔法、【百合快眠リリー・スランバー】」

 対戦相手の前で、オレはタクトの先をクルクル回した。

「てえてえ……」

 マウント顔のまま、対戦相手は眠ってしまう。

「はい、おしまい」

 三秒で、オレは試合を終わらせた。

「おー」と、場内から拍手が湧く。

 相手を殴らず傷つけず倒すには、眠らせるに限る。魔法抵抗力が低い相手で助かった。でなければ、殴らねばならない。

 暴力は、できるだけ避けたかった。なんといっても、オレを鍛えたメイディルクスが元冒険者だから。

「相変わらず、あなたの精神攻撃は恐ろしいですねー」

 ポロリーヌ先生が、手を叩いた。

「いや、こんなもんです」

 まあ、悪くない結果である。

 だが、トーモスが秒で負けてしまった。

 相手がメガネくんだと、油断してしまったようである。

「悪い。超強かったぜ」
「オレが行った方がよかったか?」
「いや、お前の対戦相手よりは弱かった。お前が獲った星の方が価値があるよ」

 あとは、ソフィ対ツンディーリアの戦果次第だ。

 お互いに、ピッチリした体操着を身につけている。
 どこも防いでくれそうにない見た目だ。
 実際は、刃物を一切通さない。
 大魔法を喰らっても無傷でいられる。

「おあつらえ向きな状況ですわね、聖ソフィ」

 体操着姿のツンディーリアは、肉感的なプロポーションだ。ドラゴンの血を引いているからだろう。

 対するソフィは、軽く握っただけで折れてしまいそうな程に線が細い。胸だけは大きいが、ツンディーリアほどではなかった。


「学校の授業なんかで勝負を決めたところで、実戦で活かせなくては」

「負け惜しみですの?」

 不敵な笑みを、ツンディーリアが見せる。
 この二人、裏では愛し合っているんだよな。二人の真実は、オレしか知らない。なんという優越感、良き!

「なにをニヤニヤしているんだ?」

 不思議そうな顔で、トーモスがオレの腕をヒジで突く。

「いや。面白いものが見られるなと思ってな」

「ああ。好カードだよな。女子のエース対決だし」

 よかった。トーモスは、いい感じに勘違いしてくれたぞ。

「減らず口は、私を倒してからおっしゃいな」

 ソフィが、自身のステッキである「ピンク色の柄」を出す。
 魔力を放出すると、桜色の閃光刃を展開した。

「いくら勇者の末裔と言えど、ドラゴンのブレスをまともに浴びて、立っていられると思いまして?」

 ツンディーリアのステッキが、巨大化する。宝石が絡まった杖に変形した。

 中央にはめ込まれた黄色い宝石は、まるでドラゴンの瞳を思わせる。

「ちょっとー。口ゲンカしてないで始めてくださーい」

 ポロリーヌ先生の合図によって、因縁の対決がスタートした。

 バウンッ、という音が、グラウンドに鳴り響く。
 屋内で授業中の生徒が、「何事か」と窓を開けるほどの大きさだった。
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