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第二章 発足、百合テロ同好会
百合の複合技
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「なんだその、全てを焼き尽くすような魔力は! 我を封じた魔力を、遥かに凌駕するではないか! まさか!」
見るからに、モンスターは足がすくんでいた。
「そのまさかだよ」
勇者の家系ヴェリエと、竜族ミケーリ家の魔力を、このバルシュミーデの魔力で増幅させたのだ。
「お前は生かしてはおけぬ。封印なんかでは生ぬるい。確実に仕留めてやろう!」
野球のバットのように、オレはソフィの剣を構える。
「ツンディーリア、ボールを!」
ノックの要領で、ツンディーリアがオレに球を放り投げた。
「【奥義・百合走者一掃!】」
オレは、剣をフルスイングした。
ソフィとツンディーリアの魔力を携えたファイアー・ボールを、光線剣から放つ。
三人分の全力を圧縮した、スペシャルボールだ。
魔物の口に、魔力弾が叩き込まれた。
霊体が、備品から抜ける。
「ふごおおおお!」
窓を突き破って、霊体だけが夕暮れの空に飛んでいく。
「てえ、てええええええええ!」
特大の花火となって、魔物の亡きがらが空を照らした。
「消滅を確認。浄化完了や」
メイのひと言で、オレは安堵する。杖を、ソフィに返す。
悪しき気配は、跡形もなく消えた。
これで、あの魔物も浄化されただろう。
「よくあんな技、思いついたな」
「野球のノックは、二人でないとできないだろ? それで発想を飛ばした」
さすがのオレも、ダメかと思った。
二人がいなかったら、決定的なダメージは与えられなかっただろう。
「みんな無事でよかったわね、ツンディーリア」
「一時はどうなることかと」
「素敵だったわ。ツンディーリア」
「いえいえ。ソフィの助けがあったからですわ」
互いの手を取り、ソフィとツンディーリアが栄誉をたたえ合った。
尊い……なんて言っている場合ではない。
「二人のおかげだ。ありがとう」
本気のお礼を、二人に送った。
「い、いいわよお礼なんて」
「えへへぇ。こちらこそ。王子、お気遣いなく」
どういうわけか、二人はいつになくしおらしい。
いつもなら、罵倒の一つでも返ってくるはずだ。
しかも、オレはソフィから武器まで奪っている。
「アンタはヘンタイだけど、頼りになるわ。困ったことがあったら、いつでも力を貸すから」
「ええ。判断力と意志の強さは、さすが王子と言うべきですわ。ヘンタイですが」
ヘンタイは余計だ、二人とも。
しかし、あれはなんだったのか。
魔物が消え去った後、不思議なことが起きる。
あれだけ壊れていた備品の数々が、元通りになっていたのだ。
しかも、ホコリまでキレイに取り払って。
これだけの芸当ができる人物は、一人をおいて他になし。
「何があったのです」
シスター風の老女が、教室に入ってくる。
この学校の校長だ。
さっき散らかった部屋を片付けたのも、彼女である。
「校長先生。実は」
メイが代表して、事情を説明した。
校長はモノクルを直しながら、コクコクとうなずく。
「わかりました。今日のところは帰りなさい。後日、事情を説明するように」
翌日、オレたちは学園長に呼び出された。
「なんだろうな?」
「おそらく、オレへの処分を検討しているのだろう。あの魔物を呼び寄せてしまったのは、オレだからな」
学園長は、豪華なテーブルについている。
モノクルを付けて、学園長は皺だらけの目元にさらなる線を増やす。
「これは、一期生のアルバムですね」
挟まっていた写真を見て、学園長は驚いていた。
が、すぐに冷静さを取り戻す。
「このフォトに込められたわずかな魔力が、あの魔物を弱体化させていたようですね」
セピア色の紙を眺めながら、学園長は微笑む。
「封じられていた魔物の調査は、学園側でも進めていました。彼女たちに取り入ろうとした二人の貴族は、魔族と繋がっていたというウワサもありまして」
「魔族と? 本当ですか?」
学園長は、「ええ」と応える。
「バルシュミーデは大国です。若き魔術師たちが集うこの学園を乗っ取ろうと、魔族らは画策しているようです。若い段階から、闇の世界に取り込もうと」
敵の強大さに、オレたちは息を呑む。
「ところで学園長、ブルルンヒルデという魔族に、心当たりはないか?」
「私も尋ねられましたが、聞いたこともないですね」
しかし、と学園長は続けた。
「空き教室の封印が破られやすくなっていたのは、確実です」
調査の結果、魔物をこの地に復活させたのは、オレの不注意ではないと判明したらしい。
「ならば、オレは」
「はい、王子。あなた方の行いは、不問と致します。魔物を退治したのも、みなさんですし」
あの魔物を起こしてしまった責任として、多少の処分は覚悟していた。
けれど、学園長は許してくれるという。
「あなた方の活躍によって、学園の平和は守られました。心から感謝致します」
モノクルを外し、学園長が暖かな笑顔を見せる。
ありがたい学園長の言葉に感銘を受け、オレは胸をドンと叩く。
「今後も、精進致します!」
「あらあら、頼もしいわね王子」
「ですから部の名称を【百合テロ部】に!」
「頭を冷やしてらっしゃい王子」
後日、オレだけ分厚い反省文を書かされた。
納得いかん!
