4 / 49
第一章 百合王子と二人の嫁候補 ~余に嫁などいらぬ!~
ケンカするほど、仲がいい
しおりを挟む
オレがソフィとツンディーリアの秘密を知って、数日が経つ。
魔族の動向などが気になったが、さして大事件は起きていない。
「今日は、クラス対抗の模擬戦でーす」
メロンカップのポロリーヌ先生によって、体育の授業が行われた。
グラウンドに、全面に白線で魔方陣が描かれている。多少の勢いでも学び舎を破壊させないためだ。
「一年サファイア組と、一年ルビー組で、三本勝負をしてもらいまーす。いいですかー?」
「はーい」
やる気なさそうに、両クラスが返事をする。
くじ引きで、三人組の班に分かれた。
各班三人ずつになって、対戦相手もくじで決まる。
「ではルビー組はユリアンくん、トーモスくん、ソフィさんで。先方ユリアンくん、前へどうぞー」
「はあ」
オレも、やる気がない。何より腹が減った。
「お願いします」
対戦相手は、随分とやる気勢である。向こうのクラス委員だったかな。侯爵家の跡とりだったような気がする。名前は忘れた。
「どうも、ユリアンです」
挨拶が終わったところで、「構えてー」とポロリーヌ先生が手をあげる。
「ユリアン・バルシュミーデ殿、ボクは手加減する気はありませんよ! あなたのような女性につれない男に、憧れの聖ソフィは渡せません。やはり彼女ののハートを射止めるのはボクのような――」
「百合魔法、【百合快眠】」
対戦相手の前で、オレはタクトの先をクルクル回した。
「てえてえ……」
マウント顔のまま、対戦相手は眠ってしまう。
「はい、おしまい」
三秒で、オレは試合を終わらせた。
「おー」と、場内から拍手が湧く。
相手を殴らず傷つけず倒すには、眠らせるに限る。魔法抵抗力が低い相手で助かった。でなければ、殴らねばならない。
暴力は、できるだけ避けたかった。なんといっても、オレを鍛えたメイディルクスが元冒険者だから。
「相変わらず、あなたの精神攻撃は恐ろしいですねー」
ポロリーヌ先生が、手を叩いた。
「いや、こんなもんです」
まあ、悪くない結果である。
だが、トーモスが秒で負けてしまった。
相手がメガネくんだと、油断してしまったようである。
「悪い。超強かったぜ」
「オレが行った方がよかったか?」
「いや、お前の対戦相手よりは弱かった。お前が獲った星の方が価値があるよ」
あとは、ソフィ対ツンディーリアの戦果次第だ。
お互いに、ピッチリした体操着を身につけている。
どこも防いでくれそうにない見た目だ。
実際は、刃物を一切通さない。
大魔法を喰らっても無傷でいられる。
「おあつらえ向きな状況ですわね、聖ソフィ」
体操着姿のツンディーリアは、肉感的なプロポーションだ。ドラゴンの血を引いているからだろう。
対するソフィは、軽く握っただけで折れてしまいそうな程に線が細い。胸だけは大きいが、ツンディーリアほどではなかった。
「学校の授業なんかで勝負を決めたところで、実戦で活かせなくては」
「負け惜しみですの?」
不敵な笑みを、ツンディーリアが見せる。
この二人、裏では愛し合っているんだよな。二人の真実は、オレしか知らない。なんという優越感、良き!
