百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

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第四章 学園の闇を暴け! 百合王子の禁じ手!

王子、再び魔王と対峙!?

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 野次馬をかき分けて、被害があった店の入り口まで行く。

 看板には、『閉店』の文字がかけられている。

 店員の女性が、頭を下げながら事情を話していた。
 隣にいる姉が、辻斬りの被害者らしい。腕を押さえている。
 一命は取り留めたが、フライパンを振るうことはできないかも知れないという。

 姉妹で運営していたが。ケガが治っても復帰できないそうだ。

 こんな尊い店を、破滅に追い込むとは、犯人許すまじ。

「ん?」

 あれは、ライバラではないか。

 ライバラはオレを見かけると、脱兎の如く逃げ出す。

「あ、ちょっと!」
 急いで、オレはライバラを追いかけた。

 なんという早さだ。さすが、学年いちの俊足である。

「待て! 待ってくれ!」
 オレは、足が速いほうではない。クラスでも中くらい程度だ。

 足をもつらせながら、ライバラの背中を追う。

 なぜ、逃げるのか。
 オレだって、ライバラが犯人だなんて思っていない。
 逃げたら、余計に容疑が掛かるというのに。

「うご!」

 何か黒い物体に、ぶつかってしまう。
 ボヨン! と、オレの身体は弾かれた。
 後ろにもんどり打つ。

 むくりと、オレは起き上がる。

 ダークエルフの少女が、腕を組むように自らの爆乳を押さえていた。頬を染めている。彼女とぶつかってしまったのか。

「ちょっとなんなの、こいつー」
「ひどくない?」

 両脇にいる同じダークエルフ族が、オレを罵った。
 三人組で全員がギャル風ファッションだ。
 体型にバラつきがあるが、全員がきわどい格好をしている。

 ギャルとはいえ、三人は各々の手を繋いでいた。
 カバンにはお揃いの、ファンシーな悪魔の刺繍が施されている。
 ワルとはいえ、仲がいいのだろう。

 これはこれで尊……いや、そんなコト言っている場合では!

「お兄さん、マジなんなん?」

 胸を押さえている少女が、この集団のリーダーらしい。
 長いワンサイドアップの髪型が印象的だ。
 しかし、どこかで見たような。

「いや、スマン! おや?」
 オレは、この少女に見覚えがあった。
 いや、この間戦ったばかりではないか!

「ま、魔王だと!?」

 彼女は、中間試験でオレと戦った魔王だった。
 あのときの激闘で、オレはまだ万全ではない。
 なのに、こんな街中で出くわすとは!

 しかし、魔王らしき少女から殺気が漂ってこない。
 むしろ、ここから早く消えたいような雰囲気を出していた。

「なにコイツー。顔は整ってるけど、雰囲気はヤバめだよねぇ」
「ジロジロ見ないでほしいんですけどぉ」

 迷惑そうに、取り巻きたちがオレを再度バカにする。

「待て。用事はすぐ済むから!」

 たしか名前は、ギャルなんとかだ。そう!

「ギャルルトルートッ! ギャルルトルートではないか?」

「なんなん、その名前?」
 リーダー格の少女は、反応が素っ気ない。

「オレを覚えていないのか? オレは、キミと戦闘になったのだぞ! あそこの山奥でだ!」

 中間試験のあった、ダンジョンのある山を指さした。

「いや、アンタなんか知らんし」
 しかし、少女は首を振る。本当にわからないようだが。

「覚えてないのか? あれだけの被害が出たんだぞ!」
「マジ知らんし」

 眉間にシワを寄せて、魔王らしき少女は後ずさる。

「なにコイツ、キンモー」
「まじひくわー。ルーちゃん行こう行こう」

 相手にしたくないとでも言わんばかりに、問答無用でダークエルフのギャルたちは逃げていく。

 待て、と言いたかったが、満身創痍の状態で勝てるとは思えない。悔しいが見逃す。
 それよりも、今はライバラの方が先だ。


 だが、結局ライバラを見失った。


 肩を落としながら現場に戻る。

 店の前で、優しげな光が灯っていた。
 また魔物でも出たのかと思ったが、違う。

 ソフィとツンディーリアが、ケガをした店員を治療していたのだ。

「キミたち、いったいどうして?」
「買い食いしに行った友だちが、騒ぎを聞いて報告に来てくれたのよ」

 自分なら直せると思って、ソフィたちは寄ってみたという。

「ここのアップルパイは人気だそうで、買いにいったらこんな事態になっていたと」

 確かにソフィの魔力なら、辻斬りに遭った料理士の傷を治せるだろう。

 ツンの方は、ソフィが息切れしないように自身の魔力を送っている。ソフィの手を握りながら。

「直せそうか?」
「私を誰だと思っているのよ?」
 強がってはいるが、ソフィは首にジットリと汗をかいていた。
 精神を集中させているのだ。

「ひどいやられ方をしているわね。でも安心して。キレイに切れているから切断面をイメージしやすいわ。切れ味の鋭さがアダになったわね」
 神経の切れ目に手をかざしながら、ソフィは治癒の魔法を流し込む。

 治癒魔法は、「パッと掛けたらサッと直る」といった単純な物ではない。
 相手の症状などを見極める正確な目も必要である。

 膨大な魔力さえあれば、無学な素人でも強引に治療することは可能だ。

 とはいえ、よほどの達人でない限り必ず綻びが生じる。
 後遺症が残ったりするモノだ。

 戦闘でも料理でも建築でも、どの分野に於いても同じこと。正しい知識が必要なことに変わりはない。

 魔法学校は、そういった各分野の専門知識を学ぶ場でもあるのだ。

「もう大丈夫よ」
 脂汗をかきながら、ソフィが患者から手を放した。
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