見るからに、モンスターは足がすくんでいた。
「そのまさかだよ」
勇者の家系ヴェリエと、竜族ミケーリ家の魔力を、このバルシュミーデの魔力で増幅させたのだ。
「お前は生かしてはおけぬ。封印なんかでは生ぬるい。確実に仕留めてやろう!」
野球のバットのように、オレはソフィの剣を構える。
「ツンディーリア、ボールを!」
ノックの要領で、ツンディーリアがオレに球を放り投げた。
「【奥義・百合走者一掃!】」
オレは、剣をフルスイングした。
ソフィとツンディーリアの魔力を携えたファイアー・ボールを、光線剣から放つ。
三人分の全力を圧縮した、スペシャルボールだ。
魔物の口に、魔力弾が叩き込まれた。
霊体が、備品から抜ける。
「ふごおおおお!」
窓を突き破って、霊体だけが夕暮れの空に飛んでいく。
「てえ、てええええええええ!」
特大の花火となって、魔物の亡きがらが空を照らした。
「消滅を確認。浄化完了や」
メイのひと言で、オレは安堵する。杖を、ソフィに返す。
悪しき気配は、跡形もなく消えた。
これで、あの魔物も浄化されただろう。
「よくあんな技、思いついたな」
「野球のノックは、二人でないとできないだろ? それで発想を飛ばした」
さすがのオレも、ダメかと思った。
二人がいなかったら、決定的なダメージは与えられなかっただろう。
「みんな無事でよかったわね、ツンディーリア」
「一時はどうなることかと」
「素敵だったわ。ツンディーリア」
「いえいえ。ソフィの助けがあったからですわ」
互いの手を取り、ソフィとツンディーリアが栄誉をたたえ合った。
尊い……なんて言っている場合ではない。
「二人のおかげだ。ありがとう」
本気のお礼を、二人に送った。
「い、いいわよお礼なんて」
「えへへぇ。こちらこそ。王子、お気遣いなく」
どういうわけか、二人はいつになくしおらしい。
いつもなら、罵倒の一つでも返ってくるはずだ。
しかも、オレはソフィから武器まで奪っている。
「アンタはヘンタイだけど、頼りになるわ。困ったことがあったら、いつでも力を貸すから」
「ええ。判断力と意志の強さは、さすが王子と言うべきですわ。ヘンタイですが」
ヘンタイは余計だ、二人とも。
しかし、あれはなんだったのか。
魔物が消え去った後、不思議なことが起きる。
あれだけ壊れていた備品の数々が、元通りになっていたのだ。
しかも、ホコリまでキレイに取り払って。
これだけの芸当ができる人物は、一人をおいて他になし。
「何があったのです」
シスター風の老女が、教室に入ってくる。
この学校の校長だ。
さっき散らかった部屋を片付けたのも、彼女である。
「校長先生。実は」
メイが代表して、事情を説明した。
校長はモノクルを直しながら、コクコクとうなずく。
「わかりました。今日のところは帰りなさい。後日、事情を説明するように」
翌日、オレたちは学園長に呼び出された。
「なんだろうな?」
「おそらく、オレへの処分を検討しているのだろう。あの魔物を呼び寄せてしまったのは、オレだからな」
学園長は、豪華なテーブルについている。
モノクルを付けて、学園長は皺だらけの目元にさらなる線を増やす。
「これは、一期生のアルバムですね」
挟まっていた写真を見て、学園長は驚いていた。
が、すぐに冷静さを取り戻す。
「このフォトに込められたわずかな魔力が、あの魔物を弱体化させていたようですね」
セピア色の紙を眺めながら、学園長は微笑む。
「封じられていた魔物の調査は、学園側でも進めていました。彼女たちに取り入ろうとした二人の貴族は、魔族と繋がっていたというウワサもありまして」
「魔族と? 本当ですか?」
学園長は、「ええ」と応える。
「バルシュミーデは大国です。若き魔術師たちが集うこの学園を乗っ取ろうと、魔族らは画策しているようです。若い段階から、闇の世界に取り込もうと」
敵の強大さに、オレたちは息を呑む。
「ところで学園長、ブルルンヒルデという魔族に、心当たりはないか?」
「私も尋ねられましたが、聞いたこともないですね」
しかし、と学園長は続けた。
「空き教室の封印が破られやすくなっていたのは、確実です」
調査の結果、魔物をこの地に復活させたのは、オレの不注意ではないと判明したらしい。
「ならば、オレは」
「はい、王子。あなた方の行いは、不問と致します。魔物を退治したのも、みなさんですし」
あの魔物を起こしてしまった責任として、多少の処分は覚悟していた。
けれど、学園長は許してくれるという。
「あなた方の活躍によって、学園の平和は守られました。心から感謝致します」
モノクルを外し、学園長が暖かな笑顔を見せる。
ありがたい学園長の言葉に感銘を受け、オレは胸をドンと叩く。
「今後も、精進致します!」
「あらあら、頼もしいわね王子」
「ですから部の名称を【百合テロ部】に!」
「頭を冷やしてらっしゃい王子」
後日、オレだけ分厚い反省文を書かされた。
納得いかん!
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