「なにをニヤニヤしているんだ?」
不思議そうな顔で、トーモスがオレの腕をヒジで突く。
「いや。面白いものが見られるなと思ってな」
「ああ。好カードだよな。女子のエース対決だし」
よかった。トーモスは、いい感じに勘違いしてくれたぞ。
「減らず口は、私を倒してからおっしゃいな」
ソフィが、自身のステッキである「ピンク色の柄」を出す。
魔力を放出すると、桜色の閃光刃を展開した。
「いくら勇者の末裔と言えど、ドラゴンのブレスをまともに浴びて、立っていられると思いまして?」
ツンディーリアのステッキが、巨大化する。宝石が絡まった杖に変形した。
中央にはめ込まれた黄色い宝石は、まるでドラゴンの瞳を思わせる。
「ちょっとー。口ゲンカしてないで始めてくださーい」
ポロリーヌ先生の合図によって、因縁の対決がスタートした。
バウンッ、という音が、グラウンドに鳴り響く。
屋内で授業中の生徒が、「何事か」と窓を開けるほどの大きさだった。
魔族の動向などが気になったが、さして大事件は起きていない。
「今日は、クラス対抗の模擬戦でーす」
メロンカップのポロリーヌ先生によって、体育の授業が行われた。
グラウンドに、全面に白線で魔方陣が描かれている。多少の勢いでも学び舎を破壊させないためだ。
「一年サファイア組と、一年ルビー組で、三本勝負をしてもらいまーす。いいですかー?」
「はーい」
やる気なさそうに、両クラスが返事をする。
くじ引きで、三人組の班に分かれた。
各班三人ずつになって、対戦相手もくじで決まる。
「ではルビー組はユリアンくん、トーモスくん、ソフィさんで。先方ユリアンくん、前へどうぞー」
「はあ」
オレも、やる気がない。何より腹が減った。
「お願いします」
対戦相手は、随分とやる気勢である。向こうのクラス委員だったかな。侯爵家の跡とりだったような気がする。名前は忘れた。
「どうも、ユリアンです」
挨拶が終わったところで、「構えてー」とポロリーヌ先生が手をあげる。
「ユリアン・バルシュミーデ殿、ボクは手加減する気はありませんよ! あなたのような女性につれない男に、憧れの聖ソフィは渡せません。やはり彼女ののハートを射止めるのはボクのような――」
「百合魔法、【百合快眠】」
対戦相手の前で、オレはタクトの先をクルクル回した。
「てえてえ……」
マウント顔のまま、対戦相手は眠ってしまう。
「はい、おしまい」
三秒で、オレは試合を終わらせた。
「おー」と、場内から拍手が湧く。
相手を殴らず傷つけず倒すには、眠らせるに限る。魔法抵抗力が低い相手で助かった。でなければ、殴らねばならない。
暴力は、できるだけ避けたかった。なんといっても、オレを鍛えたメイディルクスが元冒険者だから。
「相変わらず、あなたの精神攻撃は恐ろしいですねー」
ポロリーヌ先生が、手を叩いた。
「いや、こんなもんです」
まあ、悪くない結果である。
だが、トーモスが秒で負けてしまった。
相手がメガネくんだと、油断してしまったようである。
「悪い。超強かったぜ」
「オレが行った方がよかったか?」
「いや、お前の対戦相手よりは弱かった。お前が獲った星の方が価値があるよ」
あとは、ソフィ対ツンディーリアの戦果次第だ。
お互いに、ピッチリした体操着を身につけている。
どこも防いでくれそうにない見た目だ。
実際は、刃物を一切通さない。
大魔法を喰らっても無傷でいられる。
「おあつらえ向きな状況ですわね、聖ソフィ」
体操着姿のツンディーリアは、肉感的なプロポーションだ。ドラゴンの血を引いているからだろう。
対するソフィは、軽く握っただけで折れてしまいそうな程に線が細い。胸だけは大きいが、ツンディーリアほどではなかった。
「学校の授業なんかで勝負を決めたところで、実戦で活かせなくては」
「負け惜しみですの?」
不敵な笑みを、ツンディーリアが見せる。
この二人、裏では愛し合っているんだよな。二人の真実は、オレしか知らない。なんという優越感、良き!
「なにをニヤニヤしているんだ?」
不思議そうな顔で、トーモスがオレの腕をヒジで突く。
「いや。面白いものが見られるなと思ってな」
「ああ。好カードだよな。女子のエース対決だし」
よかった。トーモスは、いい感じに勘違いしてくれたぞ。
「減らず口は、私を倒してからおっしゃいな」
ソフィが、自身のステッキである「ピンク色の柄」を出す。
魔力を放出すると、桜色の閃光刃を展開した。
「いくら勇者の末裔と言えど、ドラゴンのブレスをまともに浴びて、立っていられると思いまして?」
ツンディーリアのステッキが、巨大化する。宝石が絡まった杖に変形した。
中央にはめ込まれた黄色い宝石は、まるでドラゴンの瞳を思わせる。
「ちょっとー。口ゲンカしてないで始めてくださーい」
ポロリーヌ先生の合図によって、因縁の対決がスタートした。
バウンッ、という音が、グラウンドに鳴り響く。
屋内で授業中の生徒が、「何事か」と窓を開けるほどの大きさだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる